アウトドアの達人も絶賛! 『ノマドランド』が描く未来への希望。

Culture 2021.04.01

家を失っても希望を捨てず、厳しい荒野に生きること。

『ノマドランド』

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烈風に耐えた穏やかな風貌には、独立独歩の生き方を自ら決意し、舵を切ったという清々しい覚悟が……。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。

文/木村東吉(アウトドア・エッセイスト)

「砂漠の、さらに続く砂漠のはるか向こうに山々が見える」。ファーン(フランシス・マクドーマンド)は家の裏庭から、そんな広大な景色が拡がっていたと回想する。町は工場の閉鎖によって消滅し、愛する夫も家も失った。遺されたのは、亡き夫の一台の古びたヴァン。そこから彼女のヴァンライフの旅が始まる。そこで出会うのは、荒野の厳しい自然環境の中で、風雨に晒され、人生に打ちのめされ、社会から見捨てられて、なお希望を捨てない人たちだった。

実は毎年、春になると、アリゾナやニューメキシコあたりを1カ月くらい放浪している。主に国立公園を訪れ、いろいろなトレイルを歩くことが目的だ。レンタカーを借りて安モーテルを転々とし、クルマで行けないところは、大きなザックを担いで一日中歩き続け、テントで寝泊まりする。そんな旅を続けていると、国籍、年代、人種を超えて、どこか共通の匂いがする人たちと出会うことが多い。旅先で出会い、ちょっとした会話を交わしただけなのに、その後、SNSで繋がり、出会った後に、互いにどんな旅や冒険を続けているのか、情報を共有している。彼らはこの映画に登場する人々(驚くことに役者ではなく、実際にノマド〈遊牧民〉ライフを実践する人たちだ)と同じように、現代の貨幣価値に疑問を抱き、労働とその対価に真剣に向き合う人たちである。どちらかと言えば、少し一般社会からはみ出た人々なのである。

人生には「勝ち組も負け組も」ない。マルクス主義でもカジノ資本主義でもない。社会構造以前の、シンプルで人間らしい生き方と価値観がある。「See you down the road」。またどこかの荒野で会おう、旅する仲間たちよ!

文/木村東吉 アウトドア・エッセイスト

モデル業を経て、1990年代日本のオートキャンプブームの火付け役に。近著に『ロング・ロング・トレイル』(産業編集センター刊)。現在は河口湖を拠点に、アウドドア関連で幅広く活動。
『ノマドランド』
監督・脚本/クロエ・ジャオ
出演/フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーンほか
2020年、アメリカ映画 108分
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
3月26日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開
https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

新型コロナウイルス感染症の影響により、公開時期が変更となる場合があります。最新情報は各作品のHPをご確認ください。

*「フィガロジャポン」2021年5月号より抜粋

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