眠りにつく時、落下するように感じるのはなぜ?

Culture 2019.10.28

まぶたを閉じて間もなく、落下するような感覚になり、ベッドの中で飛び上がったことはないだろうか? あの肝を冷やす感覚は誰もが経験したことがあるに違いないが、どうしてこんなことが起きるのだろうか? 3人の睡眠専門家にこの現象について解説してもらった。

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およそ70パーセントの人が入眠時ミオクローヌスを経験したことがあるという。photo:Getty Images

口元まで布団を持ち上げる、足をこすり合わせる、枕を抱きしめるなど、人それぞれに眠りにつく時のちょっとした儀式があるものだ。なかには時々、落下するような不快な感じに襲われるという人もいるかもしれない。落ちるような奇妙な感覚がした次の瞬間、びくっと飛び上がって目が覚めてしまう。心拍数も少し上がっている。これは悪夢なのか、それとも反射行動かなにかだろうか? 睡眠障害専門医で睡眠障害診療支援を目的とした専門家組織「レゾー・モルフェ」代表のシルヴィ・ロワイヤン=パロラ、時間生物学者のクレール・ルコント、リヨン神経科学研究センター研究員のクリステル・ペロンの3人にこの現象を分析してもらった。

筋肉と脳のずれ。

神経科学研究者のペロンが指摘するように、入眠時ミオクローヌスと呼ばれるこの問題について行われた科学的研究はいまのところ少ない。だが最も有力な説は、浅い睡眠から深い睡眠へ移行する際に、脳と筋肉の入眠のタイミングに生じるずれが原因だというもの。「眠りにつくと、筋緊張は徐々に低下していきます。ところが筋肉の弛緩が脳の弛緩に比べて急速に進むと、脳は筋肉の弛緩を落下と捉え、コントロールを取り戻そうとして筋肉を収縮させます」と彼女は説明する。具体的には、入眠時のぴくつきが起きると、始めに身体の下部、次いでほかの部分が刺激され、その後に通常の状態に戻る。その間、平均して1~2秒だ。

まれに、筋肉が収縮するこの短時間に、視覚的あるいは聴覚的な幻覚が伴うことがある。「自分が穴に落ちていくイメージを見たり、落下とはまるで関係のない音が聞こえたりすることもあります」と時間生物学者のクレール・ルコントは言う。

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生存のための反射行動?

ルコントによると、およそ70パーセントの人が睡眠時にぴくつきを経験したことがあるという。この感覚が代々継承されると言われたら、冗談だと思うだろう。しかし、科学者の中にはそう考えている人たちもいる。彼らによると、この機械的な動きの起源は人類の祖先が樹上生活をしていた時代にまで遡るという。自然界で生き残るため、人類の祖先は寝ている間に木から落ちないよう、生存に不可欠な反射行動として、この入眠時ミオクローヌスの機能を発達させたという。理に適った推論だと、時間生物学者のルコントは言う。「そもそも生物リズムは、原始的生物が環境や地球の公転に適応した結果生じたものですから」

心配性の人も安心してほしい。ロワイヤン=パロラ医師が強調するように、入眠時ミオクローヌスにはまったく害はない。神経科学者のペロンもこう続ける。「睡眠への影響はありません。一般的に、大半の人は自動的にまた眠ってしまいます。子どもの場合、ぴくつきを起こしても気づかないこともあります」

大切なのは規則ある生活リズム。

それでも、入眠時ミオクローヌスの頻度を増加させる要因はいくつかある。「ストレスを抱えていたり、緊張が強い人ほど、運動神経と脳の制御がかみ合わない状態に陥りやすいのです」と前述のロワイアン=パロラ医師は指摘する。神経システムに影響を及す可能性の高いコーヒー、アルコール、タバコなどの刺激物を寝る直前に摂取することも、この現象が繰り返し現れる一因となる。脳を刺激する活動も要因のひとつだ。「現代社会ではテレビやスマートフォン、ゲームに夢中になるあまり、就寝時間や起床時間がずれてしまいがち。こうした生活を続けていると、睡眠時のプレッシャーが増し、ぴくつきを起こしやすくなります」と時間生物学者のルコントは言う。

睡眠についての日誌を書く。

入眠時ミオクローヌスが頻繁に起き、そのことで不安を感じるような場合は、就寝前にヨガや瞑想などの心身をリラックスさせる活動をするのが薦めだ。逆に、夕食後のスポーツは厳禁だ。「リラックスして、就寝前に筋肉をある程度弛緩させておけば、身体と脳の間に極端なずれが生じるのを防ぐことができます」とロワイヤン=パロラ医師は言う。

さらに時間のある人は「睡眠日誌」をつけて規則正しい睡眠を取り戻そう。「毎日、入眠時間と起床時間、目覚めていた時間、夢の内容を日誌に書き込むのです。自分の睡眠の状態を把握して、どこに不具合があるかを明確にさせるといいでしょう」とルコントは提案する。それでもなかなか問題が改善しないようなら、医師や専門家に相談しよう。

texte:Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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