アンソニー・ホプキンス主演映画『ファーザー』監督インタビュー。

Culture 2021.04.16

監督デビュー作『ファーザー』でアカデミー賞の作品賞を含む6部門にノミネートされたフランス人監督、フロリアン・ゼレールは、受賞有力候補の一人。彼へのインタビューをお届けする。

re2-main_father.jpg

『ファーザー』に出演するオリヴィア・コールマンとアンソニー・ホプキンス。 © NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF  CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION  TRADEMARK FATHER LIMITED  F COMME FILM  CINÉ-@  ORANGE STUDIO 2020

初めての監督作品で、初めての快挙。フロリアン・ゼレールの初監督作品『ファーザー』は、自作の同名戯曲を映画化したもので、4月26日にアメリカで発表されるアカデミー賞で6部門にノミネートされている。

アンソニー・ホプキンスとオリヴィア・コールマンが出演するこの作品は、アルツハイマー病の初期症状があらわれ始めた81歳の男性と、父親に付き添おうとする娘のアンの、答えのない迷宮のような心の旅路を描いている。

チームの冒険

「今回のノミネートに、喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。今年予定していた映画の公開が(*パンデミックの状況下のフランスで)一時的に中断されているにもかかわらず、見た人たちがこの作品を熱烈に歓迎してくれるのは、すばらしい贈り物です。

最もうれしいのは作品賞へのノミネート。『ファーザー』はチームの冒険であり、この部門は、作品に携わったすべての人を包括する。映画そのものを映画として賞賛する点で、監督である私にとって特に心に響くものです。

ノミネートが発表されたとき、もちろんアンソニー・ホプキンスやオリヴィア・コールマンに電話しました。なぜなら、映画を作るということは、感情的で人間的な部分を共有することでもあるからです。逆説的ですが、物理的な隔たりがあるこの時期に、私たちはとても親しくなり、バーチャルでたくさん話をしました。この映画の制作は、感情のかなり強い領域に踏みんだものであり、これまでにない方法でお互いにつながったと感じています」

 

『ファーザー』公式トレーラー

---fadeinpager---

アンソニー・ホプキンスとの朝食

「アンソニーは非常に穏やかで、とても優しく接してくれて、たくさんの感情を共有してくれます。彼はとても喜んでいると思います。というのも、83歳にして非常に勇敢なことを成し遂げたのですから。私が頼んだのは、新しい感情の領域に踏み込み、自分自身の死に対する感情と結びつく、現実的な意味での危険に身をさらすことでした。このプロジェクトに対する彼の勇気、大胆さ、そして寛大さに感銘を受けました。

オリヴィア・コールマンについては、私は彼女を意識して脚本を書いたわけではありません。でも、ずっと大好きな女優です。彼女の公演を観に、ロンドンに行ったこともあります。彼女のエモーショナルインテリジェンスの高さにはいつも感心させられ、彼女が『ファーザー』の娘役に最適であると直感的に感じました。しかし、彼女を説得するのは難しいことではありませんでした。なぜなら、アンソニー・ホプキンスはイギリスの伝説的な存在であり、彼の娘を演じるのであれば、どんな脚本でもイエスと言ったでしょうから!」

re-sub2_father.jpg

© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF  CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION  TRADEMARK FATHER LIMITED  F COMME FILM  CINÉ-@  ORANGE STUDIO 2020

「『ファーザー』の製作を夢見始めたとき、ずっと思い浮かべていた顔はアンソニー・ホプキンスでした。私にとって彼は現世で最高の俳優であり、彼と一緒に仕事をしたいという、ある種の強迫観念、願望、非常に強い期待を抱いていました。私はとんでもない夢をみていたのです。アンソニーはフランス語ができなかったので、英語で脚本を書かなければならなかった。これには非常に苦労しました。このプロジェクトが少々非現実的であることは自覚していましたが、不可能であると証明されない限り、そしてアンソニー・ホプキンスが私のオファーを断らない限り、頑張らない理由はないと自分に言い聞かせていました」

---fadeinpager---

狂気の挑戦

『この映画の原作である私の戯曲『Le Père』は、広く世界で上演され、ブロードウェイでは演劇界のアカデミー賞に相当するトニー賞を受賞しました。おかげで、『Le Père』をはじめ、私のすべての作品を英訳してくれたクリストファー・ハンプトンと一緒に仕事ができるようになった。

この映画の脚本をアンソニー・ホプキンスのエージェントに送ったときは、海にボトルメールを投げ込むような気持ちでした。大きな希望を持って、でも返事は返ってこないかもしれない、という気持ちで。

2ヵ月後、知らない番号から電話がかかってきた。それは私の脚本を読んだアンソニーのエージェントからで、アンソニーが私に会いたいと言ってきたのです。私は彼と朝食をとるためにロサンゼルスに飛びました。彼は、私が何者なのか、この映画に対する私のビジョンは何なのか、を知りたがっていました。そして、彼にとって、この映画を作るためにヨーロッパに戻る価値があるかどうかを。彼はとても寛大で情熱的で、たくさんの質問をしてくれて、最後には立ち上がって私を抱きしめ、『映画を作ろう』と言ってくれた。

re-sub4_father.jpg

© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF  CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION  TRADEMARK FATHER LIMITED  F COMME FILM  CINÉ-@  ORANGE STUDIO 2020

この上なく幸せな気持ちで、ほっとしましたが、それは最初の一歩に過ぎませんでした。結局、最も苦労したのは、イギリスのマーケットでこの自主映画の資金を調達することだった。イギリスではサポートがなく、フランスよりもはるかに資金の調達が困難でした。私たちは長い道のりを長い年月をかけて歩まなければならず、その間何度も「この映画は実現しない」と言われてきたのです」

---fadeinpager---

授賞式

「アカデミー賞に参加したことはありません。私にとってそれは神話の世界。少し遠い存在で、私が夢見るものではありません。それ以上に私を突き動かしているのは、俳優への情熱であり、それが長年にわたって私を演劇に導いてきたのです。私は俳優が大好きです。私にとっての最高の褒賞は、英国最高の女優であるオリヴィア・コールマンや、真の伝説であるアンソニー・ホプキンスと強烈な瞬間を共有する機会を得ることです。

最後に聞いた話では、アカデミー賞もセザールのようにノミネートされた人たちが参加する物理的なセレモニーを行うということで、私も喜んで参加したいと思っていますが、このパンデミック下で状況は変わるかもしれません。だから、まだスピーチを考え始めたわけではありませんが、すでに喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。

この強烈で楽しい冒険を通して、もっと映画を撮りたいという深い思いを感じています。もちろん、舞台は続けています。演劇は最もシンプルで美しい芸術のひとつだと信じていますから」

『ファーザー』
●監督/フロリアン・ゼレール
●脚本/クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール
●出演/アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル、オリヴィア・ウィリアムズ
●2020年、イギリス・フランス
●97分
●配給:ショウゲート
●5月14日(金)より TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー
https://thefather.jp

texte : Marion Géliot (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Recommended

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories