親の過干渉が、子どもの幸福感を下げる?!

Culture 2021.02.18

From Newsweek Japan

過干渉を受けて育つと、大人になってからプレッシャーにうまく対応する力を失うという報告もあります。気づかないうちに子どもの自主性や個性を潰してしまわないよう気をつけたいこと、そして子どものやる気を育てるヒントを紹介します。

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干渉が多い親に育てられた子どもほど感情のコントロールが苦手な傾向にある Prostock-Studio-iStock

国連児童基金(ユニセフ)は9月3日、先進・新興国38カ国に住む子どもの幸福度を調査した報告書を公表しました。この調査では体の健康、精神的な幸福度、学問の3分野で順位をつけており、日本は「身体的健康」で1位であった一方、学問などの能力をはかる「スキル」は27位。そして「精神的幸福度」は37位でした。

学歴信仰家庭に多い、「過干渉」子育て

私は、日本、アメリカ、中国で学習塾を経営しています。世界中の親子を見てきましたが、日本の子どもの「精神的幸福度」が低い原因として「過干渉」が一番大きいのではないかと考えています。過干渉というのは子どもを親の思い通りに育てようと、手出し・口出し・監視して行動をコントロールする行為です。過干渉は日本だけでなく韓国や中国など「学歴信仰」が強い社会(あるいは家庭)に多く見られます。

韓国は「子どもを良い大学に入れなければならない!」というプレッシャーが桁外れに強い超学歴社会です。親の期待に答えるために青春の全てを勉強に捧げてきた子どもが大学進学と同時にやる気を失い休学や退学してしまう「燃え尽き症候群」が問題となっています。

一人っ子政策(1979-2015)が行われていた中国では「我が子を成功させなければならない!」と、一人の子どもの面倒を両親(二人)と祖父母(四人)の合計六人がみる「手をかけ過ぎる子育て」が問題視されています。過剰な期待を背負わされた子どもがストレスから精神を病んでしまうケースが増加しています。

アメリカでも大学入学の難易度の上昇に伴って「ヘリコプターペアレント/子どもの行動を四六時中監視する親」が増えています。ミネソタ大学のニコール・ペリー博士が422人の子どもを8年間にわたり追跡調査したところ、干渉が多い親に育てられた子どもほど感情のコントロールが苦手で社会性の発達が低く、学習面で苦労する傾向があることが分かっています。

メアリーワシントン大学が行った研究では、過干渉な親の下で育った子どもは自信を失いやすく、生活に不満を抱き、イライラしがちになることが分かっています。同研究は『過干渉は子どもの能力や独立心の発展を妨げるだけでなく、子供の幸福感を奪い、大人になってからプレッシャーにうまく対応する力を失わせる』と結論づけています。

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子どもは、親の所有物ではない

「自分は過干渉ではない!」と思っていても、気づかないうちに子どもの自主性や個性を潰している親が多くいます。過干渉な親に共通するのが子どもを自分の所有物のように扱うことです。親の好みの洋服を選び、親の好みの髪型にして、親の好みの靴を履かせて、親の好みの帽子をかぶせます。まるで着せ替え人形のようです。子どもの外見を親の理想通りにするのは楽しいことです。しかしもう少し子どもの好みや個性を尊重しなければ、子どもは自分の意思で行動しようという意欲を失ってしまいます。

また、子どもを心配するあまり行動に先回りし過ぎるのも過干渉です。子どもが転ばないように抱っこしてあげ、こぼさないように飲み物を飲ませてあげ、汚さないように食事を食べさせてあげ、歯磨き、洗顔、着替えなど、子どもの身の回りのこと全てに親が手を出してしまう。

もちろん幼い子どもは着替え一つ上手にできないですから親の方がイライラ・ハラハラするかもしれません。水を飲むだけでも失敗して服を濡らしてしまうかもしれません。でも手を出したい気持ちをグッとこらえて、子どもを見守ることが「自分でできた!」という成功体験を生み、自立心を育てるために必要なプロセスなのです。

