Manga meets CHANEL 4 ガブリエル・シャネルの軌跡と日本が舞台のマンガが、見事に融合。

Culture 2021.05.06

銀座のシャネル・ネクサス・ホールで現在開催中の『MIROIRS - Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか』展。最終回となる第4回では、見どころに加え、実際に展覧会を訪れた、白井カイウと出水ぽすかの感想をご紹介。

210506-chanel-05.png©︎CHANEL

入場し、まず目に入るのは、原作者・白井カイウと作画者・出水ぽすかがこの展覧会のタイトルにもなっている「MIROIRS」(フランス語で”鏡”の意)に込めた想い。

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《序章~ミロワール(鏡)に映し出されれる東京》

連載第1回目でも紹介したとおり、本展のテーマとなるのは”鏡”。展覧会の序章となる鏡のコリドーでは、東京の夜景の映像と、ガブリエル・シャネルのパーソナリティの多面性を投影する、3つの章の主人公たちのイラストのインスタレーションが来場者を迎える。本展と絡めて30日に発売となったマンガ作品『miroirs(ミロワール)』を読んで予習してきた人ならすぐにピンとくるだろう。
鏡の奥には、サイズやデザインもさまざまな額縁が、壁にびっしりと飾られている様子が映し出され、これから目にする展示への期待が高まる。

210506-chanel-02.png©︎CHANEL

とくに赤い壁の部分は、ガブリエル・シャネルのパリのアパルトマンそのものを連想させる。壁が3色に分けられているのは、会場構成が、漫画『Miroirs』の3つの章に基づいているから。

白井カイウ:「まず会場に入ったところにある鏡の装飾が素敵でした。そして会場内にある3つの章の入り口となっている、額縁が掛かっている壁がとても格好いいのです。ガブリエルさんのアパルトマンをVRや写真で拝見していたのですが、そのガブリエルさんのアパルトマンの雰囲気がすごくあります。アパルトマンを思わせるイメージの額縁がたくさん飾られていて、まず額縁だけでも心躍ります。その額縁に、ガブリエルさんの言葉や写真など、いろいろなアイテムが収められていて、その選り抜きがまた絶妙です」

出水ぽすか:「すごくびっくりしました。まず鏡の装飾から展示スペースに入る演出が、宇宙的というか神秘的で引き込まれます。入り口の額縁は、私も感動しました。第1章に登場したお城の中がこんな感じだったらいいなあ、なんて。すごく夢がある感じです。そこにいつまでも居たくなるような感じがよかったです」

210506-chanel-01.png©︎CHANEL

額縁のひとつひとつをじっくりと眺めてから、さらに展示内部へ。ここは第2章の入り口。

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《第1章 Sorcières  ー魔女ー》

~本や空想の世界が大好きな少女の物語
パリ・カンボン通り31番地、鏡張りの階段を上ったその先にあるガブリエル・シャネルのアパルトマンには、彼女が集めたさまざまな国や文化の調度品や書籍が所狭しと並んでいる。この特別な場所は、彼女のクリエイション源のひとつだった。空想の世界に遊ぶマンガの主人公である少女の姿は、決して恵まれていたとは言えなかった幼少期に、多くの書物に導かれて想像力を育み、大人になってからも見えないものに対して神秘的な探究を行なっていたガブリエルの姿とどこか重なる。

ファブリックを用いた幻想的なインスタレーションの空間で、フランク・ホーバットやカール・ラガーフェルドらによる伝説的な鏡張りの螺旋階段の写真や、風刺画家セムがいまから100年前にシャネル N° 5の誕生を記念し、そのモダニティにトリビュートを捧げたリトグラフなどが展示されている。

210506-chanel-04.png©︎CHANEL

パリにあるガブリエル シャネルのアパルトマンの風景からも、彼女がかなりの読書家だったことがわかる。また、それと対をなすように、マンガ『Miroirs』の第1章で、主人公の女の子が「ここがあなたの舞台」と、ある登場人物に言われる東京の夜景が大きく描かれている。

出水ぽすか:「私が驚いたのは、作品のカラー部分の発色の鮮やかさでした。一瞬ディスプレイなのかと思うくらい。印刷方法と光の加減、会場の照明の当て方なのでしょうか。どうして、あんなに鮮やかに見えるのかわからないところもあるのですが、まわりとのコントラストのつけ方ですとか、作品が浮き出しているように見えるプリントがすごく印象的でした」

210506-chanel-no01.png©︎白井カイウ・出水ぽすか/集英社

第1章は、「想像の中でなら私以外の誰かになれる」と、本や空想の世界が大好きな女の子が主人公。そんな彼女に人生で大切なことを教えてくれる”魔女”の正体とは……?

