「彼女をセクシーだとは思わない」、元ワンダーウーマンが語る。
Culture 2021.11.17
1981年にDCコミックスによって生み出されたキャラクターの80周年を機に、スーパーヒロインの中でも最もフェミニンなキャラクターを最初に演じたアメリカ人女優が、ポップカルチャーや自分自身に与えた影響について振り返った。
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彼女のシルエットは永遠の存在だ。星が描かれた青いショートパンツ、ティアラ、ゴールドのアクセサリー……。1975年、女優のリンダ・カーターは、コミック本のキャラクターであるワンダーウーマンをテレビシリーズで演じて世界的な成功を収め、その名をとどろかせた。
他のスーパーヒーローと同様に、アマゾネスの王女は、人間界に溶け込むため、ダイアナ・プリンスという市民に扮(ふん)し、スーパーパワーと武器(有名な「真実の投げ縄」を含む:その投げ縄の中に閉じ込められた人は暗い秘密を明かさなければならない)を持っている。彼女の原動力は、正義と公正さを切に願う気持ちだ。これらの資質と超人的な強さを兼ね備えたワンダーウーマンは、ポップカルチャーにおける最初の偉大な女性ヒロインの一人であり、フェミニストの一人でもある。
24歳でこのシリーズに出演する以前、アメリカ人のリンダ・カーターは歌手としてのキャリアをスタートさせ、1972年にはミス・アメリカに選ばれた。その後、音楽活動を再開し、現在70歳の彼女は、10月29日にニューアルバムをリリースしている。
2010年代になって彼女のキャラクターはイスラエル人のガル・ガドットに引き継がれたが、リンダ・カーターは、今年80周年を迎えたスーパーヒロインの忘れがたい存在である。
1941年にワンダーウーマンを誕生させたコミックの出版社であるDCコミックスは、ワンダーウーマン80周年を機に、カンヌ映画祭でのマスタークラスやDVDボックスセットの発売など、彼女に関連したイベントを開催した。
映画『ワンダーウーマン1984』の予告編 動画
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当時の人物像
——1975年からワンダーウーマンを演じておられました。このシリーズがここまで成功すると思っていましたか?
リンダ・カーター:ええ、私が演じていたのはダイアナ・プリンス。このシリーズはきっと成功するだろうと思いました。なぜなら、このキャラクターは「彼女のようになりたい」「彼女の親友になりたい」と思わせるから。そして、彼女はとても強い女性でしたから。
——彼女はフェミニスト的なキャラクターでした。あなたもそうでしたか?
もちろんですとも! このシリーズが撮影された時代を忘れてはなりません。私は1970年代に育った若い女性だった。グロリア・スタイネム(フェミニズムのアイコン的存在)やベトナム戦争の時代で、ブラジャーを燃やして抗議活動をしていました。ケント州立大学銃撃事件(1970年に行われた学生の平和的なデモで、警察が群衆に発砲して4人が死亡した)が起こったばかりで、それに対処するのは当時の我々の役目だったことを忘れてはなりません。
私はバンドで歌っていましたが、それは自分の人生でやりたいことではないと考えていました。ロサンゼルスで暮らしたかったし、自分の運命は自分で決めるものだと思っていました。そう、私はフェミニストだったのです。でも私のフェミニズムはそれから進化しました。一般的なフェミニズムもそうですが、ある点では軟化したり、ある点では硬化したりしています。生きていて、息をしていて、進化しているものだと思います。常に変化するものなのです。
——あなたは4年間、ワンダーウーマンを演じました。このキャラクターはあなたにどんな影響を与えましたか?
私に勇気を与えてくれました。ワンダーウーマンを始めた時は独身でしたが、4年間の撮影中に結婚しました。その後、夫(1977〜1982年まで結婚していた映画プロデューサーのロン・サミュエルズ)とは別れましたが。人生の波乱万丈な時期に、ワンダーウーマンに本当に救われました。
撮影現場にいるだけで、私は守られていました。若い時にミスをしても、ずっと仕事をしていれば忘れることができますし、どうにか対処できるものです。
でも、「ワンダーウーマン」が本当に終わりを迎えたとき、自分が何をすべきかがわかりました。そしてその決断が後に、37年間結婚生活を送った運命の人との出会いをもたらしたのです(弁護士のロバート・アルトマン、1983年に結婚、昨年2月に死去)。最近、彼は亡くなりましたが、私の人生を変えてくれました。
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両手の拳を腰に当てる
——キャラクターの知名度が重荷になることはありませんでしたか? それによって自分の存在が消されたと感じませんでしたか?
でも、それが彼女の魅力でもありますよね。周りより目立つ人というのは秘密主義ですが、彼女の場合は自分の真実の姿を表現しています。私は私の存在の跡をフィルムの中に残せてよかったと思っています。どこかに少しでも自分の痕跡を残しておかなかったら、私の仕事はうまくいかなかったと思います。
——ワンダーウーマンも当時、欲望の対象でした。彼女が性的に扱われたことについてはどう思いますか?
私は彼女をセクシーだとは思いませんでした。なぜかというと、人生には「グラマラスでセクシーなポーズ」と「拳を腰に当てるポーズ」があるからです。ワンダーウーマンの場合、どちらかというと後者でした。
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真実の投げ縄
——ワンダーウーマンはスーパーパワーと魔法の武器を持っていました。持つならどちらが良いですか?
真実の投げ縄を手に入れたいですね。私たちがそれを手にしたら………きっと世界を変えられる!
——あなたなら誰に命中させますか?
おそらく、世界銀行のディレクターだと思います。死体の隠し場所を教えてくれるかもしれないわね(笑)。彼が嘘をついているとは言いませんが、私は金融の世界で何が起こっているかを知っている人、本当に糸を引いている人に使いますね。ただ、一人の人間に限定したり、政治分野に限定したりはしないでしょう。しかし、誰もかもが嘘をついていると思っているわけではありません。私は嘘をつきませんよ、面倒くさいから。
——目に見えない飛行機での飛行はどのようなものでしたか?
グレイハウンドバス(アメリカの長距離バス)の座席をアクリル板で囲ったような私の時代のものより、『ワンダーウーマン1984』の方がずっと良いと思います(笑)。かなりキッチュでした。それ以上に、ガル・ガドット(2016年からワンダーウーマンを演じている女優)とパティ・ジェンキンス(2017年に『ワンダーウーマン』、2020年に『ワンダーウーマン1984』を監督)がとても好きです。パティとは、20年違いの同じ日に生まれた私の誕生日も一緒に祝いました。
——ワンダーウーマンの80歳の誕生日に何を願いますか?
彼女が永遠であることを願っています。そして、100年後にも存在していることを願います。彼女の原点が忘れられないようにしたいものです。彼女を変貌させないこと、彼女の良さを消し去らないこと、何よりも守らなければならない彼女の優しさを消し去らないことです。
text : Pascaline Potdevin (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi