フランスでいま話題の占星術師4名。活躍の場はSNSに?

Culture 2022.02.09

インスタグラム、YouTube、アプリなど、フランスでは伝統の西洋占星術に革命が進行中。いま注目を集める4人のインフルエンサーのケースを紹介する。


「インスタグラムで占星術を見るのは、癖みたいなもの。全部はわからなくても、笑える。『フレンズ』のモニカは私と同じ乙女座で家事好きなんだけれど、彼女が出てくるミームを見ると特に笑えるわ!」そう語るのは、41歳のマーケティング責任者、マリー。アメリカの占星術師スーザン・ミラー(アプリAstrology Zone)のアドバイスを定期的に受けているマリーだが、@astrotrucの投稿も必ずチェックしている。この種のアカウントの代表ともいえるこのインスタグラムには、いわゆる占いはなく、紹介されているのはむしろ、星座をめぐるB級ポップなお遊びだ。

マリーのように、占星術のコードを別の目的に利用するアカウントをフォローする女性は少なくない。ちょっと眺めてみるだけで、この現象の広がりがわかるはずだ。@glossy_zodiac(フォロワー数500万)、@groupe.astrologie(14万)、@astro.lya(24万9000)、@sisters_astrologie(10万7000)、@signeastro.off(41万)……。何百ものアカウントとコンテンツ制作者が、コミュニティを作るための新しい方法として占星術を利用している。レシピはどれも同じだ。星座、アセンダント、ハウス、惑星、そして特に、それらのステレオタイプ(牡牛座はオーガナイズ好き、水瓶座はエキセントリック、山羊座は超野心家、など)。さらにはテレビドラマやセレブニュース、漫画などから引っぱってきた画像をベースにしたギャグ。これに夢中になるのは、スマホを手に持って生まれてきた若い世代だ。

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photo: iStock

バイアは19歳。「占い師には絶対会いに行かない」という彼女だが、お気に入りの占星術アカウントのストーリーは欠かさずチェックする。「毎日チェックするわ! 私は天秤座だけど、プロフィールを見るとものすごく当たっていて、信じたくなっちゃう! 以前は友だちの星座との相性も見てたけど、それはやめたわ」。マリーのように、バイアも友だちをタグ付けしたり、自分のアカウントに気に入ったストーリーを貼りつける。それが自分を語り、コミュニティと会話する方法になっているのだ。女友だちと一緒に女性誌の星占いを読んだ時代は終わり。占星術師は進化を遂げ、「アストロインフルエンサー」になった。ソーシャルネットワークに存在感を放つ、魔女神話を背景にしたフェミニスト活動家たちに続いて、占星術師も「新世代魔女」の仲間入りを果たしたのだ。

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変異の時代

昨日までちょっとダサかった占星術は、いまやクールな存在になった。41歳のマエヴァ・ステファン=ブニは、2018年、占星術のインスタアカウント@astrotrucを開設したが、そもそも「冗談みたいなもの」だったという。ハーフタイム勤務で教師として働く彼女は、占星術は信じていない。「小さい頃からシンボルの持つ力に魅了されてきた。私にとっての占星術は、文学と同じように、何かを語ったり、自分自身や世界について考察するためのメタ言語のようなもの。ナレーションの手段として、自分自身をよりよく知るための道なんです」。テレビドラマも哲学も大好き、レパートリーは「ゲーム・オブ・スローンズ」から「ハイデッガー」まで、というマエヴァは、「これまで“婦女子のもの”と烙印を押されていた」占星術の再活用を謳う。占星術はフェミニストなのだろうか? 確かなのは、今後、辣腕編集者アリアーヌ・ジェファール(フェミニスト著作でヒットしたモナ・ショレやティティウ・ルコックを手がけた)のもとで、マエヴァは出版界に旋風を巻き起こす全ての切り札を手にしているということ。なぜなら、ひと足先に「魔女たち」がブームになったように、新世代のアストロインフルエンサーたちも出番を待ち構えているからだ。そして中にはすでにダンスを踊り始めている者もいる。

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photo: iStock

28歳のシェーラ・ケリエンスキーはアストロインフルエンサー界の大物だ。人気ユーチューバーのシェーラは、どんなトレンドの波も乗りこなす。動画では占星術も、フェミニズムも、ボディポジティブも語る。自身を「情熱的な独学者」と定義する彼女は、占星術は何よりも「自分自身の追求」だという。そしてこう続ける。「自分の欠点を愛し、孤独感を和らげてくれる。そしてある状況での自分の反応を理解する助けになる」。アカウントでは、自分でシーンを演じ、各星座を面白おかしく解説する動画を配信。「占星術師だというつもりはありません。ただ、控えめな気持ちで自分の情熱をシェアしているだけ」。そこにコミュニティが「いいね」を送り続ける。

トレンド分析事務所カルランのトマ・ジルベルマンは、モードブランドにも影響を与える占星術の変異に興味を持っている。ブランドの中には、ストーリーテリングのために、西洋占星術にまつわるビジュアルをインスピレーション源としているところもある(ジャックムス、ヴェトモン、太陽星座別にジュエリーを提案するディオール・ジョワイユリーなど)。「問題は占いではなく、“この世界の中で私はどこにいるの?”ということ。私たちは、ベター・ビーイング社会に突入しています。すべてがヘルシー・ウェルネスのトレンドに結びついている。今後、どのように自分を知り、自分に耳を傾けるかを学ぶのは本質的な問題になります。以前はあまり良いことだとされていなかったのですが」とジルベルマン。「いま求められているのは、合理的で冷たい、デカルト的なものとは違う、自分の空間です。それは文明的な必要性。世界を再び魅力あるものとし、素晴らしいもののための場所を見つけたいという願いがあります」。つまり、個人に合わせた神秘主義と自分の個性の表現の形が、私たちの個人主義社会にマッチしたということだ。

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マーケティングの鉱脈?