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《第2章 Menteuse  ー嘘つきー》

~自由気ままに過ごしながらも、本当の自分への葛藤を抱える女性の物語
”女性そのものを感じさせる、女性のための香り”を生み出したいというガブリエル・シャネルの想いから誕生した名香「シャネル N°5」。原作者・白井カイウはこの作品の中で、シャネル N°5を型にはまらない主人公の謎めいた人物像・深層心理の象徴として、また彼女が自分という人間を形づける香りとして描いたと語る。

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©︎白井カイウ・出水ぽすか/集英社
メイクもファッションも自由に変えて、男性たちとは気軽なおつきあいを楽しむ主人公。ガブリエル・シャネルが男性のように乗馬を楽しんだというメタファーを、バイクに投影して。

ガブリエルが女性たちにもたらした自由を享受し、現代の東京で人生を謳歌する主人公の姿を描いたイラストが大胆にあしらわれた空間に、シャネル N°5にまつわる貴重な資料や、ジャン・ドゥ・ゲヌロンによるガブリエル・シャネルの肖像画などが展示されている。

210506-chanel-03.png©︎CHANEL

ガブリエル・シャネルがそうだったように、第2章は、多面的な魅力を放つ女性が主人公。マンガの内容に合わせて、壁には下書きが描かれている。

出水ぽすか:「展示されているマンガにリンクして、壁に下書きがあしらわれています。下書き自体にも、色を変えたり、反転させたり、いろいろな演出がされているので、ぜひ完成稿と合わせて楽しんでいただけたらと思います」

210506-chanel-no02-2.png©︎白井カイウ・出水ぽすか/集英社

「自由でいたい」「自分らしくいたい」と願う主人公の真の姿を見抜いたのは……。

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《第3章 Corneille noir  ーカラスー》

~ステレオタイプな価値観のなかで息苦しさを抱える少年の物語
マンガの作画者・出水ぽすかが初期の構想イラストとして描いた「少年とリップスティック」から着想を得て、原作者・白井カイウが生み出した少年たちが主人公。彼らに向けてのエールであるかのような「かけがえのない存在であるためには、人と違っていなくてはならない」というガブリエル・シャネルの言葉が、時代を超えて私たちの心に響く。

自らの道を切り開こうとする少年たちの姿とともに、シャネルの反骨精神やパラドックスが表現された空間で、1950年代当時のリップスティックやその広告ビジュアル、ガブリエル・シャネルの手書きメッセージが添えられたジャン・モラルによるガブリエル・シャネルの肖像写真などを展示。

210506-chanel-06.png©︎CHANEL

息苦しい世界をブチ壊し、塗り替えようと少年たちは思い切った行動に出る。そのクライマックスシーンが大きなパネルで展示されている。

白井カイウ:「それぞれの章の展示も、作品がきれいな発色の大きなパネルになって展示されていますので、マンガのサイズで見るのとは違う世界を、そこで見ていただけます。また、その展示スペース内にちりばめられているガブリエルさんに関する資料なども、レアで素敵なものがいっぱいあります。漫画を深く読み込んでいただくうえでも、シャネルの世界を知っていただくうえでも、ものすごく素敵な展示になっていて、本当に心躍りました」

210506-chanel-no03.png©︎白井カイウ・出水ぽすか/集英社

閉塞感を自分たちならではの方法で打破しようとする主人公の前向きな姿に、励まされる人も多いはず。

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これから来場する人へ、白井カイウと出水ぽすかによる、そのほかの見どころは……。

白井カイウ:「入ってすぐの鏡の装飾、額縁の壁、それぞれの章のお部屋、全部見ていただきたいです。本当に素晴らしい展示にしていただきました。マンガを読んで何か感じていただけたら、それはうれしいですが、さらにマンガにプラスして展覧会で奥行きが生まれています。ガブリエルさんについて、シャネルというブランドについて、どういうふうに私が考えたのか、どこから着想を得たのかということが、展示に表現されています。作品にぴったり合うガブリエルさんの言葉などが展示されていたり。そういう細かいところから、フランスから取り寄せられた貴重な資料、たとえば昔の『VOGUE』ですとか、古い年代のリップスティックですとか、そういう素敵なものもいっぱい展示されているので、見ていただきたいです。あとは会場内に出水先生が絵を描かれたのですが、あれは、壁に、垂直に、出水先生が一発描きされたのです。描いたものが貼られているわけではありません。これは本当にすごいので、ぜひご覧ください」

出水ぽすか:「会場内の壁に直接絵を描いたので、ぜひ見ていただきたいです。たくさんの方が見守るなか、緊張しながら描きました」

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©︎CHANEL
『miroirs』原作・白井カイウ 作画・出水ぽすか 集英社刊 ¥977

原作/白井カイウ
『約束のネバーランド』原作担当。2015年「少年ジャンプ+」(集英社)掲載の読み切り『アシュリー=ゲー トの行方』で原作者としてデビュー。2016年「少年ジャンプ+」読み切り『ポピィの願い』にて作画・出水氏と初のコンビ作品を発表。2作とも大きな反響を得て、同年8月から『約束のネバーランド』を「週刊少年ジャ ンプ」にて連載。

作画/出水ぽすか
『約束のネバーランド』作画担当。イラストコミュニケーションSNS「pixiv」の人気イラストレーターであり、装丁など多方面で活躍。コロコロコミック『魔王だゼッ!!オレカバトル』連載など、漫画家としても活動。2016年「少年ジャンプ+」に読み切り『ポピィの願い』が掲載されジャンプデビュー、同年8月から『約束のネバーランド』 を「週刊少年ジャンプ」にて連載。
『MIROIRS - Manga meets CHANEL Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか』
期間:~6/6(日)
会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
tel : 03-3779-4001(シャネル・ネクサス・ホール事務局)
開)11時~19時30分
入場無料
無休
※要予約。詳細は下記ウェブサイトにて。
https://chanelnexushall.jp/program/2021/manga

texte : NATSUKO KADOKURA

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