それは愛?それとも馴れ合い? カップルの危険信号。
Culture 2021.05.21
心地いい関係は愛? それとも馴れ合い? きちんと見分けて、正しく問題を捉えるために、精神分析家のフロランス・ロートレドゥ(1)に話を聞いた。
カップル:愛か馴れ合いか、どうすればわかる? photo:Getty Images
――馴れ合いの関係にも心地よさを感じることがありますが、恋愛と馴れ合いにはどんな違いがあるのでしょうか?
ひと言でいうと、倦怠があるかないかです。馴れ合いのカップルは単調な日常の中にいます。生きているけれど、いわば目が覚めていない。満腹なのにまだ食卓に座り続けているような感じです。毎朝飲むコーヒーのように、「相手」が舞台装飾の一部になってしまっています。馴れ合いではないカップルにはときめきがあります。マンネリの時期が訪れることもありますが、そのことを意識し、恋愛関係を維持するのに必要な情熱を失わずにいるのです。
――馴れ合い? と自問するのは正常なことですか? それともカップルの関係に問題があることのサインでしょうか?
考えるということは確かにカップルの弱さを表わすものですが、健全なことでもあります。脳は愛の親友です。自問した時点で、惰性の状態を意識し、マンネリを打破したいという思いが表面化するのです。交際を始めて3ヶ月後か、15年一緒に暮らした後か、いずれにせよすべてのカップルが一度はこの問いにぶつかります。一心同体の愛という概念は時代遅れ。恋愛関係は心電図のように高低の波があるものです。
――習慣化した関係が喜びをもたらす場合もあります。害になる馴れ合いとどう見分けたらいいのでしょうか?
「喜びを与えてくれる」習慣とは、いわば「神聖な」価値を持った儀式です。ふたりの関係を祝福する、ふたりだけに関わる儀式のこと。有害なルーティンとは機械的なものです。
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“パートナーのどちらにも責任がある”
愛か馴れ合いか、どうすればわかる? photo:Getty Images
――馴れ合いの感覚はなぜ生まれるのでしょうか?
パートナーのどちらにも責任があります。惰性に流されてしまう人は、意外性や新鮮さがない。独立性が欠けている場合もあります。もう一方は、当事者意識がなく無関心で、相手のいら立ちに気付かない。さらに、20~30代の若者たちでは、出会いの幅が広がり、パートナーの「ザッピング」が容易になったことで、多くの相手と付き合い、その結果恋愛に飽きている人が増えています。
――危険信号にはどんなものがありますか?
たくさんあります。まず、カップルのどちらかが落ち込み気味になった時です。自分の周りの世界がつまらなく見え、色褪せてしまったと感じているのです。それから相手が一方的に疎遠になった時。友人たちの前で言い争ったり、気持ちのすれ違いが多くなるのも兆候のひとつです。極端な場合には、馴れ合いが一種のアレルギーを引き起こすこともあります。相手の匂いや息さえ耐えられなくなる。もちろんセックスライフも冷え込みます。人間的な交流がなくなれば、当然性交渉もなくなります。
――惰性で付き合い続けることは可能ですか?
はい。ただし、最初から“取引き内容”を明確にしておく必要があります。最近は少なくなっていますが、カップルのどちらかが(一般的には男性ですが)、自分の人生に関わること(仕事、スポーツや趣味の活動)にエネルギーを注ぎ、もう一方は(女性のことが多いですが)、家族の生活に専念するというモデルを採るケース。また、幸福過ぎる状態や、うまくいかなかった時に失望することを恐れるために、安定を求めて関係を続ける人もいます。強度が欠けている分、不安定な状態に陥る心配もないというわけです。ただ、そうした状態に満足している人でも、必ずさまざまな障害に対しての心構えはしています。こうした欺きがあると偽りの人生を送らざるを得ず、無数の後悔を抱え、深い憂鬱感に苛まれることになります。
――関係が馴れ合いになってしまったと気付いたら、どう対処したらいいですか?
まずは受け入れることです。「彼/彼女に対して心が震えない。前は震えていたのに」と認めること。一度事実を受け入れたら、大切なのは行動を起こすことです。忘れてはならないのが、馴れ合いの関係には慣れてしまいやすいということ。行動を起こさないとこの状態が定着してしまいます。次に、馴れ合いに陥った理由が自分たちにあるのかを確認します。生活全般や、とくに仕事は順調かどうか自分に問い掛けます。ふたりの関係が問題の原因であれば、パートナーと話すことが肝心です。相手が「誰かほかに好きな人ができたの?」と聞いてきたら、「いいえ、いまのところは」と答えましょう。その後は、カウンセリングを受けるか、カップルで話し合いをして、お互いに歩み寄り、努力する。こうした過程が、ふたりに素晴らしい再出発をもたらすはずです。
(1)Florence Lautrédou著『L’Amour, le vrai』Odile Jacob出版刊。
text:Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)