ハリポタ人気で世界が直面するフクロウ問題

Culture 2017.09.07

From Newsweek Japan

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Jim_Pintar-iStock

「私もヘドウィグが欲しい!」と思う『ハリー・ポッター』ファンが少なくないようで、各地で違法なフクロウ取引が拡大。一方で面倒を見きれなくなった飼い主によるフクロウの遺棄も問題になっている。

ハリーの忠実な友ヘドウィグからの影響

1997年の発表以来、20年経った今でも世界中で愛されている『ハリー・ポッター』シリーズ。原作の書籍のみならず、映画やテーマパークなど幅広い分野で人気を博している。しかしその陰で、フクロウが危機に瀕しているという。

魔法使いハリーのそばには、いつもフクロウのヘドウィグがいる。大型の白いフクロウはハリーの忠実な友人だ。「私もヘドウィグが欲しい!」と思うハリポタ・ファンが少なくないようで、世界的にフクロウがペットとして人気になっているようだ。そしてそれが原因で、世界のフクロウは危機に瀕している。

インドネシアではわずか650円で売買も

ハリポタの初めての映画が公開された2001年の時点では、インドネシアの鳥類市場で売られていたフクロウはわずか200〜300羽だった。しかし2016年には1万3000羽に激増し、違法なフクロウ取引が拡大しているとガーディアンが報じている。

英オックスフォード・ブルックス大学のビンセント・ナイマン教授とアナ・ネカリス教授が調査を実施。環境保護に関する科学誌グローバル・エコロジー&コンサベーションに結果を発表した。

両教授は2012〜2016年、インドネシアのバリ島とジャワ島で計20の市場を訪れ調査した。インドネシアでのフクロウ取引は、割当制度で制限されてはいるものの違法ではないため公然と行われており、市場内を巡ることで価格や種類などのデータを集められたという。

調査によると市場でのフクロウ販売価格は平均で1羽28〜38ドル(3000〜4100円)。小さなコノハズクだと、幼鳥が6ドル(約650円)で売られていたこともあり、価格が決して高くないことも、フクロウの人気を押し上げている理由と思われる。

しかし問題は、こうして売られているフクロウのほぼ全てが、野生から捕獲されたものということだ。ナイマン教授らは、インドネシアの市場では捕獲された野生鳥の商業的取引は禁止されており、本来こうしたフクロウの売買はできないはずだと指摘する。

インドネシアで保護鳥に指定されているフクロウはビアクコノハズクのみ。市場で売買されていたフクロウはどれも、インドネシアのみならず世界的にも絶滅が危惧された種類ではなかったものの、フクロウをインドネシアの保護鳥に指定することが、フクロウ人気からのネガティブな影響を軽減する一歩だとナイマン教授らは訴えている。

インドではハリポタと黒魔術が原因

インドでもハリポタ人気を受けてペットとしてのフクロウ人気が高まっており、違法な鳥売買が増加している。これを受けて野生生物保護団体トラフィックが2010年、インド国内のフクロウ生息数に関する調査を実施。インドのラミッシュ環境相は同年11月、調査報告書の発表時に、インドでのハリポタ人気がフクロウ生息数減少に影響を及ぼしていると主張した(BBC)。ただしトラフィックの報告書によるとインドの場合、ハリポタ人気のみならず、黒魔術に使用するという理由でフクロウが求められる場合も多いという。

≫陰りを見せ始めたフクロウ人気

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人気が一回りした本国ではフクロウ遺棄

一方ハリポタが生まれた英国では、面倒を見きれなくなった飼い主によるフクロウ遺棄が2012年に問題になっていた。当時のミラー紙によると、ハリポタ・シリーズ最後の映画が公開された2011年からフクロウ人気が陰りを見せ始めた。

英国でフクロウをペットとして飼うことは合法で、簡単に売買できる。しかしフクロウ飼育には広いスペースが必要で、またお金もかかる。フクロウの寿命は20年ほどと長いこともあり、ハリポタの影響からフクロウを飼い始めたはいいが、面倒を見きれなくなって手放す人が多いようだ。野生に逃がされたフクロウはかなりの数になるとみられているが、フクロウを野生に放つのは違法行為で、6カ月の禁固刑か5000ポンド(約70万円)の罰金が科せられる。そのため保護施設に引き渡す人も多く、保護施設はフクロウで溢れているという。

このような状況を受け、ハリポタ・シリーズ著者のJ・K・ローリングは当時、声明を発表するに至ったほどだ。「私の本の影響から、家の中の小さな鳥かごに閉じ込められてフクロウが満足すると考えている人がいたら、それは間違いだ、と強く言いたい」と述べ、自分で飼うより保護施設のフクロウのスポンサーになった方が、フクロウに会いに行けるし幸せで健康的な暮らしを与えてあげられる、と訴えていた。

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ニューズウィーク日本版より転載

文 : 松丸さとみ

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