道後温泉で、アートとともにいい湯だな!
Culture 2021.11.08
愛媛県松山市の道後温泉では、道後温泉本館が改築120周年の大還暦を迎えた2014年以降、温泉という地域資源にアートを取り入れたイベントを開催し、道後温泉の魅力を発信してきた。そしてこの度、24年3月末までの3年間、新しい活性化事業「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」を実施することが決定。すでに、道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)の中庭「ハダカヒロバ」では、写真家・映画監督の蜷川実花によるインスタレーションが始まったほか、道後温泉本館の東側広場「振鷺亭(しんろてい)」では、松山市在住のテクニカルイラストレーター、隅川雄二が道後温泉の歴史絵巻をテーマにした作品『道後温泉五如(ごしき)団子』を展示中。
道後温泉別館 飛鳥乃湯泉中庭の「ハダカヒロバ」に、蜷川実花による約230点の花の写真を設置。彼女にとって初となる、屋外の床面にも写真を用いた大規模なインスタレーションだ。
©︎mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery / dogo2021
「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」のコンセプトは、これまで多くの芸術家が創造力を羽ばたかせ、熱を放出してきた道後温泉を再び「アート×人×温泉」の熱量で、道後温泉を、日本を、世界を温めたいという思いを込めた「stay hot, stay creative」。日本最古の温泉といわれる道後温泉のシンボル・道後温泉本館は、24年12月末の完了に向け、営業しながら保存修理工事を行なっているのは前期保存修理期間が終了し、現在は後期保存修理期間に移行。修理が完了した又新殿(ゆうしんでん)・霊の湯(たまのゆ)棟の「霊の湯」に入浴できる。12月下旬に登場する素屋根テント膜は、愛媛県宇和島市を拠点に創作活動を行う現代美術家・大竹伸朗によるインスタレーションで、プロジェクト中は道後温泉の新しいシンボルとなり、歴史的建造物と現代アートの融合を楽しめる。また、来年度にはアートフェスティバル『道後オンセナート2022』も開催予定。伝統を受け継ぎながらも進化していく道後温泉からますます目が離せない!
蜷川実花のインスタレーションは、2種類のオリジナル提灯で広場を装飾し、昼夜で異なる雰囲気を楽しめる。「またこうして、道後温泉と取り組むことができて嬉しいです。今回は、屋外に作品を展示するということで、花の写真の広場を作ってみました。私自身、花の持つ力に支えられてきましたし、ひどく落ち込んでしまうようなことに直面した時に花を撮ることで、己を保てているな、と感じることが何度もありました。先の見えない、不安なことも多い世の中ですが、見てくれた人の背中を少しでも押すことができたら、こんなに嬉しいことはありません」と蜷川もコメントを寄せる。
©︎mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery / dogo2021
2024年2月29日まで、本館東側広場 振鷺亭に展示される隅川雄二の『令和乃道後温泉鳥瞰絵図(れいわのどうごおんせんちょうかんえず)』。この作品は、本館の1~3階の保存工事完了後の完成予想図を描いたもの。のぞき穴から見ると、すべての絵が重なって1枚の絵になる立体絵図。隅川が製作した『現代版・道後温泉絵図』がモチーフになっている。
©︎yuji sumikawa / dogo2021
text: Natsuko Kadokura