ビジネスマナーや定型文は、何のために必要なのか?

Culture 2021.04.24

仕事において重要なビジネスマナーや慣例。時に煩わしくも感じるこれらは、なぜ必要なのか?『働く女子の人間関係術 社会人として人に接する42の常識』(福島哲史著 CCCメディアハウス刊)より、アドバイスを抜粋、再編してお届けする。

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写真はイメージ。photo:metamorworks

文/福島哲史

仕事なので、ときには人間の心理の弱みを突くことだってありますが、無用に人を傷つけたり、誹謗したりすることは慎むべきです。そのために、いろんなクッション(緩和剤)が仕事には用意されています。

慣用もそのひとつで、双方が抱くさまざまな考えをすり合わせるために、ひとつの型を踏まえての規範を示すことで、無用な摩擦を避けるようにします。仕事は人間関係のひとつですが、結局は組織と組織とのつき合いであるため、私情に流されてはいけません。私情だけでは信頼も信用も築けません。そのために形式を大いに利用するべきです。挨拶、言葉づかい、電話、応対、応接、接待、ビジネス文書、契約書など、それぞれにある型を踏まえた上で、気持ちを伝えるようにしましょう。

外部との摩擦には、慣用はクッションになりますが、会社内にも、気が合う人がいれば苦手な人もいますよね。見栄っぱり、強情、自分勝手、いい加減……。人間関係によって起こる摩擦の種は、避けようがありません。

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しかし、だから面白いと思いませんか。あなただって、誰かから見れば、嫌な人になっているかもしれないけれど、自分にとって理解しがたい人だからこそ多くのことが学べるのです。

つまり、会社の善し悪しの鍵は人間関係が握っているのです。それが良好なときは会社も楽しいですが、そうでなければつらいものです。しかもプライベートと違って、会社では一緒にいる相手を選べないから困るのです。嫌な人と毎日机を並べていなくてはなりません。たとえば、この先ひとりの嫌な上司の下に何年も仕え、あるいはどうしようもない部下を何人も抱える……。まさに呪われた人生を会社で送るかもしれません。しかし、それは気持ちのもちようです。そこまで人と深く接することで、学べたことも多く、それが役立つこともあるに違いありません。

日々、必要以上に人とかかわりをもたずに過ごし、何も起こらないことをよしとする人が近頃多くなってきましたが、なんの問題もないのは、かえって不気味なことです。

みんなが会社や仕事を自分の人生と切り離し、単に生活の糧として給与だけを目当てに来るようになると、些細なことで足を引っぱり合ったり、陰険ないじわる、いじめが陰に潜って起こるようになります。自分が幸せじゃないから、人の不幸を望んでしまうのです。近頃いじめが社会問題化しているのも、そういう目的意識の低下に理由があるのではないでしょうか。幸せに生きたいのなら、日々、目標をもって学ばなくてはなりません。

つねに会社は動いています。ひとりが辞めるだけでもさまざまなことが変わります。人は何も変わらないことで精神上の安定を求めようとする傾向にあるために、何かが起こると、そのたびに不安になります。だから、歳とともにことなかれ主義に陥るのです。これは人間としての成熟ではなく、人生の放棄です。

人間関係はいつもいろいろなことが起こりますが、よりよく変えていく関係作りを、毎度模索する努力を怠ってはいけません。何が起ころうと人との関係は自分のカでどうにでも変えられるという自信からしか、心の安定はこないのですから。

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仕事にあいまいさはいりません

世の中はすべて、表と裏、本音と建前などの二面性があります。正解が見分けにくいからこそ、一本の筋道を通していくという作業が必要となります。それが法律であり、社会のルールであり、社会の縮図たる会社であり、仕事なのです。どんなに嘘と欺瞞に満ちたところでも、誠実さや真心は必ずあります。

ひとつの仕事で白黒の判断をつけていくのは、その場の担当者です。その判断や、行動によって結果はまったく違ってきます。いつもひとりの人間の能力が大きく試されますので、仕事では、いい加減な気分やあいまいさは許されません。

たとえば、多くの報告や意見書などでも「それはどうしてなのか」「本当なのか」という問いを重ねることで、大部分のミスは前もって防げます。上司などに報告する際には、一旦、落ちついて、自問するといいです。

そして、部下などからの報告に対しては「それは何が根拠でそう言うのか」「そのことは誰から聞いたか、誰が(いつ、どこで)どう言っていたのか」と問い返すといいです。いつ、どこで、誰が何をしたかという事実関係を正確にしなくては、正しい判断はできないからです。

「最近、苦情が多いようです」「なんか、みんながやる気をなくしているみたいです」「あそこは信用しないほうがいいらしいです」などの抽象的な話をしてはいけません。それは本当はどういうことなのかを、具体的に問い正していかなければ仕事上の判断基準を満たしていないからです。

人は、物事の一面や、たったひとつのことに目が行きやすく、気分や感情などに左右されて、事実を見る眼が曇りやすくなります。私情で事実を曲げたにもかかわらず、そのことに自ら気づかないことが多いのです。もし気づいたとしても、意固地に開き直ってしまい、正そうとしないものです。

清濁を飲み込んで、人間の社会を支えているのが仕事です。いろんな判断がなされ、その基準が大きく動くとはいっても、結局は利益追及という土俵で行なわれています。個人の私情が入り込むすき間はありませんから、事実以外の判断基準は、振り落とされていきます。

むしろ利害関係のないつき合いのほうが、人間関係はよほど難しいのですが、仕事でつけた判断力は、そういった日常レベルで起こるさまざまなことにも応用できるようになるのです。

 

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『働く女子の人間関係術 社会人として人に接する42の常識』

福島哲史 著

CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます。)

 

texte:TETSUSHI FUKUSHIMA

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