美しい男が想う、美しい女。 川谷絵音がステージ上に「完璧な美」を見出したボーカリストとは?
Culture 2021.06.15
川谷絵音が惹かれた、「完璧なボーカリスト」。歌声に圧倒され、そのステージに胸を打たれた表現者とは?
熱さと冷たさを同時に内包した完璧な美。
ジョルジャ・スミス|ミュージシャン
イギリス・ウォルソール出身。2016年に「ブルー・ライツ」でデビューし、18年にはクリティック・チョイス・アワード賞を受賞。同年に『ロスト・アンド・ファウンド』を発表。
2016年の彼女のデビュー時、最初は音源での歌声だけを聴いていたのですが、その後、ライブ番組に出演しているのを見てさらに心を奪われました。なかでも「On My Mind」という曲の歌い出しの歌声が圧倒的。彼女は座ったまま、口をほとんど開けずに歌うんです、時に伏し目がちに。その歌声のコントロールの繊細さとクールな佇まいに、徐々に熱を帯びる演奏。冷たさと熱さを内包したボーカリストに出会えたんだと非常にうれしく思いました。
歌っている時の姿もとにかく美しい。18年のブリットアワードでの「Let Me Down」の歌唱では、途中でストームジーが登場しても表情を変えず、歌い終わった後に少しホッとしたような控えめな笑顔を見せるんです。堂々とした歌声とのギャップに胸を打たれました。感情が表情に乗りすぎない姿は本当に美しい。
アーティストとしてのスタンスにも惹かれます。あるインタビューで「どのようなレガシーを残したいか」という問いに「強烈なやつ。みんなには音楽で私を覚えていてほしい」と答えていて、すごく共感しました。
女性目線の曲を書くことも多いので、女性の美しさに影響を受けることはあると思います。ただ美しさに性別は関係なく、美しいと思った人や物、感情が自分にとっての美なんだと思います。“美しい”というワードは僕の歌詞にもよく出てきますが、その時々によって美しさの種類は変わる気がします。これからも“美” は形を変えて、僕の音楽になっていくと思います。

30代
川谷絵音|Enon Kawatani
ミュージシャン
ミュージシャン、作詞家、作曲家。indigo la End、ゲスの極み乙女。のボーカル& ギターのほか、ソロプロジェクトの美的計画やジェニーハイ、アーティストへの楽曲提供など多岐にわたって活躍。indigo la End の最新アルバム『夜行秘密』が販売中。美的計画「ハートは温泉美人の私のものよ feat. 謎女」が配信中。
*「フィガロジャポン」2021年7月号より抜粋
interview & text: Yukiko Yaguchi