京都に根付く、日常に宿る美学を学ぼう。

Culture 2021.08.25

案内人
永松仁美|Hitomi Nagamatsu

京都生まれ京都育ち。西洋アンティークと現代作家のうつわを扱う昂 KYOTO店主。抜群の審美眼とセンスを生かし、飲食店やホテル、イベントのコーディネート、雑誌の連載などを手がける。“お誂え”をテーマに活動中。
http://koukyoto.com

一. 雅な風呂敷を日常使い。

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市松風呂敷 中(約70×70cm)¥38,500

届けものをする時や荷物が増えた時、またはバッグの目隠しに。一枚あると重宝する風呂敷は、呉服屋が作る丹後ちりめんのものを。ふっくらした手触りに粋な配色は、持っているだけでうれしくなる雅さ。

「ゑり萬さんでは要望に合わせて棚から商品を出してくださいます。畳にぱっと色が広がる瞬間は感動もの。リッチで可愛い京都を探しに気軽に訪れてほしい」と永松。市松模様なら包み方で色の出方が変わって、より楽しい。

ゑり萬
tel:075-525-0529
Instagram:@eriman_nawate

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二. 料理のベースは、自分で引いたお出汁。

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京都の食文化を支えるお出汁。永松も、毎朝通りに漂うお出汁の香りを嗅いで育ち、日常に染み付いているという。

「家でも、ほぼ毎朝お出汁は引きます。お供えもののお下がりとして鰹節をいただいたり、料理屋さんから進物のお返しに昆布をいただくことも多いです」

料理に合わせて濃い目に引いたり、干し椎茸を加えるなど、アレンジも自在に。

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三. 職人や作家もので“お誂え”。

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佃眞吾の箸箱、浅井庸佑の箸置き、水野悠祐の木製スプーン/以上私物

長年で磨き上げられた技術や見識を備える職人、作家が粛々と商うこの街には“お誂え”という贅沢が生活の中にある。

「直接プロに相談できる距離感、すぐ形にしてもらえるスピード感がありがたい。作家ものは待つこともあるけど、その時間も愛おしい。オリジナルの道具は日々に寄り添い、生活を豊かに彩ります」

佃眞吾に依頼した箸箱は、食事中に席を立たなくていいよう、家族の箸や箸置き、小さなカトラリーを美しく収納できる。

昂 KYOTO
tel:075-525-0805
http://koukyoto.com

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四. “みたて”の心で暮らしを彩る。

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茶の湯発祥の“みたて”とは、本来あるべき姿とは異なる見方をすることで、新たな価値を見いだす表現方法。自宅にはいつも、季節の山野草を飾っている。

「竹カゴ、人形の置物、イギリスで見つけたアンティークのトラックなど、なんでも花器として使います。時代も国もミックスコーディネートするのが楽しい」

錆びたオイルランプの台に、秋草が描かれた古伊万里のお猪口をのせて、野菊をひと挿し。可憐な秋の景色が完成。

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五. 和菓子で季節を満喫する。

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山本隆博の漆器、辻村塊の引き出し黒の湯呑、金森正起の鉄茶托、明治時代の銀製ポット、染司よしおかの散華コースター、後藤政弘の小皿、佃眞吾の漆盆、辻村史朗の徳利/以上私物 着せ綿¥450/鍵善良房

新春は花びら餅、雛祭りはひちぎり、6月は水無月と、歳時ごとの和菓子で移りゆく季節を知る京都。永松はそんなお菓子を主役にうつわを整え、ひとりでもお茶の時間を豊かに過ごしている。

「重陽の節句にちなんだ菊型の『着せ綿』は本来ピンクですが、黄色にしていただきました。こういう遊びも京都ならでは。お茶は幼い頃から慣れ親しんだ、一保堂さんのスモーキーないり番茶と」

鍵善良房
tel:075-561-1818
www.kagizen.co.jp

一保堂茶舗
tel:075-211-4018
www.ippodo-tea.co.jp

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六. お礼状は、手書きでしたためる。

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黒谷和紙の枠付き便箋(30枚入り)¥1,540、黒谷和紙の封筒(10枚入り)¥1,155、黒谷和紙の無地便箋(30枚入り)¥2,310/以上紙司柿本 5枚綴りのハガキ¥330/書芸サロン 賛交 染司よしおか製の葉しおり各¥1,100/Zplus

ご縁や繋がり、感謝の念を大切にするこの街では、贈ったり贈られたりも日常。そんな時にさらさらと手書きのメッセージや手紙を添えるのが、京都人の心得。

「お礼状や進物に添える手紙などはいつも手書きでしたためます。使うのは紙専門店や書道具のお店で求めた道具。特に京都の黒谷和紙を選んでいます」

麗筆で絵心もある永松。自ら絵を描き、お香を忍ばせて作った文香や、麻のしおりなどを添えて送ることも。

紙司柿本
tel:075-211-3481
www.kamiji-kakimoto.jp

書芸サロン 賛交
tel:075-222-0390
https://shoga-sankou.co.jp

Zplus
tel:075-708-7311
@kyoto.zplus

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七. 気軽に通える割烹がある。

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「牛肉と九条葱の白味噌鍋」¥3,000、「鱧の炙り」¥1,800、日本酒¥800〜

料亭から居酒屋まで京都の和食店は数知れず。重宝するのは季節の料理をアラカルトで注文できるカウンター割烹の店。

「旬の食材をどう料理されるのか、料理人のカラーがそれぞれあって、このお店はこれ、というのがあります。この春開店された割烹しなとみさんは、控えめで、料理に徹されている姿勢が美しいです」

お酒とアテだけ楽しんだり、定食仕立てにしたり。料理人との会話を楽しみながら、気分で使い分けられるのも魅力。

割烹しなとみ
tel:075-366-4736
https://shinatomi.com

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八. 鴨川や京都御所に“とっておき”の場所がある。

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京都の文化や暮らしと切り離せない御所や鴨川は京都人には特別な場所。散歩やピクニックなど、思い思いの時を過ごす。そしてそれぞれに、あの橋の下、あの小川の側などとっておきの場所がある。

「空が開けて気持ちいい鴨川は、荒神橋の袂がお気に入り。御所は奥まったところにあるテーブルとベンチで、ひとりお茶会をすることも。どちらも街中なのに、豊かな自然を感じられる憩いの場所」

*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋

photography: Yoshiki Okamoto editing: Natsuko Konagaya

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