休日にトライ! 子どもの読書力をつける最高の方法。

Culture 2021.08.09

From Newsweek Japan

教科学習の土台である読書力の低下が問題視されるのに、その教育について「ほぼ100%家庭教育に任されている」状態の一方、アメリカでは科学的な検証が進んでいます。子どもに読書力をつける「最高の方法」をご紹介しましょう。

iStock-1083588492-arti.jpgphoto:iStock

子どもに「勉強しなさい」「宿題しなさい」「本を読みなさい」と毎日怒鳴るのは親にとっても子どもにとっても楽しいことではありません。親からガミガミ言われなくても「自分で勉強する子」に育てるには、何よりも、自分の力で学習を推進していく土台である「読書力」をつけてあげることが大切です。

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読書量の減少が日本人の読解力を下げている。

自分で勉強する子には「読書力」が身についています。活字に対する抵抗感がなく、教科書や問題集に集中して向き合い、書かれている内容を正確に読み解く力が育っています。だから人の助けを借りることなく、自学自習で学力を積み上げていくことができるのです。

「そんなのは当たり前だ」と思うかもしれません。しかし2019年に経済開発協力機構(OECD)が行った国際学習到達度調査(PISA)によって、日本の子どもの「読解力」は15位と、前回調査時の8位から大幅に下がっていることが分かっています。

なぜ日本の子どもの読解力が下がっているのか?その一因として「初歩の読書教育の欠如」があるのではないかと私は考えています。

学研総合教育研究所が2019年に小学生とその保護者1200組を対象に実施した調査によると、小学生の1ヶ月の読書量は平均で3.1冊と、30年前の調査時(平均9.1冊)に比べて約3分の1に激減していることが分かりました。

読書量が少ないと、語彙力が増えず、読書スピードが向上せず、読解力が発達しません。がんばって本や教科書を読んでも内容理解が伴わないのですから、子どもが勉強嫌いになっていくのは当然です。

学校の勉強のほとんどは教科書に書かれている「活字を正確に読み解くこと」で成立しています。教科学習の土台である読書力が満足に育っていないまま学年が上がり、学習の難易度が高まると、子どもは勉強についていけなくなります。いわゆる「小4の壁」「9歳の壁」にぶつかるのです。

学研総合教育研究所の調査でも、学年が上がるにつれて読書冊数は減少傾向にあり、小学3年生になると1か月に1冊も「読まない」子どもが4人に1人になることが分かっています。ちなみに30年前の調査では小学3年生以上の読書量が多く「月平均10冊以上」の本を読んでいました。

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初歩の読書教育は100%家庭に任されている。

文部科学省は子どもの読書離れについて次のように述べています。「小学校,中学校,高等学校と進むほど「読む本の冊数」が減るという状況は,国語力の育成という観点から見過ごすことができない問題である。このことは,学校教育において読書が十分に位置付けられていないこと(中略)に起因すると考えられる。」

文科省も認めているように、日本の学校教育では読書教育が重視されておらず、生徒の「読書力」を評価する基準も、「読書力」を育成するカリキュラムも存在しません。つまり読書力の発達については「ほぼ100%家庭教育に任されている」のです。

家庭の責任が重大なのですが、いざ家庭で読書教育に取り組もうと思っても、どうやって子どもに読書力をつけるのか、何冊本を読めば良いのか、どのような本を与えれば良いのか、などの目安がないため、誰もが手探りで読書教育を行なっているのが現状です。

小学生になった子どもが一人で本を読んでいる姿を見て、多くの親は「うちの子は自分で本が読めるから大丈夫」と思うでしょう。しかし外見だけで「子どもに十分な読書力が身についている」と判断するのは危険なのです。

iStock-1058643068.jpg

photo: iStock

読書教育について科学的な検証が進んでいるアメリカでは「読書スピード」と「読みの流暢さ」によって子どもの読書力を評価します。1分間で何文字読めたか、読みミスがどのくらいあったか、流暢さは伴っていたか、など簡単なテストをすることで子どもの読書力の発達がほぼ正確に判断できるのです。

