芸術祭ってなんだ? 札幌のアートと音楽の祭典へ!

Culture 2017.09.01

芸術祭ってなんだ? 観に行くといきなりそう聞かれてしまう、ちょっと不思議な芸術祭が始まりました。2回目になる『札幌国際芸術祭2017』は音楽家の大友良英さんをゲストディレクターに迎えて、祭りの楽しさをよりビビッドに味わえます。

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イサム・ノグチがつくった「モエレ沼公園」の「ガラスのピラミッド」。ゲストディレクターの大友良英さんにとってのスタートポイントです。

北海道での開催だけあって、かなり広いエリアで展開している札幌国際芸術祭ですが、まずは「モエレ沼公園」から行くのがお薦めです。もともとゴミ捨て場だったこの公園は、イサム・ノグチが「大地の彫刻」に変えたもの。イサムは「人間が傷つけた土地をアートで再生する。それは僕の仕事です」と語ったといいます。大友良英さんはそこから、モエレ沼公園こそが「はじまりの地」にふさわしいと感じたのでした。

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大友良英+青山泰知+伊藤隆之の『 (with) without records』。音を記録するレコードはありませんが、レコードプレーヤーがその記憶をつむぐようにかわいい音をたてます。

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大友良英さんの新作『サウンド・オブ・ミュージック』。古い家電の集積が楽しげな音をたてます。この芸術祭のサブタイトル「ガラクタの星座たち」にふさわしい作品です。

モエレ沼公園のガラスのピラミッドに入ると、古いレコードプレーヤーが並んでいます。プレーヤーはときどき回転して、ターンテーブルに取り付けられた金属やプラスチックなどの素材が音をたてます。いつ回転するのかはわからないので、気まぐれな動物を見ているような気分になります。プレーヤーを加工する作業には札幌の人たちが参加しました。作業風景を想像するとちょっと楽しそうです。

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松井紫朗『climbing time / falling time』。黄色い風船が吹き抜けを落ちるように、あるいは上るようにうごめいています。

ガラスのピラミッドの中を埋め尽くしているように見える巨大な黄色い風船は、松井紫朗さんによるもの。吹き抜けを通じてフロアをまたいでいます。中に入ると上下左右の感覚がなくなりそうな不思議な感覚に襲われます。タイムトンネルかワームホールに入って違う次元に飛んでいきそうな気持ちにもなれます。

モエレ沼公園
札幌市東区モエレ沼公園1-1
tel:011-790-1231
開)10:00〜17:00 ※土、9月17日(日)は10:00〜19:00
休)9月9日(土)
料金:個別鑑賞チケット¥500、パスポート
http://moerenumapark.jp/

>>偶然についた傷が、作品の一部になる!?

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偶然についた傷が、作品の一部になる!?

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一見、どうということのないレコードですが、レーベル(中央に貼られているラベル)もジャケットもありません。傷から出る音も音楽の一部になるという、クリスチャン・マークレーの作品です。

札幌芸術の森は会場の大半が、大友さんが敬愛するクリスチャン・マークレーの展示にあてられています。なかでも展示の最初にあるレーベルが貼ってない1枚のレコードは、大友さんの原点ともいえるもの。このレコードは剥き出しで売られていて、傷がついたらその音も作品になる、というものなのです。偶然についた傷も音楽の一部になる、その発想が大友さんの考え方を大きく変えました。

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リサイクル工場でいろいろな機械が解体される様子を映し出すクリスチャン・マークレーの作品。分解する音がリミックスされてチャーミングな音楽になります。捨てられたものが生まれ変わって再生する、その軌跡も思わせるアートです。

「札幌芸術の森美術館」の野外美術館はアントニー・ゴームリーらの彫刻が点在する彫刻庭園になっています。そこでサウンド・アーティストの鈴木昭男さんが設置しているのが『点音(おとだて)』という作品。足と耳の形が一体になったデザインが施されたプレートが置いてあるので、そこに立って周囲の音に耳を傾ける、というアートです。普段は違うことに気をとられていて、聞こえていても聞いてはいない音がより鮮明に意識されます。瞑想とはこんなものかもしれない、とも思えてきます。

