ウォーキングミーティングが仕事にもたらす効果とは?

Culture 2019.12.25

「ウォーキングミーティング」をご存知だろうか。文字通り、歩きながらミーティングをすることで、近年経営者などが率先して取り入れ、欧米ではポピュラーになりつつある。ウォーキングミーティングがもたらす効果とは?

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社内ヒエラルキーを和らげ、自由な発想で打ち合わせをすれば、社員は健康的に働くことができ、会社も健全になる。photo : Getty Images

フランスのCSRコンサルティングのリーディングカンパニーであるUtopiesでは、ウォーキングミーティングを行うようになった。世の中の流行りに関係なく、ウォーキングしながらミーティングをすると、クリエイティビティが高まり、社内ヒエラルキーが和らぎ、同時に仕事の苦労も軽減するという理由からだ。

午前7時24分。これはハリス・インサイツ&アナリティクス(米市場調査会社)が2018年に実施した調査で判明した、フランス人が毎日オフィスの席に着く平均時間である。また残念な調査結果として、座っている時間の長いライフスタイルは、心血管疾患と2型糖尿病を促進し、背中や胃の痛みを引き起こす、ということがわかった。

「座りすぎは喫煙と同じくらい健康に悪いことです」とUtopiesの創業者であり社長のエリザベス・ラビルは述べる。また、座る時間の長いライフスタイルは、喫煙やエイズウィルスよりも死亡リスクを増すという意見を持つ研究者もいる。あまりに座りっぱなしだと、仕事の後にワークアウトの予約を入れてもさほど効果がないかもしれない。

少なくとも1日あたり合計30分歩くのが理想的だが、重要なのは定期的に、かつ分割して行うことだ。それは仕事中にも同様のことがいえる。19年度の「働きがいのある会社(Great Place to Work)」ランキングにおいて、社員50名未満の会社部門で1位を獲得したUtopiesでは、ウォーキングミーティングを1年前から取り入れ、毎日行われている。ラビル社長はこう説明する。「ウォーキングミーティングは、私たちのグローバルなアプローチのひとつであり、職場環境と職場で可能な運動について考え、実施しているものです」

フランスでまだあまり普及していないが、それ自体は新しいことではない。哲学者のモンテーニュやルソーからスティーブ・ジョブズ、バラク・オバマまで、多くの著名人が反射神経やクリエイティビティ、そして健康のために歩くことによる効果を称賛している。

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都会のハイキング

5〜6人の同僚が一度にパリの大通りに出て、バイクの騒音を聞きながらウォーキングミーティングを行うのは困難だ。このような事態を回避するためには、2〜3人で実施することをすすめたい。打ち合わせの内容や量にもよるが、あまりにもうるさい場所や不向きなエリアは避けよう。「必要なミーティング時間に基づいて、どこに行けばよいかをあらかじめ知っておく必要があります。Utopiesでは、パリ市内のペール・ラシェーズ墓地やスカール広場、プロムナード・プランテを使っています」とラビル社長は説明する。緑の多いエリアやオフィス近くの歩行者用道路などがおすすめだ。

つまり場所選びのポイントは、近所を探索し、緑のあるルートを探すこと。あらかじめウォーキング時間を同僚に伝えるようにしよう。

またミーティング参加者は、季節や必要に応じてスニーカーやマフラー、飲料用ボトル、ポケットティッシュなどを持参するとよい。ラビル社長は「ボイスレコーダー、書類、メモ帳などを持参するのもよいでしょう。休憩を取りながら、交換したばかりの情報をメモするためのベンチはそこかしこにあります」とすすめる。ウォーキングミーティングはうまく構成され、従来の会議よりも時間を取らない。

効率を上げる

会議管理アプリを開発したWisembly社とフランス世論研究所の調査によると、2018年にフランスの幹部たちは会議で平均27日間を過ごした。そして、彼らの多くがあまりにも非効率的で不必要に長い会議を嘆いている。

「快適な椅子に座って、過熱した会議に参加すると、席を立ち辛くなり、必然的に長時間の座り姿勢を余儀なくされるでしょう。また動的な姿勢もありません」とラビル社長は強調する。

いっぽうで、歩く社員はルートや時間、そして計画どおり打ち合わせが進行するように意識する。また言うまでもなく、ウォーキングしている時は注意散漫になることが減る。たとえば携帯電話をスクロールしたり、ほかの人が話している間にメールに返信したりするということがない。

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社内ヒエラルキーを和らげる

このミーティングは特定の面談にも効果的だ。 「ウォーキングミーティングは通常、ストレスを感じやすく生産性の低い、一年に一度の面談や就職面接に最適です」とUtopiesの社長は推奨する。

対面せずに隣に立って話せば、ヒエラルキーが和らげられ、誰もが自由に話すことができるようになる。マネージャーやリクルーターの目が自分に向けられていなければ、自信を持ち、意見を述べるのに長い時間はかからない。また言うまでもなく、歩くことで私たちは深く呼吸するようになり、感情をうまく管理できるようになる。

クリエイティビティを解き放つ

ウォーキングはクリエイティビティを引き出すのにも効果的だ。14年に実施されたスタンフォード大学の調査によると、ウォーキングは自由な発想を60%増加させ、独自のアイデアを生み出しやすくするという。動くと心が解き放たれ、思考回路もよく働き、考えに集中できるようになる。「いっぽう、座っているとクリエイティビティと回復力が損なわれ、さらにモチベーションも落ちます」とラビル社長は言う。したがって、定期的に歩くことで心を軽くし、効果的に仕事をすることができる。

単にやることリストを書き出したり、仕事が手につかなくなったりするのを防ぐ素晴らしい方法だ。歩くことは従業員の幸福感にも直接影響し、ひいては会社の健康状態にも影響する。いくつかの研究は、社内で運動を取り入れると社員の離職率や健康コスト、また企業の収益性に及ぼす高い効果があるという結果を示している。

ただし、古典的な会議が消えることはない。同調査によれば、着席すると結論が出やすいということもわかった。オフィスでは行動計画を決め、外でインスピレーションを得るのがよいだろう。ベストなバランスのためには、普段とは違うことを試してみるのが効果的なようだ。

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texte : Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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