失笑から一転「エミリー、パリへ行く」が人気絶好調。

Culture 2020.12.22

2020年10月初めに公開されたNetflixドラマ「エミリー、パリへ行く」は、シカゴからパリにやって来て、マーケティング会社で働くエミリーの物語。公開とともにフランスでは、ステレオタイプだらけ、とブーイングが起こり、話題になった。とはいえ、ヒロインのおかげで人気は上々のよう。シーズン1の全10話のなかでヒロインが着用したボブハットをはじめ、小物アイテムが飛ぶように売れている。

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Netflixのドラマシリーズ「エミリー、パリへ行く」で主人公のエミリーを演じるリリー・コリンズ。photo : Netflix

ベレー、クロワッサン、書き割りみたいなパリ……。アメリカの一部批評家の意見によると、ドラマシリーズ「エミリー、パリへ行く」の配信は絶好のタイミングだったという。ステレオタイプで埋め尽くされたシーズン1、全10話が、意気消沈した人々にとってよき慰めになっていると。パンデミックが進行し、アメリカの大統領選挙結果をめぐる泥仕合もいまだに続く中、ストレスを抱えた多くの人々にとって、不安を癒す甘い薬になっていたという。
そして、この無邪気な夢の世界では、ファッションもまた元気いっぱい。「セックス・アンド・ザ・シティ」を担当したスタイリスト、パトリシア・フィールドが手がける、主人公エミリー・クーパー(演じるのはリリー・コリンズ)のルックは、コロナ禍の影響で業績悪化に苦しむファッション産業にとっては希望の星だ。

2000年代初めにキャリー・ブラッドショーがカルト的存在になったのは、スタイリングを担当したフィールドの力によるところが大きい。フィールド自身も当時こう語っていた。「シリーズの5番目の登場人物はファッション、つまり私よ」。そのフィールドが20年ぶりにカムバック。いつもの自信たっぷりの口達者ぶりは(いまのところ)やや鳴りを潜めているが、今回の「エミリー、パリへ行く」でも監督のダレン・スターをはじめとする「セックス・アンド・ザ・シティ」のヒット作チームが制作に当たっており、前作で培ったブーム作りのノウハウは健在のようだ。

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カンゴールのボブハットはエミリー・クーパーのこだわりアクセサリーのひとつ。photo : Netflix

マーケティングが生み出した登場人物

10月初めの配信開始以来、SNSではシリーズへのコメントが続々と上がっている。舞台となっているおきまりの絵葉書のようなパリ、パリに舞い降りたアメリカ人ヒロインのありがちな体験、そしてエミリー・クーパーのルックについて。大好きという人もいれば、揶揄する人もいて、意見は真二つ。しかし作品の評価がどうであろうと、ファッションはまた別の話だ。「主人公は、楽観的で、パリで働けることが嬉しくて、フランス流シックを身につけようと奮闘する一方で、同時にアメリカ人としてのアイデンティティも表現する若い女性」とフィールドは「ニューヨーク・ポスト」紙に語っている。つまり、マーケティングで設定されたペルソナのように、ヒロインのエミリー・クーパーはありとあらゆる衣装を着こなしていくというわけだ。

ジャンルミックスが得意でカラフルな服とハイブランドに目がないエミリー。この人物設定はファッションブランドにとってまさに僥倖だ。500万点以上の商品情報を掲載するファッション専門検索エンジンのLystがそのことを証明してみせた。Lystによると、ベレーをはじめとする帽子の検索数は、シリーズ配信開始から数日で3桁跳ね上がったという。なかでも急激な伸びを記録したのは、カンゴールのボブハット。シャネルの多くのアイテムも、別の検索エンジンStylightによると、シリーズ開始から1週間で30%増加。また、第1話から主人公が愛用するお手頃ブランド、アルドのピンクのハンドバッグは、シリーズ配信前から品切れで、ブランドの検索数も64%の増加を記録した。エミリーが第7話で持っていたマーク・ジェイコブスのカメラバッグも検索数が92%増加、ケイト・スペードのバッグに至っては、需要の高まりを受けて発売日が前倒しになった。

エミリーがさまざまなシーンで着用するマイクロミニスカートもトレンドに再浮上。ピンクのデニム、へび柄、アシンメトリー……次々と新しいバリエーションが登場し、忘れられかけていたミニスカートへの関心が一気に高まっている(ガニーではミニスカートの検索数は289%増、キアラ・フェラーニでは60%増)。これらのファッションアイテムに関するビジビリティは明らかになっていない。シリーズ配信元のNetflixは今のところ視聴者数を公開していないが、オリジナル作品のシリーズ1としてはベストに入る好成績、と発表している。この盛り上がりを見る限り、信じないほうが難しそうだ。

texte : Sabrina Pons (madame.lefigaro.fr)

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