シモーン・ロシャの衣装も必見、バレエダンサーの新境地。
Culture 2021.10.14
才能豊かな表現者たちの国境を超えたコラボレーションによって創られたダンス短編映画のプラットフォーム、Films.Dance。このたび公開となった15本の作品のひとつ『SIREN』は、イギリスのロイヤル・バレエ団のプリンシパル、フランチェスカ・ヘイワードによる新しいスタイルのパフォーマンス映像だ。
振り付けはコンテンポラリーダンスで知られるサンフランシスコのアロンゾ・キング・ラインズ・バレエのマイケル・モンゴメリーが担当。フランチェスカがダンサーとして幼い頃から携えてきたふたつの想い、踊りに対する深い愛情と、そこに常に背中合わせにある観客からの視線への意識について表現しているという。
監督はドキュメンタリー映画で定評があり、アテネ映画祭などでの受賞歴も持つジェス・コール。撮影は昨年のロックダウンの最中に行われ、ロイヤル・バレエの本拠地ロイヤル・オペラハウスもロケーションのひとつとして登場する。
さらに注目すべきは、シモーン・ロシャによるコスチュームと、ロビー・スペンサーによるスタイリングだ。前衛的なイソベル・ウォラー・ブリッジの音楽とともにシモーンのロマンティックな衣装とアクセサリーが、フランチェスカの物語をより繊細かつドラマティックに演出している。
フランチェスカはロイヤル・バレエスクールを経て2010年にロイヤル・バレエ団に入団し、2016年に最高位のプリンシパルに昇格した逸材。「くるみ割り人形」のシュガープラムの精や「ロミオ&ジュリエット」のジュリエットなど、ロイヤル・バレエ団での古典作品における名パフォーマンスだけでなく、2020年1月に公開された実写映画版『キャッツ』での白猫ヴィクトリアの熱演でも注目を集めた。今回は与えられた役を演じるのではなく自分自身の内面を深く掘り下げて表現することで、新境地を見せてくれている。
text: Miyuki Sakamoto