ロイヤル・コーギー、エリザベス女王の愛犬たち。

Culture 2019.04.20

スーザンからウィローまで、80年間にわたりエリザベス女王の後をついて歩いてきたウェルシュ・コーギーたち。彼らをモチーフにしたアニメーション映画『The Queen's Corgi』がヨーロッパ各国で上映中、コーギーたちの故郷イギリスでも7月5日から公開される(日本公開は未定)。この機会に、エリザベス女王以外にはメーガン妃だけが手懐けることのできた高貴な犬たちの歴史を振り返ってみよう。

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エリザベス女王とコーギー。スコットランド、バルモラル城にて。(1971年)photo:Lichfield/Getty Images

ドッキー、シュガー、ハニー、モンティ、ウィロー。バッキンガム宮殿の片隅に居候していた女王の親戚ではない。犬好きならご存知だろう、女王の愛する、ウェルシュ・コーギーたちの名前だ。この有名な犬たちをモデルにしたアニメーション映画『The Queen's Corgi』が4月10日からフランスでも公開されている。

女王のお気に入りの生意気なコーギー、レックスがロンドンの物騒な裏町に迷い込んで繰り広げる冒険譚だ。「よきにつけ悪しきにつけ」話題になることが多い犬種だけに、フランス・コーギー・クラブ委員会のベアトリス・キニオは、コーギー熱が高まる一方で誤解も生じていると懸念するが、その彼女にしても、ウェールズ原産のウェルシュ・コーギー・ペンブロークという犬種がエリザベス女王のおかげで有名になったことは否定しない。

『The Queen's Corgi』の予告編。

父王ジョージ6世がバッキンガム宮殿にコーギーを連れてきたのは、エリザベス女王がまだ7歳の頃だった。女王がバルモラル城の庭でこのコーギー・ペンブロークと一緒にいるところを写した1930年代の古い写真が残っている。女王が自分の責任で犬を飼い始めたのは18歳の時。初めて飼ったのがコーギーのスーザンだった。それからというもの、女王とスーザンはほとんど片時も離れず、常に行動をともにした。(スーザンは1947年のエリザベス女王とフィリップ王配の新婚旅行にもお伴し、ヨットやプライベート飛行機での旅を楽しんでいる)。スーザン以降、途切れることなく王室で飼われてきたコーギー。王朝とも呼べるこの長い系譜は、2018年4月、ウィローの死によって絶えるまで続く。この間、30頭ものコーギーたちがバッキンガム、サンドリンガム、バルモラルで王様のような暮らしを送ってきた。

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特別仕様ベッドに磁器の皿。

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エリザベス女王と愛犬のコーギーたち。ノーフォーク州サンドリンガムにある女王の邸宅にて。(1980年)photo:Anwar Hussein/Getty Images

女王が所有する邸宅にはそれぞれ「コーギー部屋」と呼ばれる、女王のコーギー専用の部屋があった。犬たちが眠る籐籠のベッドは、床より高い位置に据えられていた。もちろん、隙間風が当たらないようにという配慮だ。この部屋に不意に訪れる客を、犬たちはあまり歓迎しない。ウィンザー城の時計技師は、1954年に女王の犬たちに挨拶をしに来て噛みつかれ、足首にその時の傷跡が残っているという。

毎日17時きっかりに、執事のひとりが磁器の餌皿に盛った食事を運んでくる。メニューは肉と、あらかじめ獣医師団の認可を得た薬草。「女王は8頭のコーギーを自分の周りに半円を描くように座らせ、女王自ら、飼われている年数が長い犬から順番に餌を与えます」と、2015年にドッグトレーナーのロジャー・マグフォードが明かしている。

マグフォードが王室で飼われている犬の監督係を務めることになったのは、犬たちが王室スタッフに対して攻撃的な行動を繰り返し取ったからだ。そもそも1968年に労働党の議員ピーター・ドイグが、「猛犬注意」の看板をバルモラル城の入り口に掲げてはどうかと王室に対して公式に要請している。確かに、王室のコーギーたちは、体高25cmから30cm、体重は大きくて15キロという立派な体格だ。

