「セックス・エデュケーション」原作者、ローリー・ナンにインタビュー。

Culture 2021.10.21

9月中旬からNetflixで配信中の「セックス・エデュケーション」シーズン3が、またしても大評判! 配信開始から数週間後、カンヌを訪れた原作者のローリー・ナンにダイバーシティの尊重への取り組みをたたえて賞が贈られた。

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カンヌ国際ドラマ祭に出席した『セックス・エデュケーション』生みの親のローリー・ナン。(2021年10月8日)photo:Getty Images

飛行機に乗ったのは2年ぶりだった。不安と興奮が入り交じる気持ちを抱えて、10月8日、カンヌ国際ドラマ祭「カンヌ・シリーズ」に出席するために、ローリー・ナンはカンヌに飛んだ。

シリーズ第3作目の配信が9月中旬に開始されたドラマ「セックス・エデュケーション」の生みの親。コンビニ・コミットメント・アワードを授与された彼女は、テレビ業界でのダイバーシティの促進を訴えるスピーチを行った。「インクルーシブなキャスティングが、ドラマの世界でますます増えることを願います。あらゆる層、性的指向、アイデンティティの人々が、画面を通して見ているものに自分を重ねられるようにならなければいけません」

 

 

2007~2016年の間に短編ドラマを3作発表し、現在は複数の脚本家を抱えるチームを率いる36歳のプロデューサーである彼女は、初めて手がけたドラマシリーズ「セックス・エデュケーション」がここまでの熱狂を巻き起こすことになろうとは想像もしていなかった。

2019年にNetflixから配信が開始された第1シーズンの視聴数は4000万を超えた。3年後、セックス博士に扮(ふん)し、性に悩む同級生たちを救うために駆け回る高校生、オーティス・ミルバーンを次々と襲う事件の展開を、ファンたちは固唾(かたず)を飲んで見守っている。うれしいことに、ローリー・ナンはすでに新シーズンの製作契約にサイン済みだという。そんな彼女に、フランス「Madame Figaro」がインタビューした。

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期待に違わぬ成功

――「セックス・エデュケーション」シーズン3は、これまでのシーズンと同様に大きな成功を博しています。この人気をどう説明されますか?

視聴者がこのドラマに特別なものを感じ、科学反応を起こしたのだと思います。私は天にも昇る気持ち、信じられない思いです。私は普段、執筆というコクーンのなかで生きています。カンヌ・シリーズへの出席は私にとって、この小さなコクーンから出て、人々が本当にドラマを見てくれていること、ドラマの登場人物が私の頭の中だけに存在しているのではないことを実感させてくれました。

――「セックス・エデュケーション」で一番伝えたいメッセージは?

「セックス・エデュケーション」の中心にあるのは、誠実さとコミュニケーションです。ドラマを通して伝えたいメッセージは次のことです。もしあなたが周りにあまり馴染めないと感じていて、なかなか友達ができなくても、心配しないで。いつか、あなたにふさわしい人たちに出会えるから。決して諦めてはいけない。

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ジーンとルビー

――シーズン3の配信以来、登場人物のルビーがドラマのファンの間で大人気です。このブームをどう説明しますか?

登場人物のルビーにとっても、演じているミミ・キーンにとってもうれしいことです。このドラマでの彼女はとても素晴らしい。私はこのドラマを通して、ティーンエージャーの心理的傾向を探りたいと考えてきました。視聴者はルビーがただの意地悪な女の子だと思っていたのに、シーズン3で、彼女の人格のより傷つきやすい面が明らかになったから、このような反応になったのだと思います。

 

 

――『セックス・エデュケーション』でお気に入りの登場人物はいますか?

私にとっては全員がとても愛しい存在です。でも、ジリアン・アンダーソンが演じるオーティスの母親のジーン・ミルバーンの役どころを書くのは好きですね。彼女は最高。とても興味深い面を持った人物ですから。矛盾に満ちた女性です。脚本を書くのがとても楽しかった。それに、こんな素晴らしい女優がその役を演じてくれるなんて、本当にうれしいです。

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エイミーとバスのシーン

――ドラマでは、とくにメイヴ・ワイリーとエイミー・ギブスの友情を通して、女性同士の友情の大切さが強調されています。なぜこのテーマに触れることが重要だったのですか?

女性同士の友情はこのドラマのなかで繰り返し描いてきたテーマです。これまでのシーズンを通して、登場人物たちが本当に団結した瞬間を私たちは何度も目撃してきました。いま世界は恐ろしい状況にあると思います。だからこそ、このフィクションの世界で、登場人物たちがそれぞれの違いを脇に置いて、力を合わせて、お互いに支え合うことができたらいいと思うのです。

――シーズン2で、エイミーがバスのなかで性的暴行を受けます。この難しいシーンの撮影はどのように行われたのですか?

