頑張った自分へのご褒美......それ、貧乏への入り口です。
Culture 2021.08.11
ハードな仕事が終わった自分に、ご褒美…。その癖が、あなたを貧乏に誘い込んでいるかもしれない。「貧乏は生活習慣病」と語る桜川真一の著書『貧乏は必ず治る』(2017年 CCCメディアハウス刊)から、家計をしっかりと守り、お金持ち体質を身に着ける術を学ぼう。
「ご褒美があるから頑張れる」の危険な罠とは?photo: itsskin_iStock
文/桜川真一
ビール好きには、仕事の後の一杯がたまりません。「ふー、このとりあえずの一杯のためにがんばったんだ」と思わず顔が緩む瞬間です。とにかくがんばった後には、なんらかのご褒美が欲しくなりますよね。よく女性が、「がんばった自分へのご褒美に、洋服を買いました」ということを言いますが、これも仕事帰りの一杯を楽しみにするおじさんと同じですね(一緒にするな!と怒られそうですが)。
ご褒美があるからがんばれる、きつい仕事に耐えられるという人は多いでしょう。しかし、馬の鼻面にニンジンをぶらさげて走らせるように、人はご褒美がないと仕事ができないのでしょうか?大きなプロジェクトが成功したら、祝いたい。それはわかります。長い時間をかけて到達したことを祝うことにケチをつけたいとは思いません。
私も自分の企画が見事に採用されたり、土地を探し、マンションの企画を立て、融資が通り、無事完成したらうれしいものです。けれども、自分に褒美をやろうなんて思うことは不思議とありません。
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登山に見えた、お金持ちへの道。
自分への褒美で思い出したことがあります。以前知人に、いくつもの峰を歩く登山に連れていってもらったことがあります。こちらは、登山の初心者。少し登っては休み。また、少し登っては休み。ようやく頂上。せっかく頂上に着いたのだから、写真も撮りたい、お茶も飲みたい、ゆっくりしたいとはしゃいでいたのですが、知人はすぐに次の峰を目指して歩こうとしています。まわりの登山者も、ほとんどが軽く喜んで写真を撮ったら、次の峰へと歩きだすのです。
「登山って何が楽しいのだろう?」と思ったのですが、いくつかの峰を歩き、無事下りてきたあと、電車に乗ってから気づいたのです。「家を出て、苦しみつつ山に登って、そして無事に家に帰る。これって、人生と似ているな」と。そう気づいたらじんわりと山登りのよさが分かった気になりました。
人生はときに山登りにたとえられます。山登りに慣れた人だからといって、知人は頂上に到達することに飽きていたわけではないはずです。きっと山の頂に立つまでの道のりや下る山道まで楽しんでいるのでしょう。
山頂に着いても大喜びしない、というのはお金持ちになりたい人には大切なことです。少しうまくいったからといって、ご褒美をもらう。しかも、自分が自分にご褒美をあげるなんてとんでもない。その山の頂から次の頂をめざし、進むのがお金持ち。一つの頂だけで満足しないのです。欲張りと言われるかもしれませんが、満足したら後は落ちていくだけと知っているからです。
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祭りの後の淋しさを恐れない。
基本的に、貧乏に陥りやすい人は自分に甘い。ほんのちょっとしたことで、自分ががんばったと思いがちです。「今日は、口うるさい上司の言葉に耐えてがんばったから、ご褒美」「なんとか書類を間に合わせたから、ご褒美」とにかく、自分への甘い評価で現実からの逃避をしています。
自分に甘い人は、休みもご褒美と考えます。1週間は、月曜日から金曜日までがんばって働いて、土日はご褒美として遊ぶ、というか遊び切ります。つまり、がんばった自分のご褒美として週末を考えるから、日曜日で完全にリセットされてしまうことで、なかなか仕事が進歩しない。
「月曜から仕事か。適当にがんばって、週末遊ぼう」と、週末を平日の苦行に耐えた自分へのご褒美としていないでしょうか。それに対して、日曜が始まりと考える人は、前の週の余力を残しながら次の週に移るから、仕事の実績や経験も積み重なる感じです。
ご褒美は、与え続けると刺激がなくなります。より強い刺激を求めるのか、ご褒美に飽きるのか。少しがんばったくらいでご褒美をやる癖がついている人は要注意。お金は使うし、ご褒美なしでは動かなくなる危険性もあります。
小さなことに満足を覚えていたら、大きなステップに進めません。現状維持が精一杯といった感じでしょうか。お祭りの後には、淋しさがやってくる。それと同じように、ご褒美の後には、なんだかむなしさがやってきます。お金持ちの道を進むなら淡々と。まずは、ご褒美癖をやめましょう。
『貧乏は必ず治る。』
連帯保証人になり自己破産も覚悟した過去がありながらも今ではお金持ちになった著者が、「貧乏」とは生活習慣病であると断言!
貧乏になる人ほど、困った人の話を聞く、実力もないのに人を助ける……などの考え方のクセ=習慣が、貧乏への道と著者は言う。
お金持ちと貧乏になる人の思考回路の違いを明確にすることで、あなたの貧乏体質は改善できる!
桜川真一 著
2017年 CCCメディアハウス刊
¥1,540
text: Shinichi Sakuragawa