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鈴木昭男さんが作品『点音(おとだて)』を設置している、札幌芸術の森の野外彫刻。写真はダニ・カラヴァン『隠された庭への道』。この作品のほかにも数カ所に鈴木さんの作品が置かれています。

札幌芸術の森
札幌市南区芸術の森2-75
開)9:45〜17:30 ※9月1日(金)以降は9:45〜17:00、入場は各30分前まで
無休
料金:個別鑑賞チケット¥1,100、パスポート
https://artpark.or.jp/

>>壊れ、摩耗しても美しい作品とは。

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壊れ、摩耗しても美しい作品とは。

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毛利悠子『そよぎ またはエコー』。ここでは長い回廊の両端から出る音が一致して聞こえますが、もう一方の端ではずれて聞こえます。

札幌芸術の森近くにある札幌市立大学 芸術の森キャンパス「スカイウェイ」は空中に伸びる長い回廊です。その空間を活かして毛利悠子さんは、何かが壊れていく様子をテーマにしたインスタレーションを作りました。北海道を拠点に活動した彫刻家・砂澤ビッキさんの「生きているものが衰退し、崩壊していくのは至極自然のことである」という言葉からインスピレーションを得たものです。

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毛利悠子さん作品の一部。鈴の下につけたおもりが磁力で動いて音がします。

「崩れていくことも作品であり、摩耗しても作品となる。風雪というノミをもって彫刻が作られていく、といった意味の言葉に感銘をうけました」(毛利さん)

ここではノルウェーのサウンド・アーティスト、カミーユ・ノーメントが朗読した砂澤ビッキの詩と音楽家坂本龍一が作曲したピアノ曲が流れています。その同じ音源を、長い回廊の端と端でほんの少しだけ、ずらして再生します。すると一方の端ではふたつの音源がぴったり重なって聞こえますが、もう一方の端では0.5秒ずつずれて聞こえます。ぴったり重なって聞こえる側から、もう一方の端に向かって歩いていくと、音が壊れていくような感じがするのです。壊れたり、損なわれたりしても美しい。美はあらゆるところに遍在するのです。

札幌市立大学 芸術の森キャンパス
札幌市南区芸術の森1
開)9:45〜17:00
休)8月27日(日)、9月22日(金)、9月23日(土)
※9月16日(土)は12:00〜14:00入場制限
入場無料
交通:会場連絡バス(JR札幌駅北口発、土日祝のみ)で37分
地下鉄南北線真駒内駅より中央バス12分、「札幌市立大学前」下車、会場入り口まで徒歩8分

>>写真家・石川直樹がとらえた北海道の風景。

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写真家・石川直樹がとらえた北海道の風景。

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石川直樹展『New Map for North』。アイヌ民俗博物館の立石信一さんと彫刻家の国松希根太さんのプロジェクト「アヨロラボラトリー」との共同企画です。

「北海道というと北の果て、というイメージがあると思いますが、僕にとってはアラスカやシベリア、ノルウェーに続く『北方世界の入り口』なんです」というのは写真家の石川直樹さん。18歳のときから20年にわたって断続的に北海道やサハリンを訪れた記憶からの実感だそうです。

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床に置かれているのは国松希根太さんの彫刻作品『WARMHOLE』。丸太を燃やして削っていったものです。壁にかかっている作品も板に描かれています。

札幌宮の森美術館には、石川さんが撮影してきた風景や狩猟の様子、建造物などの写真が並びます。とくに、白老と登別の間にある「アヨロ」と呼ばれていた地域の写真は神秘的です。縄文時代から人が住んでいた形跡があるその地には、アイヌの人々が「カムイミンタル」(神が遊ぶ庭)や「アフンルパル」(あの世の入り口)と名付けた場所がありますが、その意味ははっきりとはわかっていません。北の大地には思ったより深い歴史が眠っているのです。

札幌宮の森美術館
札幌市中央区宮の森2条11-2-1
tel:011-612-3562
開)10:30〜19:00(入場は30分前まで)
休)火
料金:一般¥800 ※パスポート提示で入場割引あり
交通:地下鉄東西線円山公園駅よりJRバス「宮の森1条10丁目」下車、徒歩3分
http://miyanomori-art.jp

>>歓楽街にもアートが出現!