シーズン2のエイミーの物語は個人的に感慨深いものです。私の身に実際に起きた出来事がベースになっていますから。この話をどう展開させたいか私にはずっと前からわかっていました。エイミーは最終的に、残念ながら多くの女性たちが自分と同じ状況を経験しているということに気づきます。私は、ドラマに登場する女性たち全員に、力を合わせて彼女を支援してほしいと考えました。俳優たちはとても共感してくれました。このシーンの撮影を通して私たちは一体感を経験しました。

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”女の子が自分の身体について知っていることはほんのわずか”

――ドラマが特に訴えているのは、自分自身を受け入れることです。シーズン3ではエイミーが女性の性器にはさまざまな形が存在することを知ります。

人間の身体にはさまざまなタイプがあり、それぞれ大きさも形も違っている。このことを、性教育でこれまで以上に強調するべきだと思います。思春期の頃から女の子たちにこうした話をすることはとても重要です。女の子が自分の身体について知っていることはほんのわずかです。それは、理解するための道具を与えられていないからです。

――「セックス・エデュケーション」はメンタルヘルスの重要性に光を当てています。なぜこのテーマに取り組むことが大切だと思われたのですか?

シリーズではセラピーや、自己啓発や、コミュニケーションについて何度も取り上げています。ドラマを作るに当たって、こうしたテーマに取り組まないことは考えられませんでした。セクシャリティや恋愛に関する問題を取り上げるのと変わりません。

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性教育

――どうすれば中学校や高校での性教育を改善できますか?

状況は徐々に進展していると思います。教育機関では生徒たちがLGBTQ+について学ぶ機会を増やしつつありますし、女性の性教育の点でも進歩しています。でもまだ十分とは言えないし、世界中に行き渡っているとも言えません。性教育の改善のために、今後も活動を続けなくては。子どもたちの情報源がウェブサイトやポルノ映画ばかりにならないよう、親たちもこの闘いに参加するべきです。

――学校ではどんなテーマを扱ってもらいたかったですか?

学校で同意という概念について教えてもらったことは一度もありません。私はこの言葉の意味さえわかっていなかったと思います。でもこれは意味をきちんと理解しなければならない最も重要な概念のひとつです。これは年少の子どもたちに限った話ではありません。十代の頃の自分がかわいそうです。この件について私は何も知りませんでした。ですから大人になって自分で調べなければなりませんでした。

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“トランスセクシャルの人たちに焦点を当てたい”

――「スキンズ」より「セックス・エデュケーション」を見ながら成長したかったとツイートするインターネットユーザーもいます。この意見には賛成ですか?

個人的には「スキンズ」は大好きでした。私にとってとても重要なドラマです。ティーン時代に放映を見ていたわけではないけれど、本当に楽しみました。「セックス・エデュケーション」も「スキンズ」もどちらも素晴らしいドラマで、どちらにも 正当性があります。ほかのティーンドラマと競い合いたくはありません。みなそれぞれに同じ議論に貢献しているのです。

――シーズン3では、ハンディキャップのある人たちの性という、いまだタブー視されているテーマに取り組んでいます。今後はほかにどんなテーマを扱ってみたいですか?

いまちょうどシーズン4の脚本を執筆しているところです。もちろん、こうした登場人物たちとより多くの時間を過ごしたいと思っています。彼らの物語や彼らの人格についてより一層掘り下げてみたい。今度はトランスセクシャルの人たちにさらに焦点を当てたいと思っています。現在、トランスセクシャルについての議論はかなり政治化していて、慎重を要するテーマです。このドラマで性の多様性を守ってきたのは重要なことです。シーズン3でもノンバイナリーの人物を2人登場させています。2人とも素晴らしいです。

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“グレイズ・アナトミー”と“ザ・ホワイト・ロータス”

――最近はまったドラマシリーズは?

「ザ・ホワイト・ロータス」を一気見してしまいました。登場人物がみんな面白かった。どの役もとてもよく書かれていました。おかしくて同時に恐ろしいシリーズです。病みつきになります。

――とくに好きなドラマの登場人物はいますか?

「グレイズ・アナトミー」でサンドラ・オーが演じるクリスティーナ・ヤンが大好き。このシリーズの初期のシーズンは何度も観ました。とても励まされるドラマです。クリスティーナとメレディス・グレイの友情がとても気に入っています。クリスティーナが実際に存在して、私の親友になってくれたらいいのにと思います。

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警鐘

――ご自分のインスタグラムで、男性に向けてレイプ文化という問題を提起するプラットフォームを大きく取り上げています。この件で行動を起こすために、私たちにはどんなことができますか?

これは難しいテーマです。男性はレイプ文化に関する議論にそろそろ責任を持って加わるべきです。MeToo運動以前から、とっくにこの問題を話題にしていましたから、女性はこの件についてよく知っています。男性にとっては、MeToo運動がまさに警鐘となったのです。いまや男性はほかの男性に対して、ストップをかけたり、女性蔑視的な態度や冗談に自分は賛同しない、不愉快だと告げる勇気を持たなければなりません。実際に行うのはとても難しいですし、男性たちにそうしてほしいと言うのも簡単ではありませんが、物事を変えるには必要なことだと思います。

text:Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)

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