9時以前と19時半以降、"つながらない権利"をどう守る?

Culture 2021.05.13

21時過ぎや土曜日、携帯が鳴る理由はいつも「急な案件」。ここ1年は特に、携帯電話は仕事で不意に連絡してくる顧客や同僚のために、常に開かれた扉になっている。彼らに時間外は電源をオフにする必要性を、はっきりと(上手に)伝えるフランス人の知恵を紹介しよう。

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夜9時の電話や土曜日の「緊急事態」は避けられない。この記事は、あなたのパソコンのコンセントを抜く権利を守るためのカギだ。photo:Getty images

スマートフォンという魔物の画面を伏せて机に置き、振動や甲高い着信音、その他の通知音に対して耳をふさぐ強い意志をもってその場を離れる。機内モードに設定。携帯だけでなく同僚、顧客、共同経営者、その他「急を要する」ため「なるはやで」返信しなくてはいけないかもしれない仕事上の連絡先を、本当に見放す。

こんなことは平常時は珍しかったのに、感染症が世界的に大流行し始めテレワークが求められるようになってから、ほとんどすべての人に関わる問題となった。アンプラント・ユメーヌという心理社会的リスク予防専門のコンサルタント事務所によると、フランスでは2021年3月時点で、賃金労働者のふたりにひとりが「仕事を早く始めて遅く終える」と答え、10人中6人が「社内に働き過ぎの同僚がいる」と回答している。起床後すぐにコーヒーを飲みながらメールを読み、なんと言っても通勤時間がかからないため20時まで、もしくはもっと働く……。

「リモートワークでは気付かない内に、切れ目なく仕事ができてしまいます」と、今年フランス版マダムフィガロのビジネス・ウィズ・アチチュード賞のファイナリストに選ばれ、50イン テックという会社を設立した社長、キャロリーヌ・ラマドはため息をつく。メリハリのない日中にのしかかる仕事の負担が、多くのフランス人にとって重くなってきていて、これが睡眠障害、不安、うつ病を引き起こし、手遅れになってから気付くケースも。

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明確な優先事項を決める

感染が大流行し始めたころ、キャロリーヌ・ラマド率いる7人の小さなチームは恐怖に襲われたという。

「優先事項がはっきりしていませんでした。混沌とした状況で、緊急時は夜遅くや週末に電話で連絡を取り合っていました。夏が過ぎ、『こんなの二度とごめん』と感じました。さもないと燃え尽きてしまいそうでした」

以来、9時以前と19時以降は社内全員がメール送信をやめ、電話をかけなくなった。この時間帯以外は各自、携帯の通知をオフにしている。

「1名が他の社員と違う時間帯にひとりで作業している場合、メールで連絡は取れますが返信は待ちません。ただ唯一の例外は、OVHのデータセンターであったサーバー火災のような不可抗力事態です」とキャロリーヌ・ラマドは話す。

50イン テックのような歴史は浅いが急成長を遂げている企業にとって、これはほぼ快挙といえる厳格さだ。

「各社員が自分の業務計画を立てられるように、わが社ではガイドライン、目的、測定可能な明確な目標設定を作成するため、壮大な作業を行っています。私自身が目指しているのは、全員が定時を越えないこと、そしてパートナー労働者が『スマホの電源をオフにしてもいい』と感じられるようにすることです。毎朝、私がその日の優先事項を3点掲げ、もしすべて達成できなかったとしたら社内でその原因を話し合います」

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人に任せる

彼女は経営者ではあるが19時になると連絡を遮断し、ふたりの娘にたっぷりと時間を割く。

「私の人生にはこの時間が必要なのです。実現させるために準備を整えています。効率よく働けるように仕事の時間を確保し、緊張が張り詰めたときに対処すべき大きな案件が発生した時は、誰かに任せます。自分の専門分野でなく、時間がかかりそうな時は特に。必要なら一時的な案件の場合は、私より備えのあるフリーランス人材に助けを求めます」

