90sリバイバル!若者がクロップトップを選ぶワケ。
Culture 2021.06.25
海外の10代の女の子にダントツに人気があるクロップトップ。このピッタリとしたトップスはキュートでセクシーだが、同時に動揺も与える。
1990年代に流行ったクロップトップは、いまや社会的・政治的にコミットし、ありのままの自分の姿を受け入れるジェネレーションを映し出すスタイルのようだ。掘り下げてみよう。
クロップトップは、なぜ学校で問題視されるのか。 photo : iStock
おへそを覗かせたピッタリとしたトップスが波紋を呼んでいる。その名はクロップトップ。
10代の女の子たちはこぞってこれを着ている。TikTokやエミリー・ラタコウスキ―のインスタのアカウントでも頻繁にお目見えする。しかし、フランスの中学や高校では「服装が不適切である」として校内に入ることを拒否されたケースがたびたび起きている。
最近では2021年6月9日にルーアン市で同様のことが起きた際、次の朝、抗議と連帯を示すため約100人の女子高生がショート丈のトップスで登校した。
記者のアリス・プファイファーからすると、学校側がこの服装に動揺するのは不思議ではない。「昔からお腹は性的な意味合いを持つ場所とされてきましたし、ファッション界でもプライベートな領域であるとして守られてきました」とファッション人類学とジェンダー学が専門のプファイファーは言う。
「学校側の拒否の姿勢には、女子は身体を包み隠すべきだという一種の厳格主義が隠されているように思えます。その根元には、肌はみだらなものであり、隠すべきだという考えがあります」
ならば社会の考えは停滞したまま、進化できないでいるのだろうか?
---fadeinpager---
90年代のエンブレム
ショート丈のトップスは90年代にティーンエージャーの女の子のワードローブに登場した。スパイス・ガールズ、クリスティーナ・アギレラ、ブリトニー・スピアーズやデスティニーズ・チャイルドが着ていたことで普及し、黄金期を迎えることとなった。
「当時の着方はメンズのバギージーンズ、そこからはみ出す下着、それにお腹を見せる“クロップド”なTシャツ。それは反抗でもあり、自分を取り戻すことを暗示するスタイルでもありました。ビジュアル的には、あまりにも早く成長してしまったティーンエージャーの身体が、子どもの服からはみ出しているイメージがありました。クロップトップは胸と恥骨の間のゾーンをさらけ出したので、付随的に性的な意味合いを持つようになりました」とアリス・プファイファーは分析する。
時を経てクロップトップは若い女性のワードローブから消えていった。この“下品”なウェアは世間から良い評判を得なかった。トップスとスポーツブラの中間的存在、下着であるのかそうでないのか、そのあいまいさが混乱を招いた。その後に続くユニセックスなファッションの流れの中でお蔵入りとなった。
しかし、数年前からカムバックが始まっている。SNSのインフルエンサーたちはありとあらゆる形のものを集めて披露する。長袖もあれば、細いストラップのものもある。多くの場合、これらにハイウエストのデニムを合わせる。
アリス・プファイファーはこのトレンドをこう分析する。「2000年代が復活しています。XラインのシルエットやTバックはTikTokに頻繁に投稿する若年層に人気があります。彼女たちはこのリバイバルに性の解放、性に対するエンパワーメントという新たな意味を付け加えているのです」
---fadeinpager---
反抗的なジェネレーション
ボディ・ポジティブの流れに影響され、ファッションも変化しつつある。 photo : iStock
何よりもクロップトップは、反抗的な若い世代のシグネチャー・アイテムだ。前の世代と決別し、社会的・政治的な関わり合いを持ち、自ら声を上げ、その声が聞き入れられることを要求する。タブーを破ることを前提とする若者たちだ。
ブラジャーなんてさようなら、ありのままの自分を受け入れることが大事、と彼女たちは主張する。
「2020年代に若い女性がクロップトップを着ているのは、それが自己表明であるからです」と仏Inrocks誌のジャーナリストでもあるプファイファーは言う。「過去数年のアンドロジナスなファッションへの反ばくでもあり、性の身体的な違いを消す方向にあったジェンダー・ニュートラルなトレンドの逆を突いているのでしょう」
いま、SNSで賞賛されるボディ・ポジティブな流れに影響され、身体は受け入れるだけでなく、見せるべきものとなってきた。男性もだ。
1980~1990年代、ウィル・スミスやマーク・ウォールバーグもクロップトップを着ておへそを見せていた。以来、彼らは腹部を隠すようになったが、いまメンズのショート丈のトップスもカムバックを見せている。ネットでは大人気だし、ジャスティン・ビーバーやビラル・ハッサニなど有名スターが着ているのはもちろん、フランスの高校の校庭でも見かけるようになってきた。
text:Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)