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歓楽街にもアートが出現!

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「レトロスペース坂会館別館」。このほかにもレトロでキッチュなものが満載です。確かにアートはこれに勝てる気がしません……。

古代の聖なるものから現代の俗なるものへ。振れ幅が広いのもこの芸術祭の特徴です。歓楽街・すすきのの一角にある「北専プラザ佐野ビル」の地下に一歩足を踏み入れると懐かしのポスターや人形、たばこのパッケージなどに囲まれます。この「レトロスペース坂会館別館」は1994年に坂一敬さんが開いた私設博物館「レトロスペース坂会館(本館)」の別館です。その隣には「てっちゃん」こと阿部鉄男さんが20年の歳月をかけて雑貨で埋め尽くした「大漁居酒屋てっちゃん」の店内を撮影した写真や、「てっちゃん」自ら描いた油絵などをコラージュした空間が広がります。

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涅槃に誘われそうですが、『北海道秘宝館「春子」』の内部です。

さらに進むと2010年に閉館された北海道秘宝館の蝋人形を修復し、都築響一さんが撮影した写真が飾られた部屋があります。この3つは「札幌の三至宝」なのだそう。公式ガイドブックには「アートはこれを超えられるか!」との煽り文句が。一見価値のなさそうなものでも大量に集積させるとアートになる。そんな真理があるのかもしれません。

北専プラザ佐野ビル
札幌市中央区南5条西3-2
開)13:00〜20:00
休)月 ※9月18日(月)は開館
料金:まちなか会場共通券¥500、パスポート

>>アート散策の合間に立ち寄りたいショップ&レストラン。

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アート散策の合間に立ち寄りたいショップ&レストラン。

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梶原加奈子さんがディレクションした布や服が並ぶショップ「COQ(こきゅう)」。

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「COQ」のオープンキッチンでは色鮮やかな前菜が盛りつけられていきます。

アートを楽しんだらテキスタイルショップと、北の大地の恵みがおいしいレストランがひとつになったお店に。「COQ(こきゅう)」はテキスタイル・デザイナーの梶原加奈子さんと札幌の1ツ星レストラン、アキナガオがコラボレーションしたお店です。ショップでは梶原さんが全国の工場や職人を訪ねて共同開発したテキスタイルや服、小物が並びます。半透明な布に写真をプリントしたもの、無縫製のニットなど、ユニークな布はアートやインテリアにも使えそう。ダイニングでは地元の旬の野菜などを使った目にも鮮やかな一皿が楽しめます。

COQ
札幌市南区常盤5条1-1-23
tel:011-252-9095(ギャラリー&ショップ)、011-252-9094(ダイニング&
ゲストハウス)
営)11:00〜19:00(ギャラリー&ショップ)、11:00〜20:30(19:00L.O./ダイニング)
休)月 ※祝日の場合は翌日
http://coq-textile.jp

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「レトロスペース坂会館別館」などがある北専プラザ佐野ビル、端聡さんの作品『Intention and substance』。上から落ちる水滴が強力な発光器の熱で蒸気となって立ち上ります。実際はもっと黄色く見えるこの作品は、水であるはずなのに炎のようにも見えます。

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1970年代にデパートとして建てられた「金市舘ビル」、梅田哲也さんのインスタレーション『わからないものたち』。札幌各地で集めた廃材が光や音を放ちます。

一通り回って最初の質問「芸術祭ってなんだ?」に戻ると、いろいろな答えが湧いてきます。この芸術祭を作ってきた大友さんや「バンドメンバー」と呼ばれていた企画チームも試行錯誤を繰り返していました。芸術祭ってなんだ? その問いは芸術ってなんだ? というのと同じぐらいたくさんの答えがあるものなのでしょう。

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札幌国際芸術祭2017 芸術祭ってなんだ?—ガラクタの星座たち—
開催期間:開催中~10月1日(日)
開催場所:モエレ沼公園、札幌芸術の森、札幌市立大学ほか
料金:パスポート一般¥2,200ほか

●問い合わせ先: 札幌国際芸術祭実行委員会 事務局
tel:011-211-2314
info@siaf.jp
http://siaf.jp/

photos & texte:NAOKO AONO

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