ポジティブな孤独、あるいはひとりでいることのメリット。
Culture 2018.10.06
孤独は敬遠されがちな状態・概念だが、心の健康にとっては必ずしも悪いことではない。適切に活用すればメリットさえある。ふたりの専門家がその理由を説明する。
孤独とは、自分のために時間を取ること。photo:iStock
家族に友人、仕事にSNS……私たちは年中、なにかに引っ張りだこだ。自分のためだけに使う時間や、ひとりでいる時間はほとんどない。ときに否定的に見られることもある孤独だが、実はいろいろなレベルでメリットがある。孤独のプラス面について考えてみよう。
充実した人生を送るために必要な、ひとりの時間。
誰かと一緒に時間を過ごしたいと思うのは自然なこと。だが、バランスを取ることも大事だ。「いつも人と一緒にいると、人間関係の中で自分自身を見失いがちです。絶えず人の影響を受けているわけですから」と、心理療法士で『La positive solitude(ポジティブな孤独)』の著者エルヴェ・マニャンは説明する。彼曰く、そうした状況にいると自分自身を解放することができなくなってしまう。「充実した人生を送るためには、ひとりになる時間を作ることが肝心です。つまり、世の中や日常の出来事から距離を置くのです。そうすることで、自分自身の内面をじっくり見つめる機会を持てるようになるのです」。
すると、自分自身を深く知ることができるだけでなく、自分の身体から送られてくる“微弱な信号”を受け止められるようになる。「つまり、筋肉の緊張や疲労、あるいは鎮静といったさまざまな身体的感覚のことです。こうした感覚には、普段はあまり意識が向かないものです」と解説するのは、心理学者で『Votre meilleur ami c’est vous(あなたの一番の親友は、あなた自身)』の著者クレール・ミジだ。
ひとりになることは、自分自身の感情を把握するためのいい機会でもある。ミジはこう語る。「自分を知ることを学ぶと、自身をコントロールできるようになります。そうすると、物事をありのままに受け入れられるようになります。未知の状況や人に対してより一層、心を開けるようになるのです」
寛容さや忍耐力が身に付くいてくると、人と一緒に過ごす時間の質も向上する。マニャンによれば「ひとりで物事に取り組む習慣がつくと、穏やかな気持でいられるようになり、何がなんでも人と一緒にやらなくては……というこだわりがなくなります」。そしてさらなる効果があると、ミジは付け加える。「いまという瞬間をこれまで以上に大切にするようになります。記憶や不安といったものに囚われて、多くの人が疎かにしていることです」
孤独を怖いものにする、幼少期の何気ないひと言。
とはいえ、ひとりで時間を過ごすのが苦手という人もいる。
人によっては幼い時期に、ひとりでいることをネガティブな経験と受け止めてしまうことがあるのだ。いたずらをした子どもに、「お仕置きです。自分の部屋に戻りなさい」と言うのは珍しいことではない。親がよく口にするこのセリフ、なんでもないひと言のように思えるが、そうではない。
「このひと言のおかげで、孤独と罰との間に直接的な結び付きができてしまいます。その結果、ひとりでいることが子どもの中で、家族や社会というサークルから排除されるという意味を持ってしまいます」とマニャンは説明する。こうなると、大人になっても、孤独にいい印象を抱けなくなるという。
加えて、人間は群れを成して生活する生き物だ。「私たちはもっぱら共同体単位で動いており、互いに他者を必要としています」とミジは強調する。それゆえ「社会は孤独を好ましいものとして捉えません。ひとりでいるのは社会性がないからだ、となるのです。けれども、自分のことや自分の欲求に注意を向けるのは自然なことです」とマニャンは付け加える。
というわけで、キャンプをしながら秋の夜長を過ごそうと提案したのに誰も乗ってこないようなら、ひとりで出かけてみてはどうだろう?
texte:Raïnat Aliloiffa (madame.lefigaro.fr)