新緑の季節に聞きたい、カラフルな楽曲群。
Culture 2021.04.19
フェスでも話題の2人組による、ポップな問題作。
『スケッチー』/チューン・ヤーズ
ビート ¥2,420
快楽か、それとも批評か。そんな複雑な思いが駆け巡る、米国オークランド拠点のデュオの5作目のアルバム。メリル・ガーバスとネイト・ブレナーのふたりは、3年前のフジロックで来日してオーディエンスを熱狂させたが、本作もライブに通じるテンションの高さを感じさせる。そのいっぽうで、現代社会のさまざまな問題を反映した辛辣な言葉がちりばめられ、自己批判とも捉えられるような歌詞の楽曲も。成功とは裏腹に、自分たちが望まない方向に進んでいるかもしれないという危機感もそこにはあるのだろう。
しかし実際に耳に入ってくるのは、チープなようでいてレイヤーを重ねた、凝った楽曲群。まるでクイーンのような重層的なコーラスもあれば、パンクを感じさせる攻撃的なビートもある。彼らのメッセージを感じつつ、ポップなサウンドに酔えばいいのだ。
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レトロフューチャーな音が色彩感豊かに躍動!
『音迷宮』/ヤンコ・ニロヴィッチ・アンド・ザ・ソウル・サーファーズ
プロダクション・デシネ ¥2,640
ヤンコ・ニロヴィッチ・アンド・ザ・ソウル・サーファーズ1970年代にライブラリーミュージックといわれる匿名性の高いBGMを量産していたトルコ出身フランス在住の作曲家が、驚愕の新作を発表。まるで映画を観ているかのような感覚で、ディスコ全盛期を彷彿とさせるキラキラとしたグルーブに、身も心も揺さぶられること必至。時空を超越したカラフルでおしゃれなダンスビートは、タイトル通りまさに音の迷宮だ。
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各界から注目を集める、稀代のエンターテイナー。
『ウィー・アー』/ジョン・バティステ
ユニバーサル ¥2,860
ジョン・バティステ映画『ソウルフル・ワールド』に起用されて話題を呼びながら、ブラック・ライブス・マターの活動家としても評価を高めたマルチな才能。ジャズをベースにし、オールドスタイルのファンクやいまっぽいヒップホップまで自由にジャンルを横断するセンスが抜群。それでいて、キャッチーかつ親しみやすい歌モノに昇華している。間違いなく今年いちばんの期待株。
*「フィガロジャポン」2021年5月号より抜粋
réalisation : HITOSHI KURIMOTO