王族も通う「ヒッピーなホグワーツ」、UWCAって?
Culture 2021.09.16
8月末日、スペインのレオノール王女とオランダのアレクシア王女は王室を離れ、ウェールズ地方にあるユナイテッド・ワールド・カレッジ・オブ・アトランティックに向かった。世界のエリートたちから高い評価を得る名門ボーディングスクールを紹介する。
ウェールズ地方の崖の上にある、威厳あるユナイテッド・ワールド・カレッジ・オブ・アトランティック。photo:Abaca
夏のバカンスが終わり、貴族にも平民にも等しく新学年が訪れた。今年、ウェールズ地方にある有名校ユナイテッド・ワールド・カレッジ・オブ・アトランティック(UWCA、通称アトランティック・カレッジ)は、二人のプリンセスを迎えた。オランダのアレクシア王女(16歳)とスペインのレオノール王女(15歳)だ。
この少女たちは、国際バカロレアを取得するため、2年間ここで学ぶ。家族は空港まで彼女たちを見送り、その瞬間を写真におさめてSNSに投稿した。スペイン国王のフェリペ6世とレティシア王妃、ソフィア王女は、レオノール王女に別れを告げた。オランダのアレクシア王女は父親のウィレム=アレクサンダー国王と一緒にカメラの前でほほ笑んだ
Prinses Alexia vertrekt naar het United World College of the Atlantic in Wales. De komende twee jaar gaat zij op voor haar Internationaal Baccalaureaat. Prinses Alexia rondde afgelopen schooljaar de vierde klas van het Christelijk Gymnasium Sorghvliet af. https://t.co/ltFScVdO3z pic.twitter.com/qn09IFjRo7
— Koninklijk Huis (@koninklijkhuis) August 30, 2021
アトランティック・カレッジに発つオランダのアレクシア王女。
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「ヒッピーなホグワーツ」
毎年、アトランティック・カレッジは150カ国以上から集まった15歳から19歳の学生たちを受け入れている。キャンパスはヴェール・オブ・グラモーガンにある12世紀に建てられた巨大な建物セント・ドーナッツ城内にある。1962年に設立されたこの学校は、それぞれ異なる国に18校を有するユナイテッド・ワールド・カレッジ系列の最初の学校であり、有名な国際バカロレアを交付している。
英語系のメディアからは「ヒッピーなホグワーツ」というニックネームで呼ばれている有名なボーディングスクールは、J・K・ローリングが創造した『ハリー・ポッター』シリーズの魔法魔術学校と比較されることが多い。ただ、こちらの方がより「クールなヒッピー」と言えるかもしれない。数学や語学といった古典的な科目に加え、太極拳やチベット文学の授業もプログラムに含まれているからだ。
また学校のウェブサイトによると、アトランティック・カレッジは「教育を国際理解を促進する力とする」ことを目的としており、教室内で行われる授業と同様に、非営利活動や市民活動にも力を注いでいる。学生は「世界にポジティブな変化をもたらす」ことを学び、時代に即した教育を受けるためには年間67,000ユーロ(約870万円)の学費が必要とされている。一部の希望者には奨学金も用意されている。
La Princesa Leonor pone rumbo al UWC atlantic College pic.twitter.com/4ppc0T0oiA
— Núria Tiburcio (@nuriatiburcio) August 30, 2021
家族に別れを告げるスペインのレオノール王女。
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王族・貴族のメルティング・ポット
アトランティック・カレッジが王族のメンバーを受け入れるのは今年が初めてではない。1980年代にはアレクシアの父親であるオランダのウィレム=アレクサンダー国王がこの学校に入学した。ヨルダンのフセイン1世とヌール王妃の末娘のラーイヤ・ビント・アル=フセイン王女や、ちょうど1年前に同校を卒業したベルギーのエリサベート王女も同校の卒業生だ。
同校の学長は、エリザベス女王とヨルダンのヌール王妃が務めており、ネルソン・マンデラも2013年に亡くなるまでこの威厳あるトリオの一員だった。
アトランティック・カレッジは、1934年にスコットランドのゴードンストウン校を設立したドイツ人教育者クルト・ハーンによって創設された。「ヒッピーなホグワーツ」とは違い、ゴードンストウン校は厳しい規律と制裁で知られ、フィリップ王配も在学中にその犠牲となった。息子のチャールズ皇太子も同様で、彼は自分の息子であるウィリアム王子とハリー王子にはこの厳しい教育を避け、ロンドン近郊のイートン校を選んだ。
text : Elise Assibat (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuko Tanaka