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名女優や政治家にも愛されてきたコーギー。

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バッキンガム宮殿でガーデンパーティが開かれている最中、エリザベス女王のコーギーとドーギーを散歩させる女王の執事。(1993年)photo:Tim Graham/Getty Images

こうしたことがあったため、「コーギーには飼いにくいとか、凶暴な犬という悪い評判が立ってしまいました」とフランス・コーギー・クラブのベアトリス・キニオは嘆く。フランス・コーギー・クラブは、コーギー愛好家の集いの場として、その素晴らしさを世に広めることを目的に1995年に設立された同好会だ(現在の会員数は120人)。

「ウェルシュ・コーギーはもともと牧羊犬で、伝統的に牛の群れの見張り役として使われてきました」と彼女は言う。「きちんと教育すれば、とても飼いやすい犬種です」。ジャーマン・スピッツをルーツとするこの犬種のファンは、エリザベス女王だけではない。往年の大女優エヴァ・ガードナーは、飼い犬のコーギーたちを自分の子どものように可愛がったという。フランスの第18代大統領シャルル・ド・ゴールも、ラズモットとラズモットIIという名の2頭のコーギーを飼っていた。作家のスティーブン・キングはペットのコーギーについてこんなツイートをしている。「別名“小悪魔”。モリーは、次はどんな悪事を働こうかと考えながら、穏やかな午後を過ごしているところ」

コーギーはアメリカや日本でも人気の犬種だ。女王が飼っている3頭のコーギー、モンティ、ウィロー、ホリーが、2012年のロンドン・オリンピック開会式の映像に出演してから、その人気はますます高まるばかり。オリンピック用に撮影されたショートフィルムで、ダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドを女王の執務室まで堂々とエスコートする犬たちの姿が記憶に新しい。

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メーガン妃だけがコーギーを手懐けた。

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サンドリンガムの敷地内にある、エリザベス女王が飼っていた3頭のコーギー、シュガー、スーザン、ヘザーの墓。(1985年)photo:Tim Graham/Getty Images

モンティはショートフィルムが公開されたその数カ月後に13歳で亡くなった。2016年にはホリーがモンティの後を追った。ホリーは女王の私邸であるバルモラル城の窓から見える庭の一角に埋葬されたという。

代々のロイヤル・コーギーたちは、ノーフォーク州のサンドリンガムの敷地内に設けられた小さな専用の墓地に眠っている。スーザンの最後の子孫であるウィローは、長く病気を患った末に、2018年4月、14歳(人間の年齢に換算して72歳)で亡くなった。「デイリー・メール」紙は「女王はウィローの死を深く悲しんでいる」と報じ、こう続けている。「おそらく女王にとって、ウィローは両親や子ども時代の思い出と自分とを結ぶ、最後のつながりだったのだろう。ウィローの死はひとつの時代の終わりを告げているようだ」

今年93歳になるエリザベス女王は、もうコーギーを飼うことはないと周囲に伝えている。「大切なパートナーを後に残すのは忍びない」という気持ちからだ。子どもや孫の中に、それを止めようとする者はいないようだ。ダイアナ妃は女王には内緒で犬たちのことを「動く絨毯」と呼んでいたという。ウィリアム王子は2012年にテレビ番組のインタビューで、犬たちが「しょっちゅう吠えている」と明かし、「彼女(女王)はどうやって耐えているのだろう」と首をひねっている。2017年の婚約発表当日、BBCに出演したハリー王子は、「生まれてこのかた33年、ずっと吠えられてきた」と嘆いている。

現在のところ、エリザベス女王のボディガードを手懐けることに成功したのはたったひとり、メーガン妃のみ。彼女がBBCに語ったところによると、初めて女王の部屋でお茶をいただいたとき、「犬が女王の足元に来て静かに寝そべった」という。「とても可愛らしい姿でした」とほほ笑むメーガン妃。確かに、彼女にとっては重要な勝利に違いない。

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texte : Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr)

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