お金のことは、家族でも信用してはいけない理由。

Culture 2021.08.06

家族や友人から借金のお願いがあったら、あなたはどうする? 親しい間柄ほど、金銭トラブルに発展した時のダメージは大きい。「貧乏は生活習慣病」と語る桜川真一の著書『貧乏は必ず治る』(2017年 CCCメディアハウス刊)から、家計をしっかりと守り、金銭にまつわるもめごとに巻き込まれない方法を探る。

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「金の切れ目が縁の切れ目」ということわざもある通り、親しい中ほど金銭のやり取りは気を付けよう。photo: fizkes_iStock

ある経営者の方が中学生のころ、父親から近所に住む知人に7万円持って行ってくれとお金を渡されたそうです。渡されたときにさりげなく数えると1枚足りない。「あれ、1万円足りない」と言うと彼の父親がすかさず、「さすがだ。お金のことは家族でも信用するな」と言って、隠していた1万円を取り出したそうです。

なんでも、その父親が若いころ、お客さんから預かった売り上げをそのまま経理に渡したところ、後からお金が足りないと連絡があり、結果かなりの額を弁償しなければならなかったそうです。「預かるとき、あるいは、渡すとき、確認すればよかった」。どんな相手でもお金に関しては信用してはいけないと、その父親はそのとき心に決めたそうです。

お金のことは家族でも信用しない。家族も信用しないなんて悲しいと思うかもしれませんが、信用してお金のことをあいまいにしているから起こる問題もたくさんあります。

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金銭トラブルから起きる家族の崩壊。

私の家は、本当に仲のいい家族でした。よく笑う、笑顔の絶えない家が、兄の事業が傾いてきたころから一変します。父や母が借金の保証人になり、私も兄の借金の一部を保証することになったからです。

家族のことだから信用する。といっても、今から思えば、兄の会社の状態を知らないで保証人に立つことこそが無責任でした。親しいからこそ、お金に関しては内容をお互いに確認するのも礼儀ではないかと今では思っています。「親しき中にも礼儀あり」の精神です。

現在では、銀行は建前上保証人に頼らずに、お金を貸すことになっていますが、それでも自ら申し出たという形にして、巧みに保証人にさせたりします。日本人らしい家族の強いきずな、断れない性格を巧妙に利用した制度です。

怒られるかもしれませんが、保証人制度と似ているのが、いわゆる「オレオレ詐欺」です。こちらも、日本人の家族の仲の良さをうまく利用したものです(こちらは犯罪なので大きな違いはありますが)。私も保証人になったときは、銀行の方からも兄からも、内容をほとんど聞かされず、銀行の一室で「ここに印鑑を押して、署名をいただければ大丈夫です。これで、お兄さんの会社にも融資ができます」と笑顔で言われて印鑑を押したためにたいへんな目にあいました。ただし、社会では印鑑を押したほうが悪いのです。だからこそ、しっかり内容を確認して、すぐに信用しないことが大切なのです。

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信頼すれども、信用せずという姿勢で。

私は、多くのデザイナーの方と仕事をする機会があります。人気稼業ですから、売れなくなってデザインの仕事から離れてしまう人も多いのが現状です。一方で、仕事をひろげ社員まで雇うような人もいます。

その差は、もちろん才能の差もありますが、実はお金の問題が大きいのです。ダメになるタイプのデザイナーは、仕事を受けるときにお金のことをあやふやにします。「終わってから決めましょう」という感じで、終わったあとにお金の多い少ないでもめたり、なかには発注者から、「今回はこれだけで。次多く払うから」と丸めこまれて、結局は食べていけなくなって仕事を辞めざるを得ない人も多いのです。一方、成功するデザイナーは、お金のことをしっかり決めてから仕事をします。そうしたほうが、最終的に長い信頼関係を築けることを知っているからです。信頼しているからこそ仕事は受けますが、お金に関しては信用しすぎないことで、金銭的ダメージやストレスを受けないようにしているのです。

信頼すれども信用せず。これは、経営の基本だと言われています。社員に仕事を任せるときは、信頼して任せるけど、任せっぱなしにしない。最悪の事態などを考えて手を打っておかなければならないという考えです。

稲盛和夫氏は、会社の経理は「信頼して信用しない」のが大切だと著書の中で述べています。お金を扱う部門は、お金の使い込みなど、信用しすぎていたために社員を犯罪者にしてしまうおそれがあるからだというのです。お金のことは家族でも信用しない。これは、家族を疑えということではなく、長くいい人間関係を築くために必要なことなんですね。

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『貧乏は必ず治る。』
連帯保証人になり自己破産も覚悟した過去がありながらも今ではお金持ちになった著者が、「貧乏」とは生活習慣病であると断言!

貧乏になる人ほど、困った人の話を聞く、実力もないのに人を助ける……などの考え方のクセ=習慣が、貧乏への道と著者は言う。
お金持ちと貧乏になる人の思考回路の違いを明確にすることで、あなたの貧乏体質は改善できる!

桜川真一 著
2017年 CCCメディアハウス刊

¥1,540

text: Shinichi Sakuragawa

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