例えば、小学1年生であれば「1分間に60単語を正確かつ流暢に音読できる」ことが目標です。これを達成する手段として、リーダーズと呼ばれるレベル別に分類された「短い本を毎日20〜30分音読する」ことが推奨されています。

このような明確な指針があれば、子どもの読書力に遅れがないか、家庭でどう読書教育をサポートすべきなのか、保護者は確認できますから、読解力低下を食い止める一つの手立てとなるのではないでしょうか。

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読書力をつける最高の方法とは?

NPR(National Reading Panel)は、子どもに読書力をつける「最高の方法」を調査、検証することを目的に1997年に設立された米国政府機関です。科学者、現役教師、教育研究家などの専門家と米国教育省が共同で調査・研究を行い、2000年に最終報告書を提出しました。

NPRは子どもに読書力をつける「最高の方法」は、以下の6つの指導法の組み合わせであると結論づけています。

1)フォネミック・アウェアネス(言葉を聞き取る指導)
2)フォニックス(文字を正しく読む指導)
3)フルエンシー(読みの流暢さ、読書スピード指導)
4)音読(口頭で感情を込めて読む指導)
5)単語(新たな語彙を獲得する指導)
6)読解力(論理的、多面的、批判的に読む指導)

上記は「英語」の読書力をつけるための「最高の方法」ですが、そっくりそのまま「日本語の読書教育」にも応用することができます。

1)読み聞かせや言葉遊びでフォネミック・アウェアネスを育て、
2)ひらがな・カタカナを丁寧に教えて文字が読めるようにし、
3)4)簡単な本の音読で文章が早いスピードで読める力を鍛え、
5)多読で漢字力(ボキャブラリー)を向上させ、
6)精読や批判的読書で読解力を高める

読書教育の目的は「子どもを本好き」にすることではありません。「活字に対する抵抗感を取り除くこと」です。もちろん「本好き」に育ってくれればラッキーですが、どの子にも個性や学習スタイルがありますから、それらを無視して「本を読みなさい」とうるさく言ってもうまくいきません。

本好き・本嫌いに関わらず、系統的な読書教育を行うことで、活字への抵抗感を取り除き、早いスピードで本を読み解く力を与えることができます。読書力が身につけば、集中して活字に向き合えるようになりますから、自学自習で学力を積み上げていくことができるのです。

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音読をさせると子どもの読書力が分かる。

子どもの読書力を判断する簡単な方法が「音読」です。子どもに学年レベルの本を「音読」させてみましょう。長い内容だと嫌がりますから、国語、社会、理科などの教科書を「予習」として音読してもらうと良いでしょう。

読み方がたどたどしかったり、リズムやイントネーションがおかしかったり、読みミス・二度読み・戻り読みが多い場合は要注意です。フルエンシー(読みの流暢さ)に欠ける=内容理解度が低いと理解してください。

家庭で読書力をサポートする際は「フルエンシー/流暢さ」に着目しましょう。内容理解よりも「文章がスラスラと正確に読めること」を優先して練習してください。フルエンシーを向上させるポイントは以下の通りです。

1)簡単で短い本を音読する(学年レベルよりも簡単な本を音読する)
2)同じ本を繰り返し音読する(親が読んであげても効果的)
3)感情を込めて音読する(棒読みでなく抑揚をつけて音読する)

読書が苦手という子どもの多くが「難しすぎる本」を読んでいます。読書力を育てるには「簡単で短い本の音読」が最も効果的です。簡単な本を繰り返し読むことで文脈理解を伴いながら読む力が育ちます。小学生のお子さんがいる家庭ではお休みに読書教育を実践してみてください。

船津徹

TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

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text: Toru Funatsu

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