コムアイと水原希子、ジェンダー関係なく生理を語ろう。

11月3日（祝）放送予定のNHKの特集ドラマ「雨の日」（コムアイ主演）と、トークドキュメンタリー「ハロー！生理　世界で聞いた５つのストーリー」（水原希子出演）は、パーソナルなもの、隠すべきものとされる生理をもっと気軽にオープンに話すことが、女性同士はもちろん男性も含めた相互理解や生理への意識を変えるきっかけになるのではと、NHKの女性制作チームが企画した新感覚の2本立て番組だ。筆者は、1年前に番組のためのリサーチ依頼を受けて、ロサンゼルスでの取材に関わった。

ドラマ「雨の日」は、コムアイ演じるグラビア雑誌の女性カメラマン・ヒカリと、女優になる夢を抱え、初めて巻頭に掲載される水着のグラビアに挑む芹澤あおい（工藤遥）が登場。キャリアをかけた撮影当日に、それぞれが悩ましいPMSと突然の生理に直面する。周りには言えない、言葉にしても男女スタッフともに理解は得られずの状況を、ふたりがどう乗り越えるかというストーリーだ。コムアイ演じるヒカリが大胆な賭けに出る。

コムアイは、「ジェンダー関係なく、泣きながら笑いながら、この際思ってること打ち明けて、歩み寄ろうよ。と明るい気持ちになれる作品です」とコメントを寄せている。

そして、ドラマの後に放送される20分のトークドキュメンタリー番組「ハロー！生理　世界で聞いた５つのストーリー」では、水原希子が司会となり、世界5カ国からリアルな生理トークを紹介する。ロサンゼルスで私の取材に応じてくれたのは20代の3人組。それぞれ個性的な魅力あふれる彼女たちは、時に笑いながら、時に困難な状況に共感しながら、育った家族や症状も異なる自らの生理体験をストレートに語ってくれている。

「これまで、男の人には生理の話をしてもわかってもらえないのでは？って思っていたけれど、この番組には性別や世代を超えてフランクに、そしてほほえましく生理について対話するチャーミングな人たちが登場します。日本でもさらっと『今日生理なんだ』って言えるようになったらどんなに楽かなと思いました」と水原希子。ネットフリックス「クィア・アイ in Japan」（2019年）ではゲイの5人組を相手に愉快な展開をサポートした彼女が、リアルな生理トークをどうナビゲートするかも見どころだ。

おじいちゃんと語るブラジルのティーン。フランスからは初潮前の年ごろのフランスの少女ふたり、台湾の夫婦、日本の女子大生、そしてロサンゼルスからは3人の女性が登場する。

番組を担当するNHK柿沼緑ディレクターに話を聞いた。「海外に一歩飛び出してみると、生理をタブー視しない文化での会話はまるで天気の話をしているかのごとく軽やかでした。老若男女が垣根なく生理について話していて、あははと笑えて、ちょっと心に沁みる。人間模様がギュっとつまった対話がたくさんありました。生理について話すことは、みんなが心地よくいきるための術なんですね」

番組のリサーチの際、まず思い出したのは、ロサンゼルスで暮らしを始めてまもない頃の記憶。モデルでミュージシャンの20代の男友だちと買い物に出かけた時、彼女に頼まれたと、スーパーの棚で「これだったかな」と彼はタンポンを選び、アイスクリームと一緒にカゴに入れた。レジを担当していた男性も臆することなく、タンポンの箱を精算していたことにショックを受けた。日本のドラッグストアなどでは、購入した生理ナプキンやタンポンを中身が見えないように紙袋に入れて渡される習慣とのギャップ。

しかし、ロサンゼルスでは、父親、兄弟、男友だちとも生理が普通のこととして話題になり、生理前の女性が感情的になることや生理痛が苦しいことなどを理解して、支えてくれる文化なのだ。とはいえ、アメリカでも生理に関する職場での対応や生理用品への課税の問題、月経困難症が原因の精神障害なども多い。両番組ともに英語版も制作されており、11月13日中に全世界での放送が予定されているのは、文化の違いこそあれ、生理の問題はグローバルな課題として認識されているからだ。

女性が世界の半分を占めているなら、女性が生理にオープンに向き合い、女性を悩ます生理を男性も理解することで、恋愛も仕事も家庭ももっと上手くいくきっかけになるのではと、番組に関わってきて強く実感する。生理にこれまでにないフレッシュなアプローチをしたドラマとトーク番組が、ジェンダーや年齢を問わず、既成概念をリセットするきっかけになりますように。

憂鬱になりがちな雨の日も、滴が輝いて見えることもある。ハートフルな番組は、生理だって誰かに理解され、支えられ、お互いに繋がるきっかけになりうると思う。