中国系移民の子だった私が、少女時代に読むことができなかった絵本。
Culture 2022.02.11
文/H・アラン・スコット
アジア系ファッションジャーナリストのエバ・チェンが、自身の生い立ちを次世代に伝える絵本を出版。
アジア系の人々のことをもっと知ってほしい、と語るチェン。 photo: CHRISTIAN VIERIG/GETTY IMAGES
エバ・チェンはインスタグラム社のファッション・パートナーシップ部門を率いる中国系アメリカ人。服を通じて人の心を語るプロだ。「ファッションとショッピング、この素敵なふたつのことを繋ぐのが私の仕事」だと彼女は言う。つまり、インスタで見た服をユーザーがすぐに買えるシステムの運営責任者だ。
でも彼女は、自分が母となった時に思った。移民として育った自分の思いを次の世代に伝えたいと。だから絵本『アイ・アム・ゴールデン(私は金色)』(ソフィー・ディアオ絵、フェイウェル&フレンズ社刊)を書いた。
「自分の幼い頃には出合えなかった本を、私は書きたかった。自分がアメリカで読んだ児童書には、ほとんど共感できなかったから」
新型コロナウイルスの感染爆発の間、彼女のおなかには3人目の子がいた。「すごくエモーショナルになる時期」だったけれど、彼女は自分をコントロールして本書を書き上げた。この絵本が民族間の「壁を解かす会話の始まり」になればと話すチェンに、ニューズウィーク誌のH・アラン・スコットが話を聞いた。
――この本を、いま書かせたものは何?
コロナ禍で初めて「中国ウイルス」という呼び名を聞いたときは恐ろしかったし、昨年3月にはアトランタでスパの客が銃撃された。(犠牲になった人の多くはアジア系で)衝撃だった。私たちのことを、もっと知ってもらわなくちゃと思った。特に子どもたちに分かりやすいように。
――子どもたちに語りかけつつ、あまり政治的にならないようにするのは難しかった?
子どもは深読みしないから大丈夫。それに、これは政治的な本じゃない。いろんな人との対話のきっかけになる本だと思う。児童書はそういうものでなくちゃ。
――インスタはどう変化して、人々はファッションをどのように見ていると思う?
インスタで誰かの服をチェックして、気に入った服の画像をタップするだけでその服が買えたらいいな。そんな話をしてから6年たったけど、今はそれが現実になっている。すごいことだと思う。
――ファッション界でもいまはアジア系のデザイナーが活躍しているが。
ベトナム系のピーター・ドゥとか、中国系のヴェラ・ウォンとか。ああいう人たちの仕事を見れば、アジア系の影響力は明らかでしょ。今年はファッション以外の業界でもアジア人がもっと躍進するといい。それが私の願い。
text: H,Alan Scott(Newsweek)