アメリカの人気作家が繊細に描く、孤独を形作るもの。
Culture 2019.12.07
ラヒリが描く、孤独が教えてくれるもの。
『わたしのいるところ』
ジュンパ・ラヒリ著 中嶋浩郎訳 新潮社刊 ¥1,870
なぜいま、この場所で自分はひとりで生きているんだろう。そう問いかけたことのある人にジュンパ・ラヒリが初めてイタリア語で書き上げたこの小説を薦めたい。母親との埋めがたい距離。かつて愛した男性に感じる違和感。45歳の独身女性「わたし」の心の中でふとした瞬間に波立つ感情。それを「孤独」と呼んでもいいのだけれど、彼女を形作っているのは人生で得たものだけではない。通り過ぎてきた景色を拾い集めるように編まれたこの長編は、失ったものもまた間違いなく「わたし」を形作っていることを教えてくれる。
*「フィガロジャポン」2019年12月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI
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