満月の夜は眠れなくなるってホント?

Culture 2021.10.18

体調不良や不眠は、何千年も前から月のせいにされてきた。でもこれって本当に科学的根拠はあるの? それとも迷信? 睡眠の専門家や生物学者に聞いた。

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体調不良や不眠が月のせいって本当? photo : Getty Images

10月20日の夜は、なかなか眠りにつくことができず、モルペウス(*ギリシャ神話の夢の神)を探して、ひっきりなしに寝返りを打ってしまうかもしれない。原因は、カフェインの取りすぎでもストレスでもない。窓の外に目をやると、その原因が見える。満月だ。

これまでにも不眠と満月の因果関係について解明しようと、いくつもの研究が行われてきた。しかし、その多くは体験談やごくわずかなサンプルだけに基づいた偏った実証法であったため、否定されてきた。クリストフ・シュロは、睡眠に関する文献をまとめた論文を発表した睡眠専門の医師だが、「今のところどんな研究も月と睡眠の関係を正式に証明できたものはない」と見る。

ところが、この見方を覆すかのような最新の研究結果が、1月27日付の「Science Advances」誌で発表された。アメリカとアルゼンチンの研究者が「天体の明るさが、私たちの24時間のサイクルを秩序づける概日時計に影響を与えている」という有望な仮説を提唱したのだ。

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入眠の妨げ

この仮説を導き出すため、アメリカのワシントン大学、エール大学、アルゼンチンのクイルメス国立大学の研究者たちが、スマートブレスレット(アクティメーターとも呼ばれる)を使って睡眠サイクルを計測。計測の対象者は、都心と地方、電気のあるところとないところに住む562名。計測がはじまってから数週間後、満月前の3〜5日は対象者の入眠時刻が遅くなっていたということ、そして、一晩あたりの睡眠時間が平均すると46〜58分減ったことが明らかになった。

満月に近づけば、天体の明るさの強さが増していき、人工照明と同じくように人間の睡眠を妨げることになる。「光は、目を閉じていてもまぶたを通過します。すると私たちの体内時計を働かせてしまい、今は昼間だと錯覚せてしまう。その結果、メラトニン(睡眠を促すホルモン)の生成にブレーキがかかり、入眠時刻が遅くなると考えられます」と、時間生物学者クレール・ルコントは説明する。

9月15日、学術誌「Science of the Total Environment」に掲載されたスウェーデンの新しい研究は、この結果を裏付けるように、夜の早い時間に満月を浴びると睡眠が妨げられると報告している。さらに驚くべきなのが、22歳から81歳までの852人の調査対象者のうち、男性だけがこの現象の影響を受けていることだ。この研究を行った神経科学者たちは、プレスリリースの中で、「満月に向かっている時期に睡眠を記録した男性は、月が欠けていく期間に睡眠を記録した男性に比べて、安眠度が低く、入眠後の覚醒時間が長いことがわかりました」と説明。男性の脳は女性の脳よりも光に敏感であると仮定している。

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過敏症、順応、ノセボ効果?

クリストフ・シュロ医師によると、この研究は有望な説ではあるが、この効果はまだ検証されていないという。「満月の光は1ルクス。これは10メートル先のろうそくの光に相当し、非常に弱いものです」と強調する。過敏症の人(音、匂い、光に敏感な人)だけが不眠症を強めているのではないかと考える彼は、こう続ける。「まだどの研究者も、本当に睡眠障害で苦しんでいる人からは統計をとったことがありません」

都市では、雨戸や遮光カーテンを使っている家庭もある。それについてはどう説明するのだろうか。「科学者のチームが提示した最も有力な仮説は、人類の順応機能に関するものです。まだ電気がなかった時代に人間は満月前の月明かりを照明代りに利用していたので、それに順応したというものです」と、時間生物学者のクレール・ルコントは言う。

シュロ医師は、ノセボ効果(*副作用を懸念する気持ちに起因するネガティブな反応)の可能性も否定していない。「月のパワーを信じている人や、カレンダーで月の満ち欠けをチェックしている人は、ノセボ効果のように余計なプレッシャーが加わって、入眠時刻が遅くなっている可能性があります」

もし精神疾患にまでなるような重度の不眠症に苦しんでいるのでく、ただの月過敏症なら心配はない、と睡眠の専門医は続ける。「私たちの体にはホメオスタシス(恒常性)と呼ばれる素晴らしいシステムが備わっており、睡眠負債が数日間蓄積されると、その後、ある瞬間、自動的に眠たくなります」。抵抗することなく、モルペウスの腕の中に身を任せればいいのだ。

*は編集部注。
*2021年3月に公開した記事を加筆、再編集しています。

texte : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr), traduction : Aie Hori, Madame Figaro.jp

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