いまを捉えた子どもたちのアート展が、ロンドンで開催に。
Culture 2021.07.31
写真・文/坂本みゆき(在イギリスライター)
ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アートで2021年8月8日(日)まで開催中の「ヤングアーティスツ・サマーショー」はイギリスの子どもたちのアートによるエキシビションだ。2019年から一年に一度行われているイベントで、この夏で3回目を迎える。
イギリス国内の学校やホームスクーリングを行っている保護者、さらには国外でイギリスの教育カリキュラムに乗っ取って授業を進めるインターナショナルスクールの合計約4000校が参加。5歳から19歳による3万3000点以上の応募作品の中から、260点を厳選して展示している。同時に開催中のオンラインエキシビションでは、572点の閲覧が可能だ。さまざまな画材によるドローイングやペインティングから、写真、彫刻、工芸、インスタレーション、映像までと幅広いフォーマットの力作が並ぶ。
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キューレターのフィリア・バーロウ氏は「選考を通して、とてつもなくたくさんの才能に触れることができ、とても光栄でした」と話す。
「このようなエキシビションは若いアーティストたちが自分の周りに広がる世界をどのように捉えているかを知るためにもとても大切です。子どもたちが現在生きている状況や、そこから得た経験を示してくれるだけではなく、いま何に不安を感じているか、未来に対して何を望んでいるかなど、彼らの心の内を私たちに教えてくれます」とも語る。
作者が自由に選んだ作品のテーマは、お気に入りの動物や自分のペット、身近な人の肖像、風景、空想の世界の情景までと実にさまざまだ。共通しているのは、どの作品からも描き手、造り手の真摯な気持ちがダイレクトに伝わってくること。
人物像では、肌の色や髪型、着ている服を通して、被写体のルーツを示しているものも少なくない。イギリスにはさまざまなバックグラウンドを持つ人たちが暮らしていることを改めて教えてくれるだけではなく、子どもたちはそれを早くから学び、各アイデンティティの重要さを当たり前に認識しているのがうかがえる。
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パンデミックのさなかに制作された作品も多い。その間に子どもたちがどのように考え、過ごしてきたかを知る手がかりとしてもこれらの作品は重要な位置を担っていると言えそうだ。会えないクラスメイトへの親愛や、かつての暮らしを懐かしむ気持ちを込めた作品は、寂しさ、悲しみと同時に、それでもいつかこの状況が改善されるという希望も感じられる明るさも同時に秘めている。
子どもたちのまっすぐに見つめる目で捉え、イマジネーションを駆使して作り出された作品は、自由で力強く、観るものの心を鷲掴みにする。
東京生まれ。95年に渡英後、ブライトン大学院にてファッション史を学びながらファッション業界紙やファッション誌への寄稿を始める。現在は男性誌、女性誌、専門誌など多方面に渡ってイギリスに関する記事を執筆。好きな分野は英国文化と生活、アート、音楽、食べ物&飲み物。サセックス州在住。ティーンエイジャーの母。madame FIGARO.jpで「England's Dreaming」を連載中。
photography & text: Miyuki Sakamoto