"ルールは無視して大胆に着る"のが今季のムード。【2025年春夏トレンド解説|井上エリ編】
Fashion 2025.02.19
Q1. 2025年春夏を振り返り、全体的にどのようなコレクションでしたか?
Q2. 気になるトレンド(スタイル・アイテム・カラー・素材など)は何ですか?
Q3. 特に印象に残ったブランドはありますか?
Q4. 実際に取り入れてみたいスタイリング方法、または欲しいアイテムを教えてください。
Q5. 特に印象に残ったショー(会場セットや音楽、ムードなど)はありますか?
Elie Inoue
井上エリ
パリ在住ファッションライター
@elieinoue
A1. "クワイエットラグジュアリー"に味気なさを感じ始め、「優等生キャラは飽きたから本能を解放しちゃえ」みたいな、フェミニンかつガーリーでリアリティを伴った"ロマンティシズム"が主題となった印象。あえて大胆すぎたり、無秩序で理にかなっていなかったりして、まるでデザイナーから「ルールは無視してあなたの好きなように着飾ればいい」と受容されているような感覚もありました。
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また、どの業界にもAIやテクノロジーの勢力が増す中で、モードはその恩恵をあやかりつつも、"人間を人間たらしめるものは何か"とデザイナーは自問していたように思います。ミラノはそれを職人技術に見いだし、パリは創造性と自由な発想という答えを示していました。
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A2. オーガンジーやレース、メッシュなどのシアーな素材が生み出す軽快さは、見た目だけでなく心まで軽やかにしてくれるうえ、酷暑対策にもなる今季の注目です。それらはフラワーモチーフやフリルなどロマンティックなムードですが、そこにワークウエアやスポーティなアウターなどを合わせた既成概念に囚われない自由なスタイリングが気になります。アイテムでは、継続するミニスカートやバンドゥのほかに、ワイドな膝丈ショーツにも新鮮さがありました。
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A3. ミラノ初日を飾ったフェンディに心を打ち抜かれました。特に1920年代風のフラッパードレスを基盤としたシアーなドレスは、繊細なビーズ刺繍によるアールデコの装飾がクチュールドレスのような豪華さ。それにレッドウィングとのコラボブーツを合わせるミスマッチなスタイリングも素敵。
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あえてテーマを設けず、スタイルも時代も縦横無尽に掛け合わせたプラダも忘れられないコレクションのひとつ。異質な要素が共存する各ルックがユニークで、統一性がない違和感に魅力を感じました。パリではロエベのショーで、音楽に合わせて弾むように動く超軽量なドレスが印象に残っています。シンプルな会場装飾でエンタメ性に頼らず、ルックだけで驚きと感動を与えてくれました。
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A4. プラダとミュウミュウ、ヌメロ ヴェントゥーノで見た、レディライクなドレスの上にスポーティなアウターを合わせるスタイリングにトライしたいです。
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そのために狙っているのは、セシリー・バンセンとザ・ノース・フェイスのコラボアイテム。
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A5. "真実なき時代"をテーマにしたミュウミュウです。各座席に配された2034年の日付の新聞紙には、「終わりなき終わり。未来が過去へと移り変わる」という意味深な言葉が綴られていました。歪んだり捻れたり、違和感のある着こなしに目を奪われ、ラストルックを俳優ウィレム・デフォーが飾るサプライズ。
*「フィガロジャポン」2025年2月号より抜粋
photography: Spotlight, amanaimages