シュルレアリスムな写真が気になる! 今月の展覧会4選。
Culture 2021.08.21
思い込みや固定観念を変えてくれるアート。実験的な写真作品や、小説家と現代美術のコラボレーション、沖縄を捉え直す個展や劇場空間での新たな試みなど、今月気になる展覧会をピックアップ!
好奇心を惹きつける、滑稽で崇高なイメージ。
『The Absurd and The Sublime ギイ ブルダン展』
1928年にパリで生まれ、画家として活動する中、マン・レイとの出会いによってシュルレアリスムの影響を受け、40年代後半から写真を撮り始めたギイ・ブルダン。独自のストーリーテリングが注目を集め、「ヴォーグ」などのファッション誌に写真が掲載されるほか、シャネルをはじめとするブランドの広告も手がけた。本展では、ヒッチコック映画に魅せられ、滑稽と崇高の合間を弄ぶような意外性を兼ね備えつつ、緻密に構成されたその作品の創造プロセスを例示する。アイコニックな作品に加え、これまで出展されたことのないオリジナルプリントも展示。モノクロのヴィンテージ写真から初期の実験と独特のスタイルの進化を見ることができる。
会期:9/8~10/24
シャネル・ネクサス・ホール(東京・銀座)
営)11:00~19:00
無休
入場無料
●問い合わせ先:
tel:03-6386-3071
https://nexushall.chanel.com
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未来観を炙り出す言語と視覚の共振。
『村田沙耶香のユートピア_ “正常” の構造と暴力
ダイアローグ デヴィッド・シュリグリー≡金氏徹平』
小説家・村田沙耶香と現代美術作家との対話により、村田独特の言語世界との共振を試みる企画展。英国からは、日常の場面を軽妙に描写したドローイングをはじめ、アニメーション、立体など多様な手法で現代社会の一面を照射する作品で高く評価される、デヴィッド・シュリグリーを迎える。日本からは、フィギュアや雑貨、日用品などのオブジェクトをコラージュした立体作品や舞台美術で知られ、村田の芥川賞受賞作『コンビニ人間』(文藝春秋刊)の書籍カバーを手がけた金氏徹平が、「ユートピア」と「ディストピア」の両極を持つ現代人の未来観を問いかけ、 村田の小説の中で言及される「正常」に潜む社会的暴力性や抑圧を浮かび上がらせていく。
ダイアローグ デヴィッド・シュリグリー≡金氏徹平』
会期:開催中~10/17
GYRE GALLERY( 東京・表参道)
営)11:00 ~20:00
不定休
入場無料
●問い合わせ先:
tel:03-5771-8808
https://gyre-omotesando.com/gallery
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沖縄の風景を新たな視点で見る枠組み。
『山城知佳子 リフレーミング』
2000年代から精力的に作家活動を続ける山城知佳子の公立美術館での初個展。生まれ育った沖縄の歴史や地政学的状況と自身との関係に向き合い、見過ごされてきた魂と肉体の声を伝える作品は、国内外で高く評価されてきた。本展では、初公開の最新作を過去の代表作と組み合わせて有機的に配置することで、相互に共鳴する主題やモチーフの連なりを回遊しながら巡る構成となる。ダンサーの川口隆夫と砂連尾理、俳優の尚玄が重要な役を演じる最新作のタイトル「リフレーミング」とは、物事を見る枠組みを変えて捉え直すこと。写真と映像によって故郷の風景を新たな視点で見つめていく、山城の創作に通底する姿勢を象徴する作品世界に期待したい。
会期:開催中~10/10
東京都写真美術館(東京・恵比寿)
営)10:00~18:00
休)月、9/21 ※8/30、9/20は開館
料)一般¥700
●問い合わせ先:
tel:03-3280-0099
https://topmuseum.jp
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日常の事物に命を吹き込む映像世界。
KAAT EXHIBITION2021『志村信裕展|游動』
劇場空間と現代美術の融合による、新しい表現を展開する企画展のシリーズ6回目。志村信裕は、古書や水面、家具、リボンなど、身近なものに映像を投影。日常では動くことのない物体に命が宿り、その思いもよらない光景が観る人に情動をもたらし、記憶を呼び覚ます独自の作品世界を制作してきた。本展では「游動」と題し、水・光・月をモチーフとした新作映像インスタレーションを発表。水の中の浮遊感や風に揺らめく木々の漂いに「游/遊」と「動」が生まれ、日々游動する日常の事物と、私たちが交感する様子が鮮やかに映し出される。できるだけ無防備な心で構えずに身体を預け、静かに湧き出る心象風景を網膜で受け止めたい。
会期:9/9 ~ 10/8
KAAT(神奈川・横浜)
営)11:00 ~18:00
休)月、9/21
料)一般¥800
●問い合わせ先:
tel:045-633-6500
www.kaat.jp
新型コロナウイルス感染症の影響により、開催時期および開館時間が変更となる場合があります。最新情報は各展覧会のHPをご確認ください。
*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi