オスカーを勝ち取った謙虚な女優、オリヴィア・コールマン。

Culture 2019.02.27

アカデミー賞授賞式が2月24日に開催され、『女王陛下のお気に入り』でアン女王を演じたオリヴィア・コールマンが主演女優賞の栄冠に輝いた。これまで主にイギリスのテレビドラマで活躍していた女優を、“狂気の女王”の役に抜擢したのは、ギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督。45歳の女優は最高の演技で応えた。

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ヨルゴス・ランティモス監督作『女王陛下のお気に入り』に出演したオリヴィア・コールマンがアカデミー主演女優賞を獲得した。(2019年2月24日、アメリカ・ロサンゼルス)photo:Abaca

プレゼンターで昨年度の主演女優賞受賞者フランシス・マクド―マンドに名前を呼ばれると、倒れそうなほどに動揺し、夫のエド・シンクレアや共演者のエマ・ストーンらに囲まれて祝福されたオリヴィア。ステージに着くと目をさらに丸くして、「ストレスが溜まるわ! とっても愉快。オスカー取っちゃった!」とスピーチを始めて会場を沸かせた。

彼女はすでに、ゴールデングローブ賞コメディ部門主演女優賞、ヴェネツィア国際映画祭主演女優賞、英国アカデミー賞主演女優賞を受賞していた。その受賞歴に、アカデミー賞主演女優賞が加わったのだ。

ランティモス監督は、ブラックユーモアの効いた映画『女王陛下のお気に入り』(日本では2月15日から公開)の主演にオリヴィアを抜擢。45歳になったばかりの女優にとって、本作品は生涯の一作となった。

18世紀初頭のイギリスに実在した、病弱で気まぐれな女王の人生は、私たち観客を人間の魂の暗い奥底へと誘う。主人公の人物像は、流産を14回経験し、幼い子どもを2人亡くし、息子を11歳で亡くしたステュアート家最後の女王アンを題材に、自由な解釈を加えて造形された。レディ・サラとその従姉妹アビゲイル(レイチェル・ワイズとエマ・ストーンが素晴らしい演技を見せている)との間に勃発した、抑うつ症の女王からの寵愛をめぐる熾烈な争いがテーマだ。さながら、#MeToo後の世界で展開する「ゲーム・オブ・スローンズ」といった様相。細部までこだわり抜かれた美術と衣装も見ものだ。

英テレビドラマ界の名脇役。

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アン女王(右、オリヴィア・コールマン)を意のままに操る、公爵の妻レディ・サラ(左、レイチェル・ワイズ)。

オリヴィアに話を戻そう。彼女をご存知の方々にとっては、テレビドラマ「ブロードチャーチ~殺意の町~」の人情味のある刑事エリー・ミラー役がまず思い浮かぶかもしれない。知らなかったという方々はひょっとしたら、人々が待ち望むテレビドラマ「ザ・クラウン」のシーズン3のキャスティングリストでその名前を見ているのではないだろうか。というのも、Netflix配信のこのドラマでクレア・フォイの後を継ぎ、次シーズンからエリザベス2世のすみれ色のスーツを纏う女優はオリヴィアなのだ。次はランティモス監督作の女王の対極にある、冷静な女王が役どころだ。

ロンドン北東にあるノーフォーク州出身の女優は、これまでは主にイギリステレビ界で名脇役として活躍してきた。イギリスの公共テレビ局チャンネル4で放送された「ピープ・ショー ボクたち妄想族」や「グリーン・ウィング」などのコメディドラマが代表作だ。

2011年、パディ・コンシダイン監督の映画『思秋期』で、夫からの暴力と侮辱に耐え続けた妻の役を演じ、サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞。4年後、ランティモス監督の誘いを受け、映画『ロブスター』のオーディションに参加する(無気味なホテル支配人の役を演じている)。本作は2015年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。監督は彼女の才能にひと目惚れ。2014年、つまりクランクインの3年前に、ランティモスが『女王陛下のお気に入り』の脚本を送った女優は彼女だけという惚れ込みようだ。

「実際の私は修道僧のよう」

彼女はすぐに出演を承諾。役作りのために、文句ひとつ言わず体重を15キロ増やした。撮影チームの全員が彼女の魅力の虜になった。「彼女に恋してしまった」というエマ・ストーンの言葉がすべてを物語っている。アカデミー賞候補になり、Netflixの「ザ・クラウン」の女王役に決まったコールマンだが、これは彼女自身にとっても予想外だったようだ。2018年11月、「実際の私は修道僧のよう」と『ローリング・ストーンズ』誌で語っている。また「ガーディアン」紙では、「好きなことは自宅で夫と一緒にいること」とも。法学部出身で作家に転向した夫のエドとの結婚生活は25年になる。ふたりの間には3人の子どもがいる。

「家で見ている子どもたち! 見ていなかったらそれはそれでいいけど。二度とないことだから、見ていてくれたらうれしいわ」と、オリヴィアは受賞スピーチで語った。続けて、「そして、テレビを見てスピーチの練習をしている少女たち。この先、何があるかわからないよ!」。ユーモラスで謙虚な人柄をうかがわせる彼女のスピーチは会場を魅了した。「私の夫、エド。私の親友。心から愛しています。25年私の最高の支援者です。彼、泣くわよ。私は泣かない!」

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texte:Marion Galy-Ramounot

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