老後破産かも......30~40代の間違ったお金の習慣。

Culture 2021.08.17

From Pen Online

文/川畑明美

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老後破産に陥る人は若い頃からのお金の使い方が間違っているケースが多い。30~40代のお金の使い方で人生が変わる。photo:iStock

「年金だけでは、老後の生活が成り立たない。貯金もほとんどないので、生活保護を受けることになるかもしれない」そう不安を訴えて筆者に相談にくる方も少なくない。どうして、そんなことになってしまうのか? それは、30~40代でのお金の使い方が原因と考えられる。

20代の頃よりも責任のある立場になり、収入も増えていく30~40代。多くの人は、結婚・出産やマイホームの購入というライフイベントもこの時期に集中している。まず、30~40代のコロナ禍における金銭感覚を調べてみよう。SMBCコンシューマーファイナンスが発表した「30代~40代の金銭感覚についての意識調査2021」によると、コロナ禍前の調査から大きく変わったのは次の4つだ。

・貯蓄額が30代は91万円増加、40代では162万円の増加

・残業時間の減少が22.5%、収入が減ったのは31.4%

・副業機会も前回から11.5ポイント減少の22.6%

・小遣いの平均は30,192円で3,307円増加

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ライフイベントが集中する時期のお金の使い方が重要。

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20代よりも収入が増えているのがアダとなり、ついつい高額なものを背伸びして購入してしまう。photo: kazuma seki-iStock

貯蓄額の増加は、コロナ禍のテレワーク・外出自粛による交際費などが減少したことと、10 万円の特別定額給付金の受給、そして景気に対する先行き不安を受けた貯蓄志向の高まりなどの影響を受けたと考えられる。残業時間が減り、収入や副業の機会も減っているが、仕事後の消費が減ったことも貯蓄額が上がったと考えられる。実際に部下や後輩におごっている金額は前回の調査の7,010円から4,547円と大幅に減少している。逆に小遣いは増加しており、部下や後輩へのおごりが自身の小遣いに充てられたと考えられる。

ただし貯蓄が増えたと言っても、最も多くの回答が集まったのが50万円以下で23.8%、その内の0円が16.7%なのだ。50万円以下や0円の人は逆に増えており、500万円から1000万円の人が前回の6.7%から12.2%と大きく増加している。お金を貯められる人と貯められない人の差が激しいのだ。

ひと昔前のように20代で子どもを生み育てていれば、30代ともなると少なくとも長子はある程度、手のかからなくなる年齢に達していた。だが現代の30代~40代は、結婚も出産も遅い傾向だ。すると、20代よりも収入が高いので、どうしても子どもやマイホームの資金も背伸びしがちなのだ。現代の30~40代は、お給料の伸びが鈍く将来の年金も不安な世代なのだから、お金の使い方を間違えてしまうとその後の人生で苦労することになりかねない。晩婚晩産で子育てが終わってから老後資金を貯める時間がないからだ。

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その1.長く働くための健康習慣ができていない。

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年金の支給開始が遅くなる可能性があるのだから、長く働くために健康習慣ができていないとお金もかかるし収入も減る。photo:pixelfit-iStock

逆に、30~40代でこのことに気付ければお金が貯まる家計に変われる可能性も秘めている。30~40代の間違った習慣のひとつ目が下記だ。

長く働くための健康習慣ができていない。

まずはこれについて考察してみよう。実は年収が低い世帯ほど肥満が多い。安くておいしく感じる食べ物の多くは、炭水化物や脂肪が多いのだ。つまり肥満の元になる。そういう食事は、20代で卒業することだ。なぜなら、いまのシニア世代でも長く働きたいというニーズが高いからだ。NRI社会情報システム株式会社が2021年に実施した全国の50歳~79歳の男女3,000人を対象としたインターネット・アンケートによると70歳雇用延長制度への評価について、「良い制度だと思う」と「どちらかと言えば良い制度だと思う」の合計を見ると、6割強がプラスの評価をしているのだ。長く働くには、健康が大事なのだ。

ところが年収200万円未満の世帯の人ほど肥満率が高い。年収が少ない世帯ほど長く働く必要があるのに、肥満の状態が続いていると60歳を過ぎると病気で働けなくなってしまう可能性が高くなる。肥満は糖尿病などの生活習慣病の進行を進める原因だ。健康は、よりよい人生を送るための基本なのに、その意識が低いということは老後破産の可能性を高くすることにつながる。さらに言うと、健康維持のための自制ができない人ほど、将来の計画も立てられないことが多く、老後資産も計画的に貯めることができない。