子どもが少し大きくなると「言葉の過干渉」が増えてきます。「学校で何を勉強した」「宿題やった」「テスト何点だった」「誰と遊んだ」「何を食べた」「ゲームはダメ!」「マンガはダメ!」「テレビはダメ!」「ゴロゴロしないで!」と子どもの行動をチェックします。親から監視されると子どもは「自分は信頼されていない」と感じ自主的なやる気を失っていきます。

新型コロナウィルスによって子どもが家庭で過ごす時間が増えました。親子が一緒にいる時間が長くなると、子どもの行動が目に付くようになり、親の干渉が強くなりがちです。我が子どもといえども親とは異なる個性を持つ一人の人間として尊重することを忘れてはいけません。

子育ては親の側に多くの「忍耐力」と「見守る勇気」を要求します。子どもの自主性を尊重し、子どもが自分の意思でやろうとしていることは最後までやらせてあげる。手出し・口出し・先回りをせず子どもの行動を見守る。親が無理だろうと思っていることでも、子どもを信じて、子どもに任せてみると案外簡単にできてしまうものです。

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身の回りのことは子どもにやらせる

子どもの「やる気」を育てるには「やらされている」のでなく「自分の意思でやっている」という感覚を持たせることが必要です。自分の意思でやったことができた!という経験が自信になり「他のことも試してみたい」という「やる気」につながります。

まず子どもの身の回りのことは自分でやらせるようにしましょう。着替え、顔洗い、歯磨き、お風呂、食器の上げ下げ、部屋の掃除などを「自分でやってみようか?」と促してみてください。もちろん最初は上手にできませんし時間がかかります。しかし子どもを信頼してできるまで見守ってあげてください。

そして子どもができたら「すごいね!自分でできたね」とほめてあげることが大切です。多少不器用でもできたらほめてあげてください。子ども時代に「自分でできた」という成功体験が多いほど自立心旺盛でやる気満々な子どもに成長していきます。

4〜5歳以上の子どもには家事に協力してもらいます。料理、買い物、食事の準備・片付け、掃除、洗濯などを子どもにも手伝ってもらうのです。ただ、命令や指図で子どもを動かそうとしてはいけません。ささいなことでも必ず「頼むこと」から始めましょう。「○○ちゃん悪いけど、お母さんを助けてね」そして、子どもが手伝ってくれたら「ありがとう、手伝ってくれて助かったわ」とギュッと抱きしめて感謝します。これで子どもは自分の働きがお母さんに必要だ、自分は役に立つ人間だという自信を持つことができます。

勉強や習い事についても親が「勉強しなさい」「練習しなさい」と強制するのでなく「いつやるか自分で決めてね」と子どもの意思に任せるようにします。子どもは自分で決めたことについては自主的にやろうと努力します。命令するのでなく「子どもに決めさせること」がポイントです。

ゲームばかりしている子どもには「ゲームをやめなさい」と言うよりも「いつ宿題やるのか決めてママに教えてね」と伝える方が効果的です。子どもの口から「4時になったらやる」「おやつの後にやる」と言わせるように導いてください。約束したにも関わらず守らなかった場合は厳しく叱ってください。

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子どもに決めさせると、「やる気」が育つ。

子どもの「やる気」に火をつけるには、子どもに決めさせると効果的です。服、靴、カバン、文房具、本、おもちゃなど、子どもの身の回りの物はできるだけ子どもに選ばせまましょう。一緒にデパートに行って(予算を決めて)子どもに選ばせてみると、それまで気づかなかった子どもの個性が見えてきます。

子どもに決めさせるといっても学校や習い事など、学力や社会性に関わる重要事項を子どもに決めさせるのはNGです。習い事を決める時に「子どもの意思を尊重します」という親がいますが、自分の能力を十分に理解できていない子どもに「賢い選択」はできませんので注意してください。子どもに決めさせていいのは身の回りのこと。重要な決断については親子で協議して決めてください。

子どもの意思を尊重し、子どもに決定権を与えることで、子どもは自分の好き嫌い、つまり自分自身がよく分かるようになっていきます。この積み重ねがアイデンティティの土台となり、将来、自分のやりたいことを見つけ、自分らしい「幸福な人生」の実現へとつながっていくわけです。

[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

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texte:TORU FUNATSU

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