極私的BTS愛 【Kポップ歴15年立田敦子が語るBTS:前編】7色の虹のように、7人で完成する唯一無二の魅力。

Culture 2022.04.09

文/立田敦子(映画ジャーナリスト/評論家)

「『パラサイト』はアカデミー賞作品賞を受賞、ドラマはNetflixなど配信で世界中で大ヒットしている。そして、BTSは“現象”といえるほどの世界的スターになった。なぜ、韓国エンタメ業界はこんなにパワフルなのでしょうか?」

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韓国のエンターテイメント界のダイナミズム

去年の7月2年ぶりに開催されたカンヌ国際映画祭で、『非常宣言』をプレミア上映するために来場していたイ・ビョンホンに久々に対面取材した際に聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。

「私たちはなによりも情熱をもってすべてに全力を尽くすんです。それからいつでもなにか違うものを目指します。韓国のドラマや映画は、脚本を練る際にも、常に“観客が想定していないもの”を作り出そうと徹底的に努力する。そういった姿勢が韓国のエンターテイメント界のダイナミズムなのだと思います」

日本における第一次韓流ブームの火付け役のひとりであり、ハリウッドでも活躍する世スター俳優のいう“情熱”と“徹底性”は、韓国映画やK-POPのクオリティの高さを支える大きな要素だということは日頃から感じています。が、その中でもBTSが突出した存在になれた理由については、実際に私の周囲でも頻繁に話題になっています。

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第64回グラミー賞授賞式のステージパフォーマンス。(2022年4月4日、ラスベガス) photography: Aflo

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BTS7人の個性を知る

よく言われるのは、中毒性のある楽曲、難易度の高い圧巻のダンスパフォーマンス(特にライブ)。異論はありません。けれど、歌もダンスも上手いグループはKポップ界にはたくさんいます。Kポップ歴約15年身としてBTSの魅力を語るならここに、独特の個性、というか“7人としての個性”を付け加えたいと思います。

BTSとのコラボレーション曲「My Universe」のヒットが記憶に新しいコールドプレイのフロントマン、クリス・マーティンは「まったく個性の違う7人が一緒にやっているところが凄い」と一言でその核心を突いて見せました。実際に、迫力のある低音ボイスでカリスマ的な雰囲気を醸し出すRM、高速ラップと率直な歌詞が特徴のSUGA、リズム感がよくボーカルもこなすJ-HOPEという3人のラッパーはまったくスタイルが違います。正直、“ひとつのグループに3人もラッパーが必要なの?”と思う人がいるかもしれませんが、もし数曲BTSの楽曲を聞いたなら、3人3様のラップが完璧な三角形を築いて、BTSの屋台骨を築いていることに気づくでしょう。

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ボーカルラインにしても同じです。甘くハリのある声のJIN、キュートなキャンディボイスのJIMIN、深みのあるバリトンながら、高音のファルセットも使いこなすV、透明感のあるキレイな声と多彩なテクニックでフェイクも上手いJUNG KOOK。4人は声質もキーもまったく違います。日本ではユニゾンで歌うグループも多いですが、興味深いことに、BTSの場合はユニゾンで歌うことはほぼなく、パート分けされた主旋律をそれぞれの歌い方で4人が歌ったりしています。

メインボーカルは最年少のJUNG KOOKなので、多少パートは多いとはいえ、ほかのグループのように“メインボーカル”と"その他”といった明確な分けられ方はしていません。Aメロ、Bメロも交代で歌い、たいていは1曲の中で4人がバランスよく歌っています。繰り返しますが、声質もキーも違うから、歌っている本人たちはこれはかなり大変で、かなりの練習も必要だと思われますが、おかげでそれぞれの個性を十分に楽しめます。ちなみに、こういったメンバーの個性を生かすような楽曲作りをしている“BTSの生みの親”であるパン・ヒショクPDを始めプロデューサー・チームにも感心させられます。

また、高難度のダンスでも定評のあるBTSですが、その立役者はパフォーマンス・ディレクターのソン・ソンドゥク。シンクロ率の高さもよく言われることですが、よく見ると、部分部分で、それぞれのダンススタイルを優先させる“自由度”も感じられ、そのバランスは絶妙です。

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7人の正式な並び方?

このように、個性を立たせながらもひとりだけが目立つことなく、“7人が揃ってこそBTS”=BTSis7の精神はさまざまな面で貫かれています。記者会見などで7人が揃うときの正式な並び方は、年齢順ではなく、V、SUGA、JIN、JUNG KOOK、RM、JIMIN、J-HOPEです。

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第64回グラミー賞、レッドカーペットでもお約束の立ち位置。photography: Aflo

RMがインタビューなどで公式に答えているように、BTSの中でもっとも強烈な個性を持ち、目立つのはVであり、実際もっとも人気もあります。通常のグループならば、そのVを中心に配置しそうなものですが、BTSはあえてそんなVとダンスリーダーで「陽」キャラのムードメーカー、J-HOPEを両サイドに置いています。そしてメインボーカルだがシャイな性格で口数も少ない最年少のJUNG KOOKをセンターにおいて盛り立てるという考え抜かれた並びで、グループの一体感を出しています。

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I Purple You

ARMY(BTSのファン)とBTSが頻繁に使う合言葉に、“ボラへ”があります。韓国語で“紫する”の意味で、英語では“I purple you”と訳されています。これはVによる造語で、虹の最後の色である“紫”を“する”を転じて、「お互いに末永く愛し合おうという」意味で使われています。虹は、はっきりとした特徴を持った7色が一緒になることによって完璧な美しさと調和をもたらす。まさにBTSを象徴しているようです。

前置きがすっかり長くなってしまいましたが、BTSのメンバーの個性を知ることは、BTSの魅力を解読する最短ルートです。

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メンバーの個性をチェック! ライブパフォーマンスベスト4

一曲の中で、メンバーの個性的なライブパフォーマンスが観られるオススメの動画は、こちらです。

「IDOL」2018年MAMA

「Dyonisos」

「ON」

「SpringDAY」

※後半に続く……。  

立田敦子
映画ジャーナリスト/評論家 1990年代後半から韓国映画・ドラマの取材を通じて、独特の韓国エンターテイメント業界に興味を持つようになり、K-POPにもハマる。東方神起、SUPER JUNIOR、2PM、BIGBANG、SHINeeなどを経て防弾少年団に出会う。ARMYとし“テテペンよりのオルペン”。最近はインタビューする韓国の監督や俳優にBTSについて取材し、その魅力を分析している。

text: Atsuko Tatsuta

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