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その2.住宅ローンでお金を減らしている。

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住宅ローン控除のために繰上返済をしないのは、大きな間違い。控除額よりも返済額を減らすことだ。photo:skodonnell-iStock

2番目の「住宅ローンでお金を減らしている」人も多く見受けられる。「住宅ローン控除の期間は、繰上げ返済しない方が良いと銀行に言われた」と相談にくる人がいるが、それは間違いだ。住宅ローンは、複利で借りたお金が増えていく、いわばマイナスの資産運用だ。しかも借入れ期間が長ければ、長いほど返済額も多くなる。複利の効果は5年目くらいから徐々に増えていくので住宅ローン控除の期間に繰上げ返済する方が総返済額は減らせる。

住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の1%が還付される制度だ。ざっくりと計算してみよう。4000万円のローンで金利は0.5%毎月10万3,834円返済の場合、1年目の残高は、3,895万1,586円。住宅ローン控除で戻ってくる金額は38万9,515円。100万円の繰上げ返済をした場合は、3,795万1,586円の残高でで税金の還付は、37万1,586円だから1万円しか変わらない。ところが総返済額は、17万6,516円も減らせるのだ! 

お金を貸す銀行としては、早めに繰上げ返済をされると元本部分が減ってしまうので「住宅ローン控除の期間は繰上げ返済しない方がよい」と、言っているに過ぎない。さらに都心にお住まいで、6000万円や7000万円の高額なローンを組んでいるのならば、繰上げ返済しても住宅ローン控除の還付金に影響は、まったくない。住宅ローン控除の対象には上限があるからだ。一般物件で4000万円、長期優良住宅などで5000万円と定められているのだから、この上限額を割り込むほど、つまり2000万円から3000万円以上の繰上げ返済でなければ住宅ローン控除額に影響はない。

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その3.積立投資をしていない。

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住宅ローンのマイナスの複利効果は長いのにプラスの運用の複利効果を長く取る人は少ない。photo:akasuu-istock

最後に「30代~40代で積立投資をしていない」ことも間違った習慣だ。効率よくお金を増やしたいと考えるなら、30代~40代にしっかりとお金を貯める必要がある。少額の積立投資の成果が出るのは5〜10年後。ライフイベントが重なる40代前に増やせると、その後のライフイベントの費用がラクになる。そのためには、30代~40代のときのお金の管理で将来の家計が大きく変わる。もちろん、50代以降の人が間に合わないということではないが、金銭的な不安から早く抜け出すには、30代~40代をどう過ごすのかが重要だ。この頃にしっかりとお金を貯められると、複利効果を十分に享受できるからだ。

積立投資でお金を増やすには、少なくとも5年できれば10年という時間が必要だ。つまり5年から10年は「使えないお金」になるので、ライフイベントが増える頃までには、ある程度の資産に育っている必要があるのだ。30代に増やしたお金で子どもの教育費がまかなえれば、元本は残る。預貯金であれば使ってなくなってしまう金額が確保できるのだ。たとえば、500万円を貯めて、10年後1000万円に増やせていたら? その増やした500万円を教育費で使ってしまっても、500万円は残る。預貯金で500万円貯めたとしても、500万円を使ってしまったら、お金は残らない。この差は大きい。

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もちろん50代でも60代から使うお金を増やすことができる。なので、50代でも遅いということはないのだが長ければ長いほど複利の効果は、加速する。例えば、毎月1万円を30年間積立しているAさんと、毎月6万円を5年間積立てしているBさんを比較してみよう。

細く長く積立しているAさんと、太く短く積立しているBさんの違いはあるが自分の懐から出した元本は、どちらも360万円だ。物価の水準が変わらず、運用益も付かなければ2人の資産額は、同じ360万円とかわらない。ところが、ふたりとも平均で1%の利回りで増やせたと仮定するとAさんの積立投資は30年後、約420万円になるが、Bさんは、約369万円だ。運用益がたった1%でも、細く長く積立しているAさんは、51万円多くお金が増えるのだ。30代~40代で積立投資をはじめていないと大きく差がひらくことに、ご理解いただけただろうか。

川畑明美

ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。https://www.akemikawabata.com

text: Akemi Kawabata

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