香りと性欲の密接な関係。

Culture 2019.10.04

香りはあなたの性欲を意のままに操っているかもしれない。香りによって欲望が掻き立てられることもあれば、逆に阻害されることもある。嗅覚が官能に及ぼす影響について探ってみよう。

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リビドーにおける匂いの役割。Photo : iStock

鼻腔をくすぐり、記憶の中に刻み込まれる――それが匂いと呼ばれるもの。匂いは不快に感じることもあれば、うっとりすることもある。食欲を刺激する匂いもあれば、気持ちを落ち着かせる匂いもある。また、匂いが性的な興奮の引き金になることもある。嗅覚は、密かに性行動に影響しており、エロティシズムにも関わっているという。詳しく解説しよう。

匂い、それはエロティシズム。

人間が一人ひとり違うように、嗅覚のレパートリーと匂いを感じる鼻腔の感受性も人それぞれだ。パートナーの体臭があなたにとって最高の愛の妙薬だとしても、少しもおかしなことではない。

「安定した関係にあるカップルの場合、相手の体臭はほかのどんな匂いよりも心地よく感じられます」と、国立農学研究所文化科学科研究員ロラン・サレスは説明する。その証拠として、サレスはこのテーマに関してこれまで行われてきた研究を列挙する。たとえば女性の被験者に、配偶者のものを含むさまざまなTシャツの匂いを嗅がせ、いちばん気に入ったものを選ばせるという実験。ほとんどの被験者が、自分の配偶者の服の匂いを好むという結果が得られた。しかも、好感度もほかの服の匂いに比べて遥かに高い傾向にあったという。

性交渉の際に感じる興奮や欲望には、あらゆる領域が関与している。ある種のファンタジーや、感覚の覚醒度も影響する。触覚や視覚と同じように、嗅覚と想像の世界との間にも深い関連がある。カップルセラピストであり、性科学に関する著作も多いジェラール・ルルーはこう言う。「香りは大脳にある嗅脳と呼ばれる部分で知覚されます。この領域は快感中枢に当たります。したがって、匂いとはずばりエロティシズムなのです」

匂いの力はそれだけにとどまらない。「匂いは海馬でも処理されます。海馬は大脳にある繁殖機能を司る部分です。したがって、匂いは肉体的な交渉の媚薬ということになります」とサレスは補足する。

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悩殺する香り。

そんなわけで、人の心と身体を刺激する香りの探求は昔から行われてきたわけ。香水産業も例外ではない。ジェラール・ルルーによると、「麝香(じゃこう)は官能を刺激する匂いと言われ、合成ムスクの開発が盛んに行われています。香水の成分としてよく使われます」と語る。

しかしながら、どんないいことにも終わりがある。「6時間経つと、身体から発する匂いは“変調”します。粘膜の働きにより、体臭が新鮮でなくなってしまうのです。別の言い方をすると、シャワーを浴びてから6時間以内なら、デートの前に身体を洗う必要はないということです」と、ルルーは冗談交じりにアドバイスする。

親しい匂い。

匂いがこれほど欲望に決定的な役割を果たすのは、それが記憶に残るものだからでもある。「匂いは記憶と実に密接な関係があります。ある人の匂いが自分の母親やナニーの匂いを思い出させるということが、その人に恋をしたり、惹かれる理由になることもあります」と、前述のルルーは指摘する。人が人に惹きつけられる時、たいていは、こうしたプルースト効果が無意識のレベルで作用しているという。

逆に、顔をしかめたくなるような匂いというのは、過去の嫌な体験がその嫌悪感の元になっていることが多い。ちなみに、一度不快と判断された匂いの記憶を塗り替えるのは簡単なことではない。さらに驚くべきことに、「恋人と別れた後も、その人の匂いはしばらく記憶として保存されています。さらに、大勢の人の中から同じ匂いがする人を嗅ぎ分けることさえ簡単です」とサレスは言う。

ルルーは最後にこう一言、言い残した。「“鼻持ちならない”というのは、なかなかおもしろい表現です。匂いのせいで嫌悪感を抱くことは確かにあります。匂いは私たちの内面生活に、とても大きな役割を果たしていると私は確信しています」

texte : Lucie Rousselle (madame.lefigaro.fr)

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