仕事を任せるときは、まず相手を信頼しなくてはいけない。会わないからこそ以前より難しく、かつ重要なことだ。昨年秋の外出禁止令が再度出されたとき、アンプラント・ユメーヌが質問をした賃金労働者の多くが、「経営陣からの要求が増え、常に報告を求められるようになった」と嘆いている。結果、サラリーマンは仕事をしていることの証明に疲れ果て、経営陣は自分のチームの監視にくたびれているのだ。

「交替制勤務が必要なのです。でないととてもやっていけません」とオンライン食料品店ボーグランの創始者で経営者のマリー=クレール・ポワリエは繰り返し述べる。彼女は7時から16時まで働き、その後は2歳と3歳のふたりの子どものために時間を費やす。週末も保育園の休み期間も。その間は会社の経営チームが現場で彼女の代わりを務める。

「携帯の電源を切ることはできないですが、私はいわゆる2番手です。チームはとても有能で私を守ってくれます。私の仕事量は多いですが、プライベートはかなり均衡が取れています」と彼女は断言する。

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緊急時のシナリオを用意する

マリー=クレール・ポワリエはこのような好循環のおかげで、時間の拘束から解放されている。

「第1子を妊娠していた時、私がよりよい補佐役になれるよう組織を再編成しました。会社の発展のために自分を会社の幹部から外しました。それによって売上を大台に乗せることができ、わが社の経営陣チームの絆をさらに強固にすることにつながりました」と彼女は語る。

たとえあなたが社長でなくても、この好循環を取り入れることができる。最初の一歩は? それは、交代勤務への準備をすること。

「チームミーティングの際、『緊急時とはどんな時か』という定義付けを一緒に行うことで、その際に取るべき行動を決定することができます」とトン&エキリーブルの創設者でコーチ、『スロー・ワーキング』(1)の著者、ディアーヌ・バロナ=ロランがアドバイスする。

「このような問題の発生時、何をすべきか? 誰に連絡を取ればよいのか? 夜間や週末に電話をかけるべきか、もしくは翌日に持ち越すべきか?」とコーチ。わかりやすく言えば、誤解やパニックの瞬間をかわすということだ。それでもなお、21時に正当な理由もなく連絡してくる困惑した状態の同僚がいたら、「連絡は待つべきだった」と翌日に落ち着いて説明すればよい。このような説明は常に、相手がいったん重圧から解放されてからの方が行いやすい。

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一時的に仕事を離れることを自分に許す

追い詰められ、緊急時が働き方の通常モードになったらどうするか?

「自分で対処しないで、それどころか『24時間ずっと連絡がつけばより効率がよい、またはもっと仕事に打ち込める』というわけではないと、経営陣に想起させることです。これはフリーランスワーカーにも当てはまります。誰もが顧客からも、課長からも自由にこき使われるいわれはありません」とディアーヌ・バロナ=ロランは助言する。

業種または企業によっては時おり無意識のうちに、いつでも連絡できることやプレゼンティズム(疾病就業)をユニークな投資の証として掲げている所もある。それは従業員にとっても、企業にとっても期待外れとなる。

「ねらいは長期間にわたり高い生産性を維持しながら任務をこなすことで、それが結果的に自分自身を守ることにつながります。半年、1年の間に何に精力を注ぐのがよいのか? もし短期間に燃え尽きてしまったら私たち自身、家族、会社の誰にとっても、何の得にもなりません。そのことを念頭に置き口に出して言うことで、自分でも本当に連絡できない状態を許すことにつながります。」

派遣会社カパの調査によると、67%の賃金労働者が「バカンス中に連絡を遮断するのをためらう」という。フランスでも、私たちが考えているよりも事態は容易なものではないのだ。

(1)ディアーヌ・バロナ=ロラン著『スロー・ワーキング』(マイ・ハッピー・ジョブ出版、191ページ、€14.96)livre.fnac.com

texte : Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuriko Yoshizawa

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