マイ・フェイバリット・ニューヨーク・ムービー #01 大竹昭子(作家) 映像に刻まれた、80年代ニューヨークの風景。

Culture 2016.08.05

いつの時代も映画人をインスパイアし
数々の映画の舞台となった街、ニューヨーク。
各ジャンルで活躍する、映画とニューヨークを愛する人たちが、
ニューヨークを舞台にした映画の中から、自身のベスト3を推薦します。
 
1979年からのニューヨーク滞在中に
執筆活動と写真をスタートした大竹昭子さんは、
当時目にしていた風景が生き生きと映し出される3作品をセレクト。
イーストリバーのテニスクラブや、
アーティストが集うイースト・ビレッジの風景、
当時は怖くて近づけなかったブロンクス・・・
大竹さんの創作意欲を刺激した、リアリティ溢れる街の空気を、
ニューヨークに縁が深い巨匠たちの作品で味わって。

 

01. 『アニー・ホール』

 

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1979年から80年代初頭にかけて、ニューヨークのエネルギーに惹かれてあの街に暮らした。街路のおもしろさに目覚めたのはあの時のことだ。ニューヨークの街が舞台になった映画もたくさん作られていて、歩いているとよくロケに出くわしたりもした。財政破綻に苦しんでいた市がロケ代を稼ぐためだという噂が流れていたが、本当だろうか。
ウディ・アレンの『アニー・ホール』の冒頭には、当時、ニューヨーカーの間で話題だったイーストリバーのテニスクラブが出てくる。このクラブ、川沿いではなくて川の「中」にあるのがミソだった。エアードーム付きの筏を川に浮かべて、その上にコートがつくられていたのだ。見かけはかまぼこみたいで、初めて見た時は何だろうと思ったものだが、いまもあるのだろうか。
ウディ・アレンとダイアン・キートンが扮する男女はここで出会う。クルマで来てるから送ろうかとアレンが誘い、着いたらダイアンのアパートに上がり込んでテラスでワインを吞む。当時のわたしには体がむずむずするほどリアリティーのあるシーンだった!

 

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●監督・脚本/ウディ・アレン
●脚本/マーシャル・ブリックマン
●出演/ウディ・アレン、ダイアン・キートンほか
●1977年、アメリカ映画
●Blu-ray ¥2,057
●販売元/20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

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>>『パーマネント・バケーション』

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02. 『パーマネント・バケーション』

 

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ウディ・アレンの映画に登場するのはちゃんとした仕事を持ったミドルクラスで、住んでいるのもミッドタウン。でも、わたしがシンパシーを抱いていたのは、稼ぎのないアーティストがたむろするイースト・ビレッジ界隈だった。
そのエリアがたっぷりと出てくるのは、ジム・ジャームッシュがニューヨーク大学映画学科の卒業制作として撮った『パーマネント・バケーション』である。
どこもかしこもよく知っている場所ばかりで、窓に鉄格子のはまったアパートの部屋なんか、まるでうちのアパートで撮ったみたいだった。当時は誰もがこういう殺風景な部屋に、マットレスを床にそのまま置いて寝ていた。
川のほうに近づくと廃墟だらけになるが、そういう場所でもロケが行われていて、ベトナム帰還兵らしき男がヘリコプターの音を聞いて、「爆撃だ!」と言って飛び出してくる場所は、イーストリバーに浮かぶルーズベルト島の廃墟ではないかと思われる。建物の中もまわりも雑木だらけで、文字通り都会のジャングル状態。
冒頭で主人公の青年がスプレーで壁に文字を描きながら歩き回っているゴミだらけの街路は、地下鉄アスタープレイス駅近辺だ。いまはもうこんなに汚くないのだろうけど。

 

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●監督・脚本/ジム・ジャームッシュ
●出演/クリス・パーカー、リーラ・ガスティル、ジョン・ルーリーほか
●1980年、アメリカ映画
●Blu-ray ¥3,024 DVD ¥1,944
●販売元/バップ
©1980 Jim Jarmusch

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>>『グロリア』

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03. 『グロリア』

 

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マンハッタン島は中央に行くほど地価が高く、したがって安全度も高く、川のほうに接近すると危険が多くなる。それでもサウスブロンクスに比べたら大したことはない。その恐るべきエリアを舞台にしているのが、カサベテスの『グロリア』である。コワイもの見たさに行きたいと思っても、それをする勇気のなかったわたしは、代わりにこの映画でブロンクスのクールさを味わった。
空撮シーンではじまるが、そのシーンにちらっと出てくるのはヤンキースタジアム。ブロンクスにあるのでビビって行けなかった場所のひとつだ。
ジーナ・ローランズ扮する女ギャングが、家族を皆殺しにされてひとり残った少年を連れて一夜を明かす木賃宿は、高架になったロングアイランド鉄道の駅下にある。カーテンのない窓の外にネオンが面滅しているのを少年がじっと見つめている。世界中どこでも安宿に泊まるたびによみがえってくるシーンである。
あの頃の地下鉄は車内も駅構内もものすごく汚かったが、映画はその汚さも充分に満喫させてくれる。ジーナが追ってきた敵に拳銃を向ける車内の活劇シーンはすごい迫力。42丁目駅の構内を逃走するところも、タイムズスクエア界隈の猥雑さを感じさせて好きだ。

 

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●監督・脚本/ジョン・カサベテス
●出演/ジーナ・ローランズ、ジョン・アダムスほか
●1980年、アメリカ映画
●DVD ¥1,522
●販売元/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©1980 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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#02 山崎まどか(コラムニスト)「オールド・マンハッタン・ラブストーリー。」
#03 伊藤なつみ( 音楽ジャーナリスト)「ニューヨークの街に育まれた音楽。」
#04 新元良一(作家)「ニューヨークらしい洗練されたユーモアを映画で味わう。」
#05 立田敦子(映画ジャーナリスト)「大人の心に響くニューヨークの甘く切ない恋愛映画。」
#06 RIE OMOTO(THREE グローバル・クリエイティブ・ディレクター)「ニューヨーク裏社会を知る、カッコいい男たちの映画。」

texte: AKIKO OTAKE

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