東京五輪の出場を禁止された選手の支援動画が公開。

Culture 2021.05.08

ナイキに続いて、ケア製品ブランドのラックスが南アフリカのアスリート、キャスター・セメンヤを支援するキャンペーンを開始した。800mでオリンピック2連覇を達成しているセメンヤは、男性ホルモンが過剰に分泌される体質が原因で、2021年開催の東京オリンピックへの出場を禁止され、ストラスブールの欧州人権裁判所に提訴している。

 

「キャスターが女性であると考えるのは難しいと言わざるを得ない」「彼女に女性的な部分は皆無」「女性ではない。彼女は実際のところ、“彼”だ」......ラックスが配信する動画広告 #IStandWithCaster(私はキャスターの味方)の冒頭に飛び交う、いくつもの性差別的発言。

国際女性デーを記念したナイキのキャンペーンにも起用された南アフリカのアスリートが、今回はアニメの主人公となって動画に登場する。東京オリンピック女子800mへの参加を求めて闘うセメンヤの支援を目的としたスポット広告だ。

男性と疑われて

2009年のベルリン国際陸上選手権で初の金メダルを獲得して以来、キャスター・セメンヤは論争の渦中にある。男性か両性偶有ではないかと疑いをかけられ、当時18歳のスプリンターは性別確認検査を余儀なくされた。

検査の結果、生まれつきテストステロンの血中濃度が高い、高アンドロゲン血症と診断された。しかしこれでスプリンターの名誉が回復したわけではなかった。国際陸上競技連盟(IAAF、 現国際競技連盟)は、この先天的なホルモン異常がスポーツパフォーマンスにおいて有利に働くという見解をとったのだ。

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世界選手権とオリンピックに出場禁止

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2017年にロンドンで開催された世界選手権の800mで金メダルを獲得したキャスター・セメンヤ。photo:Giuliano Bevilacqua / Abacapress

2018年に「競技会の自由と公正を守る」ためとして、IAAF上層部は「DSD」規定を設けることを決定した。この規定は性分化疾患の選手を対象とするもので、高アンドロゲン血症のアスリートには競技会への出場資格として、テストステロン値の抑制を義務付けている。

この新規定によって、セメンヤは陸上選手としてのキャリアにブレーキを掛けられてしまう。2つ目の金メダルを賭けた2019年世界陸上選手権、そして2021年夏の東京オリンピックへの出場も禁止されている。800mでオリンピック2連覇を達成している彼女は、ホルモン治療を拒否し、IAAFを相手に10年にわたって徹底抗戦を続けている。

“実験室のネズミのように利用された”

「IAAFはかつて私のことを実験室のネズミのように利用しました。私に治療を受けさせたのは、どの程度テストステロン値を下げる効果があるか調べるためだった」とセメンヤは2019年に発表した声明で述べている。「IAAFが私自身と私の身体を再び利用することは許しません」。2019年世界陸上の出場権を失うことになると知りながら、彼女はそう決意を表明した。

現在30歳の彼女は最近、差別により損害を被ったとして欧州人権裁判所に提訴した南アフリカ議会もアフリカ人権委員会をはじめとする諸機関とともに、IAAFの態度は「人権侵害にあたり、不当」だとして、彼女の闘いに協力する意向を示している。

“私だけにかかわる闘いではない”

「ラックスのように、勇気を持って正しいことを支持する立場を取るブランドが現れて、とても嬉しい」。ラックスが傘下に入っているユニリーバ・グループのウェブサイトでキャスターはそう声明を発表した

「私の経験はたったひとつのケースにすぎません。世界中の女性たちに向けて声を上げている人、共感を求めている人がたくさんいます。私は仲間とともにこの先も闘いを続けます。これまでずっと言ってきたように、これは私だけにかかわる闘いではありません。未来にかかわる闘いです。才能ある未来のアスリートたちが同じような差別に直面するかもしれません。自分にできることはやったと正直に言えるよう努めていくつもりです」

texte : Stéphanie O’Brien

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