ホラーの新鋭、ジュリア・デュクルノーが描く世界。

Culture 2021.07.24

2016年に公開された『RAW〜少女のめざめ〜』で、ジュリア・デュクルノーは思春期の少女が大人になる過程を通して、身体との関係を描いた。第74回カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した『Titane』では、トランスヒューマンの若い女性がたどる暴力に満ちた道のりを、粘り強くつくり上げた。

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カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した史上2人目の女性監督となったジュリア・デュクルノー。photo : Aurore Marechal Aurore/Abaca

2016年、トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』やシャルル・ペローの『青ひげ』で育ったジュリア・デュクルノー監督の初長編『RAW〜少女のめざめ〜』は、カンヌ映画祭をおびえさせた。

当時32歳だったこの若い女性は何も気づいていなかった。「プロデューサーが一部の評論家は好意的だったと教えてくれましたが、私は上映室を出て行った4人の観客が気になって仕方がありませんでした」と振り返る。

5年後、ジュリア・デュクルノーはアガット・ルーセルとヴァンサン・ランドンが出演した『Titane』を公式セレクションに出品し、またもやカンヌに衝撃を与える。

『Titane』は、ハイブリッドな身体を持ち、時にはサイコパスとなる若い女性が、筋肉隆々の孤独な消防士と触れ合うことにより、自身の感情に立ち戻る道筋を見つける物語。この作品は、スパイク・リー監督が委員長を務める審査員団からパルムドールを授与された。

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メタモルフォーゼ

ドラマ、コメディー、ジャンル映画、ティーン・ムービーが交差する『RAW〜少女のめざめ〜』で、デュクルノーは、いじめの規則に支配された獣医学校に放り込まれたベジタリアンの少女が大人になるまでの過程を描いた。

新入生の通過儀式として、上級生からバケツいっぱいの血を浴びせられ、ウサギの生の腎臓を強制的に食べさせられた16歳のジュスティーヌ(ギャランス・マリリエ)は、突然変異していく。彼女はステーキを食べ、さらには人の指をむさぼるようになる。(集団が個人を喰い殺す)社会、性、家族などあらゆる次元で、この作品をカニバリズムが支配している。

『Titane』に登場するアレクシアは、幼少時の交通事故以来、頭に金属板を埋め込んで生活しており、鉄板やガソリンの匂いに触れている時しか生きていると感じることができずにいる。彼女が人間性を取り戻すためには、究極のメタモルフォーゼが必要になる(アレクシアを演じたアガット・ルーセルは義足を装着するために6時間ものメーキャップに耐えなければならない日もあったという)。

これはパルムドールを受賞した際、ジュリア・デュクルノー監督が明言したことを示している——「完璧であるということは一つの袋小路に陥ること。怪物性には、私たちを隔てる規範の境界を破壊させる力があるのです」

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原始的な本能

高等師範学校受験準備コースとラ・フェミス(国立高等映像音響芸術学校)で学び、自らを「コントロール・フリーク」だと言うジュリア・デュクルノーは、皮膚科医と婦人科医である両親の医学書に長らく思いを巡らせてきた。

さらに、デヴィッド・クロネンバーグ監督の作品(『ザ・フライ』は彼女の頭から離れることがない)、人類学者のクロード・レヴィ=ストロースが描いた儀式、サド公爵の著作(ジュスティーヌの名前は彼に由来している)、自然史博物館、フランシス・ベーコンの絵画にも言及している。

彼女のアイドル的存在である韓国の映画監督ナ・ホンジン(『チェイサー』)の作品も忘れてはならない。『RAW〜少女のめざめ〜』のポップで露出過多な照明はここから借用されている。

デュクルノーは初短編『Junior』で、男勝りな思春期の少女が殻を破り、自分自身へと成長していく姿を描いていた。2本目の短編『Mange』は、メタモルフォーゼを背景とした復讐がテーマとなっていた。

『RAW〜少女のめざめ〜』では、原始的な本能を抑えようとするジュスティーヌを決して非難することなく、次のような疑問を観る者に投げかける。もし彼女に共感するとしたら、それは歪んだことなのだろうか? と。

ジュリア・デュクルノーは『Titane』でも再びこの問題を提起する。卓越した映像の才能を持つ彼女は、「映画を作ることは、同じダイヤモンドをあらゆる角度から見つめることです」と断言しているからだ。

text : Margaux Destray (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuko Tanaka

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