今から100年前、
バレエ・リュスがパリで初公演。
Culture 2009.12.16
大村真理子の今週のPARIS
"金なしメセナ"を自称したセルジュ・ディアギレフ。芸術監督としてロシア人ダンサーたちを率いた彼は、1909年にパリのシャトレ劇場で"バレエ・リュス"の初公演を行った。驚異的なジャンプと躍動感で観客を圧倒するニジンスキー、豪華な舞台装置、凝った舞台衣装...当時、女性ダンサーが囲われ者的存在でバレエが下火だったパリゆえ、文化人たちは総合芸術としてのバレエにすっかり興奮し、このバレエ・リュスが彼らにとって大きな話題となった。
このパリの初演から数えて今年は100周年ということで、世界各地で記念イヴェントが種々開催されている。1910年に彼らを迎えて公演を開催したオペラ座でも、12月31日まで「バレエ・リュス」の4演目を見せるプログラムが組まれ、また劇場内の美術館においては「バレエ・リュス」展が5月23日まで開催中だ。劇場内見学とセットなので、年末年始のパリ観光の際に寄ってみては?
展覧会ではバレエ・リュスの代表的演目であった「春の祭典」「シェーラザード」のコスチュームを多数みることができる。舞台衣装とはいえ、オートクチュール並みに手の込んだ仕事、高級な素材にうっとりさせられるはずだ。この展示の奥のスペースでは、オペラ座バレエ団による過去の「バレエ・リュス」演目の抜粋のビデオが流されているので、時間があれば、ぜひ。
「春の祭典」のコスチューム。
会場入り口から展示を眺める。左に見える足は、レオン・バクストによる有名な「牧神の午後」のための拡大デッサンの一部。
さてこの展覧会の要となっているのは、1917年に上演された「パラード」である。これはコクトーが台本を書き、ピカソが美術、エリック・サティが音楽を担当している。
1912年の「牧神の午後」、1913年の「春の祭典」であまりにも斬新な振り付けでスキャンダルを起こしたバレエ・リュスだが、それまでのロシア色を脱し、この作品を境にバレエ・リュスとヨーロッパの芸術家たちとのコラボレーションを始めるのだ。1924年のバレエ「青列車」はピカソの美術、コクトーに加え、ココ・シャネルココがコスチューム・デザインに参加! そのほか、マリー・ローランサン、ジョルジュ・ブラック、ラヴェル、プーランクなど20世紀を代表する芸術家たちが、バレエ・リュスには参加している。"金なしメセナ"かもしれないが、芸術監督として計り知れない才能をもつディアギレフならではだ。
ピカソが美術担当した「パラード」より。このコーナーの小さなスクリーンで「パラード」の抜粋が見られる。
展覧会ではストラヴィンスキー、ドビュッシーによる手書きの楽譜、コクトー描くところの似顔絵なども披露されている。パリ公演で一躍人気スターとなったニジンスキーの手によるデッサンも3点展示。バレエにとりわけ興味がなくても、楽しめる要素が盛り込まれている。
ジャン・コクトーが描いたストラヴィンスキーとディアギレフ。
時計やオペラグラスなどディアギレフの遺品を展示。彼のシルクハット姿は写真でおなじみ!
Palais Garnier, 75009 PARIS
(入口はスクリブ通りとオーベール通りの角)
5月23日まで開催
開) 10時~17時
会期中、1月1日を除き無休
料) 8ユーロ(オペラ座見学料金含む)