エスパス ルイ・ヴィトン大阪、ジョアン・ミッチェルの作品を2点追加し、リニューアル。
Culture 2021.05.10
今年2月に誕生したエスパス ルイ・ヴィトン大阪にて、7月4日まで開催中の『Fragments of a landscape(ある風景の断片)』展。5月1日から、ジョアン・ミッチェルによる絵画作品が新たに2点加わり、より見応えのある展示となってリニューアルオープン。
『Fragments of a landscape』エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
カール・アンドレ
『Draco』 1979-2008年
ウェスタンレッドシダー(ベイスギ)材 23個のパーツの連なり(各30×91×30cm)/ Courtesy of the artist and Foundation Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル
『Untitled』 1979年 油彩、キャンバス(三連画) 194.9×389.9cm
『Minnesota』 1980年 油彩、キャンバス(四連画) 260.4×621.7cm
『South』 1989年 油彩、キャンバス(二連画)260.1×400.1cm
Courtesy of Foundation Louis Vuitton
©︎ Keizo Kioku / Louis Vuitton
第二次世界大戦後の抽象表現主義の旗手となったジョアン・ミッチェルは、シカゴ美術館付属美術大学で学び、1948年に渡仏、1949年までパリに滞在した。拠点のニューヨークに戻ると、芸術家の集いの場「ザ・クラブ」(「8th ストリート・クラブ」とも呼ばれる)の活動に参加。1953年にステイルブル・ギャラリーで個展を開催し、高く評価された以降は、ニューヨークとパリを行き来する生活を送り、フランスでは北米出身のアーティストたちと親交を深めた。
1969年、クロード・モネが住んでいたことで知られるヴェトゥイユに居を構えると、豊かな色彩によって光に寄せる想いを表現し始め、その作風は彩られた表面の細分化という特徴を帯び、ミチェルは「抽象的印象派」とみなされるように。1972年以降は大型作品に取り組むようになり、異彩を放つ作品の構造は、彼女特有の官能的な色使いが存分に発揮されることを可能にした。1980年代初頭、才能の絶頂期を迎えたミッチェルは、すでに展示中の『Untitled』(1979年)や『Cypress』(1980年)に表れているように、明らかに風景画に回帰したのが見てとれる。
今回、新たに追加されたミッチェルの作品は、『Minnesota』(1980年)と『South』(1989年)。
作品のタイトル『Minnesota』と、4枚のパネルにわたる横長で巨大なフォーマットは、ミッチェルの出自、アメリカに寄せる想いの表れ。この明るく輝く音楽的な絵画は、黄色と青の大きなストロークを特徴とし、ヴェトゥイユにあるミッチェルの庭の色彩を反映している。ミッチェルの晩年の作品のひとつ『Minnesota』は、炸裂する色彩が、最終的には洗練されたアンサンブルを織り成し、ミッチェルの作品の成熟度を物語っている。
『MINNESOTA』
ジョアン・ミッチェル
1980年
油彩、キャンバス(四連画) 260.4×621.7cm
Courtesy of Foundation Louis Vuitton
エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)。
©︎ Keizo Kioku / Louis Vuitton
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そしてもう1点の追加作品『South』からは、季節の移り変わりを祝うように織り交ざる筆致をとおして、あふれる豊かさが伝わってくる。そうしたテーマはモネのお気に入りであり、類似する傾向からミッチェルは「抽象的印象派」と呼ばれるようになった。『South』のロマンティックな特質は、彼女が作品を敬愛してやまなかった画家アンリ・マティスの切り紙絵も彷彿させる。
『SOUTH』
ジョアン・ミッチェル
1989年
油彩、キャンバス(二連画) 260.1×400.1cm
Courtesy of Foundation Louis Vuitton
エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)。
©︎ Keizo Kioku / Louis Vuitton
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『Fragments of a landscape(ある風景の断片)』展は、ジョアン・ミッチェルのほか、1970年代初めにミニマル・アート運動を牽引した彫刻家カール・アンドレの作品も展示。建設関係者が多い環境で生まれ育ったアンドレは、基礎的な素材を好んで扱い、それは前の世代が目指していた抽象表現主義への反応の表れと言えるもの。彼は、アメリカの画家フランス・ステラの影響を受け、独自のスタイルを確立。すなわち、素材そのものへの愛着、厳格な制作姿勢、象徴性の拒絶だ。今回展示中の《Draco》(1979-2008年)は、ウェスタンレッドシダー(ベイスギ)の材木を組み立てた作品で、あえて展示室の中央に設置されることで来場者の動きを妨げ、展示空間の構造を強調する。
『DRACO』
カール・アンドレ
1979-2008年
ウェスタンレッドシダー(ベイスギ)材
23個のパーツの連なり(各30×91×30cm)
Courtesy of the artist and Foundation Louis Vuitton
©︎Adagp, Paris 2021
エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
©︎ Keizo Kioku / Louis Vuitton
アメリカを代表するふたりのアーティストを並べて紹介することで、一見したところ背反するふたつの芸術潮流――激烈な色使いによる自由な表現と、あるがままの素材で見せる幾何学的厳密さの奥深さが照らし出される。ふたりの共通点は、根本に迫るアプローチ。これこそが作品の周囲に、そして作品と空間との間に緊張を生み出しているのだ。個々の作品とともに、展示空間全体から受ける感覚もぜひ味わってみてほしい。
大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
開)12時~20時
休)ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準ずる
入場無料
予約不要
*現在、緊急事態宣言の影響により、開館時間を11時〜19時に変更。
texte : NATSUKO KADOKURA