身延山久遠寺が祈りに包まれた、小松美羽のライブペインティング。

Culture 2021.04.21

4月17日、雨雲に覆われた身延山久遠寺(みのぶさん くおんじ)にて、気鋭の現代美術アーティスト、小松美羽(こまつ みわ)による、世界平和・コロナ終息を願う、奉納ライブペインティングが開催され、YouTubeでライブ配信された。

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イベントの様子。前日からこの日の朝まで大雨だったが、ライブペイントの始まりが近づくと雨が弱まり、スタート時には雨が止んだ。そして最後、作品に目を入れて完了するとまた雨が降り出したのだ。

このイベントは、日蓮宗宗務院の日蓮聖人降誕800年慶讃記念事業として行われたもの。日本仏教三大霊山のひとつである山梨県の身延山。そこに座する久遠寺は、鎌倉時代より750年余りの歴史を紡ぐ日蓮宗の総本山だ。
イベント当日の午前10時、30名の僧侶に続き、白装束に身を包んだ小松美羽が会場に入場。キャンバスは直径180cmもある三連の円形金箔と銀箔。「(3枚の円形のキャンバスは)夜から始まり・朝・昼とつながっていく様を表現しました。そして円の形は身延山が長い歴史の中で紡いできた縁であり、今であり、これからの未来を現しています」

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作品を創りあげているときの小松は、無心で、いっさいの迷いを感じさせない。

ライブペインティングが始まると、僧侶により、コロナ禍における人々の健勝や多幸を祈る「妙法蓮華経如来寿量品第十六」が唱えられる中、舞台前にずらりと置かれたチューブ入りの大きな絵の具を、小松は次から次へと手に取り、手につけた色をキャンバスに投げつけたり、筆でのばしたり、指で直に塗りつけたりとダイナミックで力強く、いっさいの迷いを見せずに、3枚のキャンバスの間を行き来しながら描いていく。
約60分にもわたるライブペインティングの終盤、キャンバスに現れたのは、小松の作品において多く登場する龍。
「すべての絵は瞑想。ライブペイントは、その土地のエネルギーに同化するもの。人々の魂に訴えかけるために…自分を無にする。絵が魂の薬になる」と、小松はライブペインティング前のインタビューで語っていた。前日の4月16日には、久遠寺の参道に並ぶお店や仏具品を制作する工房を訪ね、地元の方々や身延山学園の学生との対話や、参拝を通じて、さまざまなインスピレーションを受けたという。
イベント後のインタビューでは、何年も前から参拝してきた身延山久遠寺から感じてきた山の恩恵、命あるものたちの輪廻など、彼女自身の中に「降りてきたもの」を表現したと語っていたのが印象的だった。
「読経の中で描くのは初めての経験でした。音圧がすごくて。2年前のイタリア(で行ったライブペインティング)と同じ感覚を受けました。自分の魂の在りどころを感じたのです」

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龍神伝説がある身延山。久遠寺本堂の天井にも一面に大きな龍の絵が描かれている

今回描かれた作品『祈りは天へ  水龍は蓮の華と舞い 身延の山に祝福を』は、身延山久遠寺に奉納。今後、この作品を一般公開していく予定とのことなので、コロナ禍が落ち着いたら、ぜひお参りとともに、彼女の力作を観賞しに出かけたい。

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完成とともに祈りを捧げる小松。龍神伝説のある身延山にふさわしく、キャンバスに描かれたのも龍。「ライブペイント当日の湿った空気、雨の気配。それらに呼応するように両サイドのキャンバスには、二重螺旋を描きながら力を増して踊る龍脈が描かれています。さらに、久遠寺の境内に響き渡る読経の唄に祝福をもたらすように、池に住まう龍はずずっと姿を現し、一体を守護されました。蓮の花は咲き、天へと繋がる祈る心と合掌が、集うすべての人々の霊性を突き動かしていきました」

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小松美羽(こまつ・みわ):1984年長野県生まれ。女子美術大学短期大学部在学中に銅版画の制作を開始。近年ではアクリル画、有田焼などに制作領域を拡大し、パフォーマンス性に秀でた力強い表現力で神獣をテーマとした作品を発表。2015年、ロンドンで開催されたチェルシー・フラワー・ショーへ有田焼の作品を出品し、受賞作が大英博物館へ収蔵されるという快挙を成し遂げる。その後は、台湾、香港、日本での個展の大成功、HTCのコラボによるVR作品『INORI~祈祷~』が第76回ヴェネツィア国際映画祭VR部門、イギリスのレインダンス映画祭にノミネートされるなど、国内外で大きな注目を集めている。http://miwa-komatsu.jp/

texte : NATSUKO KADOKURA

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