暑さに負けず、スクリーンで観たい今月の映画3選!
Culture 2021.08.13
街の生活と路上の音楽が、混ざり合って渾然一体に。
『イン・ザ・ハイツ』
トニー賞4冠の同名ブロードウェイミュージカルの映画版。主人公ウスナビが街の子らに歌を交えてわが青春期を語る。快活な語りの形式だ。マンハッタン北部、ドミニカンやプエルトリカンらが共生する移民の街。煮詰まった日常から沸き立つ喜怒哀楽がラップとなり、サルサやメレンゲとなる。ダウンタウンのプールは、往年のバスビー・バークレー調の同心円群舞の空間に! 移民一世の名物婆さんの見果てぬ夢を起爆剤に、夏の大停電の災厄は灼熱のカーニバルへと変容する。街を出て大学へ進学するも挫折した傷心のヒロイン、ニーナが窓から建物の外壁へ90度回転移動して恋人と踊る、幻惑のデュエットダンスも見逃せない。
監督/ジョン・M・チュウ
2021年、アメリカ映画 143分
配給/ワーナー・ブラザース映画
7月30日より、丸の内ピカデリーほか全国にて公開
https://wwws.warnerbros.co.jp/intheheights-movie.jp
新型コロナウイルス感染症の影響により、公開時期が変更となる場合があります。最新情報は各作品のHPをご確認ください。
>>関連記事:今年大注目の映画『イン・ザ・ハイツ』監督が語る、音楽の力とアジア人の誇り。
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アメリカンインディーズ、その真髄に触れる特集上映。
『ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ』
川べり、ハイウェイ、日常からの逃走。ライカート監督の美質はデビュー作『リバー・オブ・グラス』に芽吹いている。そして漂流の自由とわびしさ。柔肌のような感じやすさで旅の仔細が立ち現れる彼女の作風は、第2作『オールド・ジョイ』で確立する。この秘湯旅の映画に惚れたミシェル・ウィリアムズが、続く『ウェンディ&ルーシー』(写真)と女性視点の開拓史劇『ミークス・カットオフ』で好演。前者は若い娘と黄金色の犬の道中記で、名バディの愛犬ルーシーとはぐれるウェンディの心細さと覚悟、異郷での波紋に胸が痛くなる。望み薄の状況が好転した時に、ふと漏れるハミングの慕わしさ。勇気湧き、涙ぐむこと必至の幻の初期4作品が一堂に。
監督・共同脚本/ケリー・ライカート
1994 ~2010年、アメリカ映画 76分、73分、80分、103分
配給/グッチーズ・フリースクール、シマフィルム
シアター・イメージフォーラム渋谷ほか全国にて公開中
https://www.kelly2021.jp
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時代を拓いて添い寝した、“皆殺しの天使”の光彩。
『ココ・シャネル 時代と闘った女』
20歳でお針子になり、パトロンを得て27歳でパリに帽子店を開く。第1次世界大戦後、時代変化を鋭く嗅ぎ分けたシャネルは、19世紀の規範的な装いから、コルセットを外した中性的な服装へと女たちを解き放つ。帽子店は超一流のメゾンに変貌。男とのパトロン関係も逆転し、コクトー、ピカソ、ディアギレフら芸術家を次々愛し、支援する。そんな絶頂期を基軸に、この中編ドキュメンタリーは彼女の負の側面も照らし出す。連合軍とナチス情報局、双方に通じた二重スパイまがいの危険を占領下パリで冒し、パリ解放直後にスイスへ逃れたり。名高い鏡張りの螺旋階段が映す虚実の像のように、妖しくも華やいだ多面体としてのシャネルに肉薄する。
監督・脚本/ジャン・ロリターノ
2019年、フランス映画 55分
配給/オンリー・ハーツ
7月23日より、Bunkamura ル・シネマほか全国にて公開
http://cocochanel.movie.onlyhearts.co.jp
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*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋
text: Takashi Goto