東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 打ち破られたドレスコード。そして生まれた新潮流は?

Culture 2021.07.29

東京オリンピック大会5日目の7月25日、ドイツの女子体操チームは足首まで覆うボディスーツで登場した。同じ日、オリンピックに初登場のスケートボード競技はクールなウェアで観客を魅了した。何十年にもわたってスポーツ連盟が決めてきたドレスコードに対して女性アスリートたちがいま、声を上げ始めた。

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足首まで覆うボディスーツで東京2020大会に臨んだドイツのパウリネ・シェーファー・ベツ選手。(東京、2021年7月25日) photo : 丸山康平/アフロ

史上初めてジェンダー・バランスが取れた大会と謳われる東京オリンピックでも、性差別論争は避けられない。

先週末、ドイツの女子体操選手はレオタードの代わりにボディスーツを着て競技に臨み、話題を呼んだ。ドイツ代表選手のエリザベト・ザイツとザラ・フォス、パウリネ・シェーファー・ベツ、キム・ブイは、3カ月前のヨーロッパ選手権大会同様、全身を覆う赤白のボディスーツを着用することを選んだ。

国際体操連盟はこのボディスーツの着用を認めているものの、改めて、女性アスリートに課せられるドレスコードが議論を巻き起こした。

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恥じらう思春期

「女性なら誰もが、自分のことをよく思いたいものです。私たちのスポーツでは、成長するにつれてそれが難しくなってきます」と今年4月の取材で語ったザラ・フォスはこう続けた。「子どもの頃は、身体にピチッとしたレオタードをなんとも思っていませんでした。でも、思春期になって生理が始まると、だんだん違和感を感じるようになりました」

チームメイトのエリザベト・ザイツもウェブサイトSWRで同じような意見を述べている。レオタード姿の若い体操選手の写真がインターネットを中心に出回り「スポーツファンだけでなく多くの人の目にさらされます。少しでも何かがぽろっとこぼれてしまうと、みんなが必要以上に見てしまうんです」とエリザベトは語っている。

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問題はビキニパンツ

7月18日には、ビーチハンドボールのヨーロッパ選手権でノルウェーの女子チームが、規定のビキニパンツの着用を拒否し、波紋を呼んだ。

スペインとの試合でノルウェーチームは男性アスリートと同じショートパンツで登場した。大会終了後、ノルウェーチームがヨーロッパの連盟から1,500ユーロの罰金を科せられると、連盟を批判する声がすぐさま起きた。

「マッチョで保守的な国際スポーツ分野は、大きく変わる必要があります」と、ノルウェーでスポーツを担当するアビド・ラジャ文化大臣は言う。ビーチバレーボールでは2012年以降、ビキニが義務化されていないことを考えても、連盟の態度は、時代遅れに思える。

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商業的な意図

ビーチハンドボールはオリンピック種目ではないものの、スポーツルールの中に性差別的なものがあることがこの騒動で明らかになった。

米オンタリオ州のウェスタン大学国際オリンピック研究センターの元所長、ジャニス・フォーサイスは、ニュースチャンネル「フランス24」の取材にこう話している。「多くの場合、商業的な意図があるのは明白です。国際スポーツ連盟は、男性視聴者にアピールすることで女性アスリートの競技を見てもらおうとしています。連盟の言い分としてはその結果、競技への関心が高まり、スポンサーやテレビ契約、さらには企業スポンサーが獲得できるかもしれないので、集金効果がある、というのです」

2008年、女性アスリートに対する性差別的な視点を裏付ける研究結果が発表された。2004年のオリンピック大会のビーチバレーボールの試合映像を分析した結果、映像の37%は選手の胸やお尻に集中していたのだ

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新しい潮流をもたらすスケートボード

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2021年、スケートボード競技がオリンピック種目に初登場。女子ストリートで金メダルを獲得した日本の西矢椛は13歳10ヶ月。夏季大会で金メダルを獲得した日本最年少選手となった。 photo : Scoop Dyga/Abaca

ドレスコードが旧態依然のままのオリンピック競技がある一方で、新しい潮流も生まれている。

IOC(国際オリンピック委員会)がスケートボード競技を東京大会から採用したのは、若い観客を取り込み、オリンピックのイメージを一新するためだ。先週末から始まった予選で、観客が目にしたのは新しいタイプのアスリートだった。

ともに13歳の女子、西矢椛(日本)とライッサ・レアウ(ブラジル)は、男子同様のゆったりとした長ズボンとTシャツを着用し、それぞれ金メダルと銀メダルを獲得。若きアスリートたちは、その服装でも爽やかな風を吹き込んだ。

オランダ人イラストレーターのピエット・パラによるナイキSBのスケーターズシャツとパンツは、これまでのオリンピックのユニフォームとは一味違ったクールなものだった。選手は好きなデザインを選ぶことができ、他のメンバーと同じである必要はない。スケートボードの精神を反映したこの自由さは、大会の歴史に小さな革命をもたらし、新たな時代の始まりを告げた。

長年続いた「性を強調」するドレスコードを打ち破り、女性アスリートたちはいま、議論の中心を本来の競技そのものに取り戻そうとしている。

Text:Stéphanie O'Brien(madame.lefigaro.fr)

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