シャネルがサポート、『去年マリエンバートで』が蘇る!
Culture 2019.11.15
1961年の公開と同時に世界に衝撃を与え、同年ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した伝説の映画『去年マリエンバートで』。
現在まで“最も難解な映画”“最も解釈がなされた映画”などと語り継がれてきたこの作品が、オリジナル衣装を提供したシャネルの主導により、高精細4Kデジタル・リマスタリングが実現。昨年、再びヴェネツィア国際映画祭にて上映され、その完成度の高さにスタンディングオベーションが巻き起こった。
『去年マリエンバートで』のヒロイン、女Aを演じたデルフィーヌ・セイリグ。シャネルがデザインしたホワイトのシフォンドレスを纏って。
この『去年マリエンバートで』4Kデジタル・リマスター版が現在、YEBISU GARDEN CINEMAにて上演中! ヒロインのデルフィーヌ・セイリグが纏う、シャネルが手がけた美しい衣装の数々とともに、いまなお多くのクリエイターをインスパイアするこの作品をスクリーンで観ることができる。
シャネルのリトル ブラック ドレスを着る女A(左)。彼女を連れ出しに来た男Xを演じるのは、ジョルジョ・アルベルタッツィ(右)。
舞台は、とある街の豪華なホテル。ブルジョアジーたちが演劇鑑賞や社交ダンス、ゲームに無表情で耽るそのホテルに、ひとりの男が現れる。彼は1年前にここで出会い、愛し合い、1年後に駆け落ちする約束をした女を連れ出すためにやってきた。だが再会した女は、あなたのことは知らない、そんな約束はしていない、と言う。庭園や遊歩道、バーなどで、いくらその思い出を話しても、女は認めようとしない。果たして彼らは本当に1年前に出会い、恋に落ちたのか?
男Xに、あなたのことは知らないと告げる女A。ノースリーブのラメドレスもシャネルが手がけたもの。
女Aの寝室にて。シーンごとに変わる衣装からも目が離せない。
ガブリエル・シャネルは、ジャン・コクトーやジャン・ルノワール、ルキーノ・ヴィスコンティといった映画監督と交流し、ジャンヌ・モロー、ロミー・シュナイダーらスター女優にもオリジナル衣装を提供。当時、ファッション界のみならず映画界でも圧倒的な輝きを放っていた。なかでも『去年マリエンバートで』に登場するリトル ブラック ドレスやホワイトシフォンドレスなどは「ドレス・ア・ラ・マリエンバート」と呼ばれ、サイドにカールを施したセイリグのショートヘア「マリエンバート・カット」とともに世界的なブームを巻き起こした。本作を観たブリジット・バルドーが、シャネルのアパルトマンを初めて訪れ、同じドレスをオーダーメイドしたという逸話も残っているほどだ。
幾何学的なホテルの庭園。本作の公開50周年にあたる2011年には、故カール・ラガーフェルドが手がけたシャネルの春夏コレクションにて、ショー会場であるパリのグラン・パレに庭園が出現。本作へのオマージュが捧げられた。
監督は長編映画『二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』(59年)により、フランソワ・トリュフォーとともに「ヌーヴェル・ヴァーグの先駆者」と称されたアラン・レネ。そして脚本は「ヌーヴォー・ロマン」の中心的存在として知られていた小説家アラン・ロブ=グリエが手がけている。
モノクロームの画面でエレガントな美しさが際立つ、シャネルの美しい衣装の数々とともに、観る者の価値観を揺さぶる不朽の名作を、劇場のスクリーンで体感できるまたとない機会。
折しも現在、シャネルのオートクチュールピースを間近で見られる展覧会『マドモアゼル プリヴェ展』が開催中。期間中に両方を訪れて、そのクリエイティビティに心ゆくまで浸ってみるのもおすすめだ。
シャネルのリトル ブラック ドレスに、ファーコートを合わせて。
●監督/アラン・レネ
●衣装提供/シャネル
●出演/デルフィーヌ・セイリグ、ジョルジョ・アルベルタッツィ、サッシャ・ピトエフ
●1961年→2018年、イタリア・フランス映画
●94分
●配給/セテラ・インターナショナル
YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中
www.cetera.co.jp/marienbad4K
©1960 STUDIOCANAL - Argos Films – Cineriz
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