極私的BTS愛 【Kポップ歴15年立田敦子が語るBTS:後編】沼落ち覚悟、BTSについて知っておきたい4つのこと。

Culture 2022.04.09

文/立田敦子(映画ジャーナリスト/評論家)

BTSについての私的偏愛を語るエッセイの後半は、個人的な好みを反映し、初心者の方にわかりやすく魅力をご紹介したいと思います。ソロ曲やOST(サントラ)を含むと400近い曲数を保有するBTSのオススメ曲。また、“カッコいい”イメージが強いBTSですが、“フンタン少年団”(オモシロ少年団)の異名を持つほどバラエティ上手な側面。そして、みんなが気になるハリウッド進出などのテーマに触れたいと思います。

---fadeinpager---

BTS、まず何から聴くべき?

最近ファンになり総合的にBTSを聴いてみたいという方には、現在行われている「PERMISSIO TO DANCE」のセットリストをSpotifyなどで順番に聴いてみることをオススメします。2021年の10月24日に配信されたオンラインコンサートに始まり、11月〜12月にはLA、3月にはソウルでオフラインで開催され、配信もされました。そして4月8日、9日、15日、16日にはグラミー賞授賞式が行われたラスベガスでもオフラインコンサートが開催されます。

aflo_185274070_article.jpg現地時間4月8日から有観客ライブが行われるallegiant stadium。photography: YONHAP NEWS/Aflo

セットリストは、コロナ禍で久々となるステージに向けて、メンバーたちが自ら“7人で”ずっとステージに立ち続ける というコンセプトで選曲したもの(ソロ曲はなし)ですが、結果的にほぼベストアルバムとなっています(アンコール曲を変更するなど、ステージごとに多少のマイナーチェンジはありますが)。

---fadeinpager---

メンバーのキャラクターをつかむなら?
 

また、メンバーの個性をより知りたい方は、BTSが独自に作っているオリジナル動画コンテンツがオススメです。

韓国には大手三大事務所がありますが、BTSがデビューから間もない頃、所属するBIG HIT ENTERTAINMENT(現・HYBE)がまだ弱小芸能事務所だったこともあり、TV番組での露出が十分にできなかった自分たちのことを知ってもらうために、メンバーたちはSNSなどを通じてさまざまな情報発信をし始めました。

その中から生まれたオリジナルのバラエティ番組が「RUN‘BTS」(タリョラ・バンタン)です。独自で配信し始めたこのコンテンツは、惜しまれながら2021月10月より休止中ですが、2015年8月から5年間156回続いたこの番組はオフィシャルサイトなどで見ることができます。

個人的には、有料コンテンツ「BON VOYAGE」がお気に入りです。練習生時代からデビュー3年目まで、ハードなスケジュールで同世代の青年たちのように、自由に旅行もできなかったメンバーたちが、「普通の青年としての旅」をする様子を収めたバラエティコンテツです。通常、空港でのチェックインやホテルまでの移動などを始め、キャンプやアトラクション、そしてトラブルが展開され、普段の爆イケステージでは見られない、人間味あふれるコンテンツです。16年の北欧、17年のハワイ、18年マルタ島、19年ニュージランドと1年ごとにメンバーの成長(そしてBTSが世界的に有名になっていく様子も)が見られます。

---fadeinpager---

グラミー賞は逃しても
 

ところで、4月4日には第64回グラミー賞の授賞式がありました。最優秀ポップデュオ/グループ・パフォーマンス賞に2年連続でノミネートされていたBTSの受賞はなりませんでした。もはや絶大な人気を誇る世界的スターとなったBTSだけに、ARMYだけでなくアーティストたちからも「BTSに受賞させるべき」という声が上がっています。もちろん、いちファンとしては残念ではありますが、誤解を恐れずに言えば、それほどショックなワケではありません。

グラミー賞はジャスティン・ビーバーでさえも、単独では受賞していないというハードルが高いアワード。それに個人的には、英語で歌った大ヒット曲よりも、たとえば「ON」のようなザ・K-POPという楽曲でぜひ受賞して欲しいと思っています。BTSのオリジナルネームである防弾少年団は、「10代、20代の若者に向けられた社会的な偏見や抑圧から、自分たちの音楽を守り抜く」という意味で付けられたものです。“自分たちの音楽”のために、これまでメンバーたちは楽曲作りにも積極的に参加してきました。特にRM、SUGA、J-HOPEのラッパーたちは自らの“言葉”で悩み、憤り、希望といったメッセージを発信してきました。BTSの人気と実力を考えれば、母国語で歌う“自分たちの音楽”と情熱的なステージでグラミーを制覇する日は、そう遠くないはずです。

---fadeinpager---

 

BTSとハリウッド?

 

最後にBTSとハリウッドの関係について。圧倒的な人気と影響力をもつBTSにハリウッドは興味を持たないはずはありません。『ノマドランド』でアカデミー賞を受賞したクロエ・ジャオ監督がディズニーで撮ったアメコミ作品『エターナルズ』では、JIMINとVのデュエット曲「Friends」が挿入歌として使われました。今年の第79回アカデミー賞ではVTRでBTSが出演し、それぞれのお気に入りのアニメーションを披露しました(ディズニーのCMにしか見えませんでしたが)。

メンバーの中で演技経験があるのは、いまのところ、パク・ソジュン主演のドラマ『花郎〈ファラン〉』に出演したVだけ。その評価の高さからVのドラマや映画出演を望む声も大きいことは確かですが、Vは「30歳まではBTSの活動に専念する」と公言しています。Vは、『花郎』が縁でパク・ソジュンを中心にやはり共演した俳優のパク・ヒョンシク、『パラサイト』で知られる俳優のチェ・ウシク、パク・ソジュンの高校の同級生でラッパーのPeakboyと〈ウガウガ会〉という仲良しグループをつくっていますが、そのパク・ソジュンはMCU配信の『ザ・マーベルズ』(2023年公開予定)が待機中です。

俳優としての活動はともかく、OST(サントラ)に関しては、Vが前述の『花郎』(16年、JINとのデュエット曲「死んでも君だよ」)、パク・ソジュン主演の大ヒットドラマ『梨泰院クラス』(20年、「Sweet Night」)やチェ・ウシク主演のやはり大ヒット恋愛ドラマ『その年、私たちは』(21年、「Christmas Tree」)、JINがチョン・ジヒョン✕チェ・ジフン主演の話題作『智異山』(21年、「Yours」)、JIMINが『私たちのブルース』(22年)に参加していたりもします。日本のドラマには、『シグナル 長期未解決事件捜査班』(18年、「Don’t Leave Me」)、『らせんの迷宮〜DNA科学捜査〜』(21年、「Stay Gold」)に主題歌を提供しています。なので、「Friends」でのジャブに続き、マーベル作品や007シリーズなど大作のテーマソングでの本格的ハリウッド・デビューがまずは現実的かも知れません。

立田敦子

映画ジャーナリスト/評論家。1990年代後半から韓国映画・ドラマの取材を通じて、独特の韓国エンターテイメント業界に興味を持つようになり、K-POPにもハマる。東方神起、SUPER JUNIOR、2PM、BIGBANG、SHINeeなどを経て防弾少年団に出会う。ARMYとし“テテペンよりのオルペン”。最近はインタビューする韓国の監督や俳優にBTSについて取材し、その魅力を分析している。

 

text: Atsuko Tatsuta

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

いいモノ語り
いいモノ語り
パリシティガイド
Business with Attitude
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories