大人になった子どもとの衝突、どう避ける?
Culture 2021.04.13
「私!私!教育から個人主義まで」の著書がある、著名な児童精神科医ダニエル・マルセリ医師にインタビュー。コロナ禍のフランスで増えている、実家に戻って暮らす若者と両親の関係について、親は子どもの自由を尊重するようにとアドバイス。
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子どもが実家に戻ってきたら、その自由を尊重することが肝心だ。 photo : Getty Images
――コロナ禍でフランスでは多くの学生が、実家に戻り両親と住まわざるを得ない状況です。
大変難しい状況で、18歳から25歳くらいの若者にとって、社会生活は呼吸するのと同じくらい重要なこと。最も長続きする友人関係はだいたい、大学生活の最初の数年で築かれることが多いものです。それを奪われてしまうのは、精神的には相当な苦痛。私は可能な限り、彼らが友人同士4~6人でロックダウン生活を送るのを許してあげるよう勧めています。
――親と若者が衝突するのを避けるには?
まず子どもと会えてうれしくても、昔のように独占するしようとしてはいけません。むしろ、距離を取ること。毎日一緒に昼食や夕食を取るようにいわない。元気か、インターン先を見つけたか……つまり、思春期の子どものように接するのをやめることです。日常の暮らしでは、役割分担を決めるより、シンプルにこう提案するほうがいい。「自分のことは自分で。洗濯は週に一度くらい、自分でやったら?」。
――不安を抱えた子どもにどう向き合うべきでしょうか。
もはや、親は子どもの機嫌や感情を気遣う立場にはありません。友達のように接するといいでしょう。わっと泣き出す子どもに向かってが、「疲れているのね。よく眠れていないの?」という類の判断を押しつけないように。
また治療についてですが、抗うつ剤または抗不安剤の処方は、うつ病、長期に渡る不眠症、自殺願望のような症状がある重症の若者向けで、必要なケースは4~5%のみ。心療カウンセリングを受けた後の段階の話です。このコロナ禍が終息した後に、抗うつ剤依存世代が誕生しないことを祈るばかりです。
texte : Viviane Chocas (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuriko Yoshizawa