レイチェル・ゼグラー、『ウエスト・サイド・ストーリー』のヒロインになった新人の素顔とは?
Culture 2022.02.10
スティーブン・スピルバーグのカメラの前で大役を務め上げた若干20歳の新人女優は、名作アニメ『白雪姫』のリメイクでも主役に抜擢された。彼女が主演する映画『ウエスト・サイド・ストーリー』が2月11日に公開される。彗星のごとく現れた無名の大型新人の横顔を紹介する。
『ウエスト・サイド・ストーリー』リメイクでマリア役、アニメ『白雪姫』の実写版でヒロインを演じるレイチェル・ゼグラー。(2021年1月4日投稿)Instagram/@rechlazegler
彼女のストーリーもまさにおとぎ話だ。レイチェル・ゼグラーはいま最も話題を呼んでいるリメイク映画、スティーブン・スピルバーグ監督作『ウエスト・サイド・ストーリー』のメインキャストに名を連ねている。彼女が演じるのはかの有名なマリア役。さらに、去る6月22日にディズニーが発表したように、コロンビア系アメリカ人の彼女は実写版『白雪姫』のヒロインにも抜擢されている。20歳の新人歌手にとって怒涛の快進撃だが、ハリウッドに見出される前、彼女はすでにSNSでセンセーションを巻き起こしていた。2018年12月、レディ・ガガとブラッドリー・クーパーの『シャロウ』のカバー動画を彼女がツイッターで配信すると、1100万回もの再生回数を記録。音楽界の新星にふさわしい夢のような運命を予感させる逸話だ。
i got cast as maría in west side story on 1/9/19.
— rachel zegler (she/her/hers) (@rachelzegler) January 10, 2022
and i just won a golden globe for that same performance, on 1/9/22.
life is very strange.
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美女とアリエル
2001年5月3日、ハッケンサックで生まれたレイチェル・ゼグラーは、アメリカ人の父親とコロンビア人の母親のもと、姉のジャクリーンとともにニュージャージー州のクリフトンで育った。普通の女の子たちが獣医師に憧れるような年頃に、レイチェルはブロードウェイミュージカルに通い詰めていた。ダンスときらびやかな衣装と力強い声に魅了された少女は自分もいつか舞台に立ちたいと願うようになる。彼女の望みが叶うまでそう時間はかからなかった。高校在学中にレイチェルはいくつものミュージカルに出演し、才能を開花させて行く。授業が終わった後にバーゲン演劇学校に通っていた彼女は、校内の舞台で(すでに)ディズニー映画のヒロインたちの役を演じている。
未来の前兆と見る人がいてもおかしくないが、ティーンエージャーの頃からレイチェルは『美女と野獣』の主題歌を歌い、『リトル・マーメイド』のアリエルの役を演じていた。彼女の演技は高く評価され、優れた舞台公演を行なった地域の高校生に贈られるメトロアワードに4回ノミネートされている。さらに彼女が通っていた演劇学校で、なんと舞台版『ウエスト・サイド・ストーリー』のマリア役に選抜されたこともあるという。
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「天使のような」スティーブン・スピルバーグ
しかしレイチェルにとってはまだ物足りない。バーゲン郡を超えて自分の才能を世に知らしめるのが彼女の夢なのだ。2015年7月、透き通った声を持つブリュネットの少女はユーチューブで番組を配信しようと決意。シーアの「シャンデリア」やクイーンの「ボヘミアンラプソディ」といった曲をカバーして、その力強い歌声を披露する。また「Elegy in May」のようなオリジナルの楽曲も創作している。公式ページのフォロワー数は現在20万6000人。インスタグラムでもセルフィ画像やバカンス写真、『ウエスト・サイド・ストーリー』リメイク映画の撮影現場の様子などを定期的に投稿しており、フォロワー数は39万人に上る。
「ファニーフェイス」を自認するレイチェルは、やはりSNSを通して、彼女にとってのピグマリオンであるハリウッドの魔術師ことスティーブン・スピルバーグ監督へ賛辞を捧げている。「創造の守護神」であり「本当に天使のような人」と形容する監督に向けて、「私にチャンスを与えてくれてありがとう。あなたの寛大さを私は一生心に刻んでいきます」とメッセージを送っている。
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「クレイジーな」体験
レイチェルが人生最大のチャンスを掴んだのは16歳のときだった。2018年1月、高校生だった彼女は、スピルバーグ監督がミュージカル映画のキャスティングをツイッターで告知していることを知る。彼女はそこで作品のメインナンバーである「トゥナイト」と「すてきな気持ち」を歌い、自ら撮影して応募することに。監督のもとには3万人以上の応募が寄せられた。
1年後、オーディション選考結果が発表された。並みいるライバルたちを押しのけて、ナタリー・ウッドが演じたロマンチックで悲劇的なマリア役を射止めたのはレイチェルだった。シンデレラストーリーを生き抜く決意をしたティーンエージャーは進学を断念する。「モンククレア州立大学の事務局長宛てにこんなメールを送ったのを覚えています。”嘘のように聞こえるでしょうが、これが実際に起きたことなのです。そういうわけで私は大学に入学することはできません”」と、彼女は雑誌『ヴォーグUS』で語っている。撮影が終了すると、レイチェルは「ひとりの若い女性がこの世で経験できる最もクレイジーな体験」だったとインスタグラムにメッセージを投稿した。
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トップランナーとして
彼女のいまの望みは、ラテン系コミュニティの人たちにとって手本となるような活躍をすることだ。「想像を絶する素晴らしい共演者たちと並んで、マリアというアイコニックな役を演じることにとても興奮しています」と、レイチェルは2019年1月にオンラインメディア『Deadline』に語っている。「『ウエスト・サイド・ストーリー』は私にとってラテン系の人物が登場するのを見た初めてのミュージカル作品です。コロンビア系アメリカ人として、ヒスパニック系コミュニティにとってこれほど重要な役を演じる機会をいただいたことを光栄に思います」
レイチェルは2023年に公開予定の『シャザム! 2』にもキャスティングされており、スーパーガールを演じたサシャ・カルに次いで、DCコミックスのスーパーヒーロー映画の主演を務める史上2人目のコロンビア系アメリカ人女性となる。またマーク・ウェブ監督によるディズニーアニメのリメイク映画『白雪姫』でも、ラテン系女性として初めて白雪姫を演じる。2012年に『アメイジング・スパイダーマン』を手がけたウェブ監督は「レイチェルの並外れた歌唱力は彼女の才能のひとつの側面にすぎません」と、フランス通信社に伝えたメッセージの中で述べている。「彼女の強さと知性、そしてその前向きな姿勢は、ディズニーの古典的なおとぎ話に込められた喜びを再発見するために不可欠な要素となるでしょう」。レイチェルの夢のような物語はまだ始まったばかりだ。
text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)