たとえばフレグランスからジェンダーの観念がなくなるいま、星座に合わせたフレグランスを提案するのは素晴らしいアイデアでは? インフルエンサーのノホリタは、この考えを12色の水着で提案している。「蟹座のあなたはセンチメンタルでクリエイティブ、直感的。でも優しくてお利口さんで、シンプル、明晰……。エレメントは水、惑星は月、色は白」という具合だ。自分の性格とぴったり一致する、と感じさせるマーケティング手法と同じ。シェーラがいうように、「星座のテーマはそれぞれ、各個人のスピリチュアルなIDカードのようなもの」だからだ。こうした神秘性へのニーズは、決して新しい現象ではないが、一神教がその影響力をぐっと弱めている現代の超コネクテッド社会においては、その傾向が増すばかり。民衆信仰についての著書の多い民族学者のドミニク・カミュは、こう考えている。「占星術が復活しているのは、実は占星術が完全に忘れられてはいなかったからです。ホロスコープはずっと前から同じやり方で作られ、数千年も前から体系化されています。使い方が変化しただけなのです」

いずれにしろ、ソーシャルネットワークによって、占星術は人生をポップで楽しく読むための解析表になったのだ。どう思う、ジュピター?

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フランスでいま注目される、SNS占星術師たち。

プロフェッショナルな占星術師:@sophieravier


●コード:一対一で。48歳のソフィは、ロンドンの占星術学部で占星術を学ぶ前も、充実した人生を送っていた(彼女はクラランスの広報を務めていた)。現在、ヨガファンの彼女は占星術への情熱を選び、ギリシャのシフノス島とアムステルダムを往復する暮らしを送っている。世界中のクライアントに向けて、ZOOM鑑定を提案。
●マントラ:ノストラダムス式の予言的占星術を“人間的な”占星術に変化させたアラン・レオの研究に感化され、ソフィは自分を「アストロフィル(天文好き)」と定義する。
●メモ:インスタグラムで、2週間ごとに「アストロブラブラ(天文おしゃべり)」をアップし、「今月の重大な瞬間」について語る。毎週日曜日にWhatsAppで、2000人のフォロワーにその週の星の動きについて音声メッセージを発信。

 

クラシカルな占星術師:@astrokiff


●コード:ジュリア24歳はネオ占い師。毎週インスタグラムのアカウントにタロスコープをアップ。パステルカラーでビジュアルはロマンチック。ファンからの要望も多い。
●マントラ:「天使のアドバイスを見たいなら、スワイプ!」
●メモ:ジュリアが目覚めたのは20歳の時。デカルト信奉者だった彼女は、叔母が以前から霊媒師の才能を持っていたことを発見した。プロとして、インスタグラムのタロスコープ発信と並行して、対面やオンラインによる診断も行う。グッチやコンバースといったブランドがオーガナイズする占いパーティにも招待されている。

 

インフルエンサー占星術師:@shera


●コード:率直な喋りと親近感で、このジャンル最強のインフルエンサー。140万以上のフォロワーを持ち、投稿でボディポジティブも語る彼女が占星術界に乗り出したのは最近のこと。コミュニティは、彼女が発信する「運勢」と#sherastrologieによる星座コントに大喜び。
●マントラ:「水星後退、でもなんともなかったね!」
●メモ:人気インフルエンサーの例に漏れず、彼女も自己啓発関連の著作を出したばかり。「Astro book」(ユーゴ・イマージュ出版刊)は人生をよりよく生きるガイド。

 

ユーモラスな占星術師:@astrotruc


●コード:2018年に始めたインスタグラムのアカウントで、マエヴァ・ステファン=ブニは、(クララ・ルチアーニやデャロリーヌ・ドゥ・メグレのように)有名ドラマや映画から引っ張ってきたイメージを使ったユーモラスな星座ミームでフォロワーを魅了中。彼女は占星術を信じない。むしろ「天文好き」で、占星術を「物語を語る詩的な」言語として利用するのが彼女のやり方。
●マントラ:「占星術を信じてはいけない。私は射手座で、射手座は疑り深い」。これは「2001年宇宙の旅」の作者で映画のシナリオ共著者であるアーサー・C・クラークの言葉。
●メモ:近著「Astrotrucポップカルチャーで星座を読み解け!」(マラブー出版刊)は星についての文学的かつ哲学的(彼女はスピノザを引用している)な星の放浪記。限りなくオフビートな、自己啓発のためのアンチガイド。

photography: ASTROKIFF, @INSTAGRAM SHERA, @INSTAGRAM ASTROTRUC, text: Séverine Pierron(madme.lefigaro.fr)

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